学校で相次ぐインフルエンザの集団感染 なぜこの時期に?
学校でインフルエンザの集団感染が相次いでいます。1校で500人規模の感染が発生しているところもあります。なぜこの時期に集団感染が起こるのでしょうか。この理由について解説したいと思います。
現在のインフルエンザ流行状況
2022~2023年シーズンのインフルエンザは、思ったほど流行しませんでした。コミュニティとして感染対策が講じられていたためでしょう。春を迎え、インフルエンザはそろそろ流行の波を終えつつある水準です(図1)。
しかし、実はまだ流行している地域もあります。たとえば、新潟県は、定点医療機関あたりの報告数が全国平均より高い水準にあります。特に、柏崎市、上越市では注意報基準の10を超えています。
学校で大規模な集団感染
宮崎市の高校で、生徒と職員の合計約500人がインフルエンザに集団感染したと報道されました。同時期に、大分市の高校でも約500人のインフルエンザ集団感染が発生し、8クラスが学級閉鎖に陥っています。東京都でも、調布市の小学校で100人規模のインフルエンザ集団発生がありました。
通常インフルエンザは、冬に流行する感染症です。まれに季節外れのインフルエンザの患者さんを診療することがありますが、春になると集団感染は起こりにくいです。
では、なぜ集団感染が相次いでいるのでしょうか?
感染対策の緩和
理由の1つとして、感染対策が大きく緩和されたことが挙げられます。
3月からマスク着用が個人の判断に委ねられ、5月から新型コロナは「5類感染症」になりました。これによって、学校でもマスクの着用が減り、生徒の交流も増えました。
体育祭・運動会の開催
コロナ禍、体育祭・運動会は感染対策を講じた上で開催されてきました。声出し応援をやめたり、学年を分けて開催したり、組体操ではなく集団行動のような競技に変えたり、工夫をこらしてきました。
しかし、こうした対策が緩和されると、集団発生のリスクが高くなってしまいます。
本来、体育祭・運動会は9~10月に開催されることが多かったのですが、熱中症が多発する懸念がありました。また、台風の発生と重なりやすく、日程調整に難渋します。これらの理由から、最近は5~6月に開催する学校が多いようです。
インフルエンザワクチン接種率の低下
コロナ禍になってからというもの、インフルエンザの流行がほとんどないため、インフルエンザワクチンの接種率は低い状況です。自治体の助成がある高齢者の接種は例年通りの水準ですが、その他個人の接種申し込みは激減しました。
そのため、学校などワクチン接種率が低いコミュニティでは、季節外れのインフルエンザが大流行するリスクが高いのです。
ちなみにインフルエンザワクチンは、今の時期は基本的に接種できません。多くの医療機関は1~2月でワクチンの在庫を使い切るか、卸業者が回収するかという形になるので、手元にワクチンを残している医療機関がないためです。
まとめ
マスク着用の緩和、新型コロナの「5類感染症」移行、体育祭・運動会の開催、インフルエンザワクチン接種率の低下など、さまざまな要因が複合的に関連して、地域でインフルエンザの集団感染が相次いでいるものと予想されます(図2)。
新型コロナであろうとインフルエンザであろうと、周囲で流行がみられる場合には、私たちがこれまで続けていたような感染対策の強化を、再度ご検討ください。
(参考)
(1) インフルエンザに関する報道発表資料 2022/2023シーズン(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou_00010.html)