ルミネのCMと『問題のあるレストラン』が浮き彫りにするジェンダー問題
「ルミネが働く女性たちを応援するスペシャルムービー」と題されたルミネのプロモーション映像が「ヒドい」と大きな話題になった。
現在は「ご不快に思われる表現が ありましたことを深く お詫び申し上げます」と謝罪した上で、動画も削除されたため見ることができないので、内容を詳しく紹介しているこちらの記事などを見ていただきたい。
最も問題視されているのは「セクハラ男に気に入られるために女性が『変わらなきゃ』と決意する」という展開だろう。
この映像を見て真っ先に思い浮かべたのは先日まで放送されていた『問題のあるレストラン』(フジテレビ)だ。
『問題のあるレストラン』は、まさにセクシャルハラスメントがまかり通る男社会で女性がいかに自立して生きていくか、が描かれたドラマだった。
第1話では、仕事で失敗した女性が社長の命令で男性社員が大勢いる前で全裸で謝罪するという、ありえないような性暴力が描かれている。
このドラマの主要登場人物の中に、高畑充希が演じた川奈という女性がいる。上記のCMの巻き髪の女性のようにキラキラ着飾った彼女は、この会社の中で、男に媚び、男を利用しながら、セクハラには笑顔で対応してきた。
そんな彼女が、男性たちと戦う主人公・たま子(真木よう子)たちに語った印象的な台詞を少し長いが引用する。
そんな彼女にたま子は言う。
「気にしなくていいなんていう人は、あなたの心を殺そうとしてるんだよ」
「『女子力』なんて男に都合のいい言葉では女の本当の強さは計れない」のだ。
彼女と対照的なキャラクターとして描かれているのが二階堂ふみ演じる新田だ。勉強ばかりしてきていわゆる「女子力」は皆無。彼女は小さいころ、『セーラームーン』ごっこをすると、素直に女子に人気な赤やピンクを選びことができず、“残り物”の緑=セーラージュピター(実際にはジュピターは女性の間で根強い人気があるが。)を選んでいたという。
やがてたま子たちは、第1話でセクハラをされた女性のために訴訟をすることを決意する。
たま子は、その会社が経営するレストランでシェフを務める元恋人の門司(東出昌大)に「もっと相応しい店があるはず」と諭す。
だが、門司は「俺には関係ない」と答える。
「ハラスメント」という言葉は、それまで無意識的、無自覚的に行われ、「ないこと」とされてきたことに名前を与え、精神的な形なき暴力を白日のもとに晒したものだ。
第1話のようなデフォルメされたようなセクハラが「ありえない」「リアリティがない」と無視することは簡単だ。
このドラマではほとんどの男性登場人物が記号的に描かれている。デフォルメされたセクハラと記号化された男性描写。それは暴力的ですらある。しかし、あえてそのように描かなければ見えない現実もある。
無自覚に女性を貶める男性(またはその逆に男性を貶める女性)、そんな男性に迎合する女性(またはその逆)、自分には無関係と見て見ぬふりをする人たち。
性差別を生み、それを助長する構造を変えるのは容易ではない。