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高校野球の雑談⑨そもそも継続試合ってなんでしたっけ?

楊順行スポーツライター
甲子園では今後、雨天コールドもノーゲームもなくなった(写真:岡沢克郎/アフロ)

 第105回全国高校野球選手権は、各地で地方大会が真っ盛り。福岡大会では、「あと一人」で試合が終わるという場面から継続試合となった門司大翔館と育徳館の2回戦が、中3日で行われたという。

 そもそも継続試合とは、昨年のセンバツから採用された制度。高校野球特別規則・22の「継続試合の取り扱い」によると「高校野球ではサスペンデッドゲーム(規則7.02)は適用せず、天候状態などで球審が試合の途中で打ち切りを命じた場合は、継続試合として翌日以降に試合を行う」とある。要約して続けると、

「天候状態などで球審が試合の途中で打ち切りを命じた場合は、行われた回数に関係なく、翌日以降に勝敗を決するまで継続して試合を行う」

「試合が停止した個所から再開、出場選手と打撃順は停止したときと全く同一にしなければならないが、規則によって認められる交代は可能」

「停止した試合に出場し、他の選手と交代して退いた選手は継続試合に出場することはできない」

 これにより、天候不良によるコールドゲーム、ノーゲームは甲子園大会では発生しないことになった。

 導入の引き金となったのは、かつてないほどの天候不良に見舞われた2021年夏の甲子園だろう。降雨による順延が5日に及び、試合は始めたものの7回まで終了せず、ノーゲームが2度発生(大会史上19度目と20度目)。何とか試合は成立したが、大阪桐蔭と東海大菅生(西東京)の一戦は田んぼのようなグラウンドで8回途中、降雨コールドゲームとなっている。

大量リードでもノーゲームで逃した初勝利

 かつて03年の夏には、駒大苫小牧(南北海道)が4回途中まで8対0と倉敷工(岡山)を大量リードしながら、雨によるノーゲームで甲子園初勝利を逃したことがあった。当時の脇村春夫・日本高野連会長は、「(一方が大量リードしているのに)中止にするのは非常につらかった」と語っているが、継続試合を導入すればそういう事態も避けられる。そもそも5回を終了し、試合が成立していなければサスペンデッドゲームとはならず、ノーゲームだ(従来の高校野球では、7回終了で成立)。駒苫の例も、これにあたる。だが成立前の試合でも適用される継続試合なら、雨で続行不可能となっても、翌日以降に駒苫のリードから始められるわけだ。

 また高校野球は、これに先立つ20年から、1週間で500球以内という投球数制限を導入しており、ノーゲームを存続させるとその投球数もカウントされるという不公平があった。継続試合の導入で、その不公平も是正されることになる。

 22年に採用されたのは春夏の甲子園大会(明治神宮大会、国体は大会規定による)で、夏の各地方大会は主催者の裁量によって35の大会で採用され、38例の継続試合があったという。この夏は、すべての地方大会で採用しているようだ。ただし昨夏、今春の甲子園では、まだ実現していない。

 さて、3対2と1点リードした門司大翔館の守り、9回裏2死三塁から再開された継続試合。北九州地方はおりからの雨続きで、なんと3日も雨天順延となった。育徳館の打席には、高校通算15本塁打の四番・信濃勇太という絶好のチャンス。だが……結末は一塁ゴロで、ゲームセットとなった。再開まで3日待ち、決着は2分。育徳館には文字通り長く、短い夏だった。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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