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カリフォルニアのダブル山火事 州史上最悪の事態に

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
カリフォルニア州南部の山火事 (9日)(写真:ロイター/アフロ)

カリフォルニア州北部パラダイス近郊の火災は、強風の影響で瞬く間に拡大し、州史上最悪の規模にまで発達しています。一方、州南部ロサンゼルス近郊で起きている山火事はハリケーン並みの暴風により、さらに悪化すると懸念されています。

現在カリフォルニア州では北部と南部で2つの大規模な山火事が発生しています。北部の山火事は「キャンプ・ファイアー」、南部は「ウールジー・ファイアー」と呼ばれています。なおそれぞれの名前は、火災の発生源であるキャンプ・クリーク・ロードと、ウールジー・キャニオン・ロードに由来します。

「キャンプ・ファイアー」

キャンプ・ファイアーは州北部のパラダイス周辺で発生している山火事です。この町は退職後の人々が余生を過ごす楽園として知られている町のようなのですが、今回の火事で町の90%が焼失し、その光景はまるで地獄絵のようです。

13日(火)までの焼失面積は50,600ヘクタール、焼失軒数は7,100を超え、カリフォルニア州史上最多となりました。さらに死者数は42人と、州史上最多の犠牲者を出しています。しかし、いまだに220人以上が行方不明とのことで、死者数は増えると見込まれます。

火災の原因は調査中とのことですが、発火地点近くの高圧電線に異常があったことが分かっており、関係するPG&E社とエジソン・インターナショナル社の株価が急落しています。

「ウールジー・ファイアー」

一方ウールジー・ファイアーは、全米有数の高級住宅地として知られる州南部のベンチュラ郡マリブ周辺で発生しています。

13日(火)までの焼失面積は39,000ヘクタール、鎮火率は30%で、2人の死亡が確認されています。

被災者には複数のハリウッドスターがいて、例えばジェラルド・バトラー氏は半焼した自宅の前で撮った写真を公開しています。また英ヘンリー王子と結婚したメーガン妃の育った家にも火の気が迫るおそれがあるようです。

山火事拡大の原因

山火事が広がった原因は何でしょうか。

それは「ディアブロ・ウィンド(悪魔の風)」と「サンタアナ・ウィンド」と呼ばれる乾燥した強風です。前者はカリフォルニア北部、後者は南部で吹きます。

NASAの衛星写真に筆者加筆
NASAの衛星写真に筆者加筆

アメリカ大盆地に発生した高気圧から吹き出した風がシエラネバダ山脈を越え、フェーン現象を起こして高温となって吹き降りる現象で、特に春と秋に発生します。去年起きたカリフォルニア州北部ナパバレー、南部ロサンゼルス郊外での大規模な山火事もまた、これら二つの風の影響で拡大しました。

13日(火)には北部で風が弱まったものの、南部では14日(水)にかけてサンタアナ・ウィンドが吹き続き、最大36メートルのハリケーン並みの暴風も予想されています。このため南部では今後も一気に火が広がるおそれがあります。

煙は東海岸まで

山火事の煙の拡散予想 (画像元: NOAA)
山火事の煙の拡散予想 (画像元: NOAA)

山火事の煙は風下に当たるサンフランシスコやロサンゼルスにも広がっています。11日(日)には視界不良により、サンフランシスコ国際空港で空の便に欠航や遅延が生じた他、ロサンゼルスなどの海岸線でも空気汚染が「不健康」なレベルまで下がりました。

さらに一部の煙は上空の風に乗って、5,000キロも離れた東海岸まで到達すると予想されています。

【参考リンク】

1.カリフォルニア州北部の建物の被害状況

2.カリフォルニア州南部の大気汚染レベル

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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