『ゴジラ』公開から67年目の今日、考えたい。ゴジラとガメラが戦ったら、勝つのはどっちだ?
こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。さて、今日の研究レポートは……。
映画『ゴジラ』が公開されたのは、いまから67年前の1954年11月3日。戦後10年も経っていないときに、よくぞあれほどの特撮映画が作れたものですなあ。
その後、断続的にシリーズ作品が作られ続け、いまではハリウッドにも進出。59年ぶりにキングコングと戦うなど元気に活躍しており、まこと慶賀の至りであります。
しかしキングコングもいいけど、筆者には、ゴジラにどうしても戦ってほしい相手がいる。
それは、怪獣ガメラ。
『ゴジラ』に遅れること11年。65年に『大怪獣ガメラ』で初登場するや、バルゴンやギャオスなどの魅力的な対戦相手にも恵まれ、筆者が子どもの頃には、ゴジラにも劣らぬ人気を得るようになっていた怪獣だ。
当然、「ゴジラとガメラは、どちらが強いのか?」という議論を、友人たちとは何度も戦わせたが、結論が出ることはなかった。ゴジラ派もガメラ派も、自分の好きな怪獣が絶対に勝つ!と主張して譲らず、最後は「実際に戦ってみなければわからない」と、物別れに終わるのが常だった。
もちろん、この両雄が実際に戦うことはなかった。映画の製作会社が違うなど、オトナの事情があったからだ。
そこでいまこそ考えてみたい。この2大怪獣が戦ったらどうなるか?
もちろんハッキリと強弱を断定することはできないが、空想科学的に考察すれば、ある程度は戦いの行方を予想できる……のではないだろうか。
◆肉弾戦ならゴジラの圧勝
両者とも、シリーズが進むにつれて体格や能力が変わっていったので、ここでは初代ゴジラと初代ガメラに戦ってもらおう。
ゴジラは、ビキニ環礁の水爆実験で巨大化した太古の生物で、口から放射能火炎を吐く。身長は50m、体重は2万tだ。
ガメラは、カメによく似た外見ながら、口から火を吐くうえに、手足を引っ込めてジェット噴射で飛行する。身長は60m、体重は80t。
まず注目したいのは、両者の対格差だ。
ゴジラの「50m・2万t」に対し、ガメラは「60m・80t」。ガメラのほうが体は2割も大きいのに、体重はゴジラが250倍も重い。
これ、どちらが科学的に納得できる設定なのだろう。
彼らの体が実在の生物と同じ物質でできていると仮定し、2匹の人形を元に、ゴジラが50m、ガメラが60mになった場合の「適正な体重」を算出してみると、ゴジラの適正体重は1万2500t、ガメラは3万1千tとなる。
ゴジラの体重2万tはその1.6倍であり、ガメラの80tは0.0026倍しかない。
つまりゴジラは重すぎるし、ガメラは軽すぎるのだ!
こんなに体重差がある両者がぶつかり合ったら、どうなるのだろう?
正面から激突した場合、ガメラのほうが一方的に弾き飛ばされるのはいうまでもない。
時速50kmで突進してくるゴジラに対して、ガメラが飛行速度マッハ3で体当たりしたとしても、ゴジラのスピードは時速34kmに落ちるだけなのに対し、ガメラは時速410kmでハネ返されて、320m後方に落下する。
肉弾戦では、ゴジラが圧勝するだろう。
◆ゴジラとガメラの空中戦!
だが、いざ勝負となったときに、ガメラがそんな不利な戦い方をするはずはない。ガメラには飛行能力があるのだから、これを活かして、空中から攻撃するだろう。
対するゴジラは空を飛べないから、するとたちまち不利に……?
ところが実は、この怪獣王も1度だけ空を飛んだことがある。映画『ゴジラ対ヘドラ』で、空を飛んで逃げた公害怪獣ヘドラを追って、口から放射能火炎を吐き、その反作用で後ろ向きにヒョロロ~ンと飛んだのだ!
口から吐く火炎を使って、後ろ向きに飛ぶ。あまりの珍妙な飛び方に、初めて見たときにはわが目を疑ったものである。
が、いまは外見を気にしている場合ではない。
ゴジラは、上空のガメラの位置を確認するやクルリと背を向け、放射能火炎を吐いて浮き上がるだろう。そして、後ろ向きのまま火炎を吐き続け、ぐんぐんガメラに迫る!
ゴジラが奇妙な体勢で追ってくるのに気づいたガメラは、ギョッとするに違いない。
とはいえ、ゴジラにとって、ガメラに追いつくのは至難である。
後ろ向きに飛ぶゴジラには、目指すガメラの姿は見えないし、後ろを見ようと首を曲げると、火炎の向きが変わり、飛ぶ方向も変わってしまうからだ。
仮にうまくガメラに迫ったとしても、目下のゴジラは武器となる放射能火炎を、空を飛ぶのに使ってしまっている。攻撃がまったくできず、つまり丸腰で相手に接近しただけ!
こうなるとガメラが有利だ。
脚からのジェット噴射で飛ぶガメラは、炎を吐く口はフリーだから、迫ってきた丸腰ゴジラに火炎を浴びせかけて、この怪獣王に圧勝……いや、ちょっと待て。
火のついたロウソクを動かすと、炎は動かした方向と逆方向にたなびく。空を飛びながら火を吐く場合も同じことが起こるだろう。
つまりガメラが正面に向かって炎を吐きながら飛ぶと、自分が吐いた炎の中に突っ込んでしまう。その火炎に威力があればあるほど、ダメージも大きい。
◆ポイントはガメラの持久力
自分が吐いた炎で焼き肉になるのを避けるには、ガメラはゴジラと空中ですれ違いざま、横向きに火炎を吐くべきだろう。
そして、さっと空の彼方に飛び去る。これを繰り返すのだ。
こうなるとゴジラも、空中をウロウロしてガメラの炎を浴びるより、地上にドッシリ構えて放射能火炎を吐いたほうがマシである。
大空を高速で飛び回るガメラを、ゴジラの火炎がサーチライトのように追う。見応えのある地対空決戦となるに違いない。
放射能火炎がガメラをとらえれば、ゴジラが勝つかもしれない。
だがマッハ3とは、1km彼方からわずか1秒で迫る速さだ。ガメラの高速ヒット&アウェイ戦法が功を奏すれば、ガメラに勝機があるだろう。
――問題は、ガメラがこの攻撃をどれほど続けられるか、だ。
怪獣図鑑などには、ガメラは石油にして「ドラム缶500本分の炎を吐く」とある。
ドラム缶の容量は1本200Lほどで、石油の密度は1Lあたり0.8kgほどだから、ドラム缶500本分の石油とは、重量にしてなんと80t。
前述したようにガメラの体重は80tで、そういう怪獣がなぜ石油80t分の炎を吐けるのかは不思議だが、いまはそんなことを気にしている場合ではない。
肉弾戦に勝ち目の薄いガメラにとっては、80tの石油を使い切るまでにゴジラを倒せるかどうかが、勝敗のカギになるのだ。
もし1回の攻撃でドラム缶50本分の火炎を吐くとしたら、ガメラに与えられたヒット&アウェイの回数は10回。
1回にドラム缶100本分の火炎なら、チャレンジできる回数は5回。
怪獣界最大の宿命の対決は、ガメラが限られた攻撃回数をどう使うかにかかっている。