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韓国政府の姿勢に記者団も怒り…「板門店宣言」一周年行事ひかえ

徐台教ソウル在住ジャーナリスト。『コリア・フォーカス』編集長
18年4月27日、板門店で南北首脳会談に臨む南北両首脳。写真は合同取材団。

4月27日の「板門店宣言」一周年を控え、北朝鮮側が記念行事への参加を表明しない中、韓国政府の曖昧で表面だけを取り繕う姿勢に失笑を禁じ得ない。

「板門店宣言」とは

南北関係を主管する政府部署・統一部は22日、「午後、南北共同連絡事務所を通じ27日に開催する『4.27』一周年行事の開催について通知した」と明かした。

南北が向かい合う板門店で行われるこの行事は、南北軍事境界線を初めとする5箇所に舞台を設置し、演奏や美術作品の展示、映像上映などがあるとのことだ。韓国に駐在する外交官など内外から500人が参加するという。

言うまでもなく「4.27」とは、昨年4月27日に板門店で11年ぶりに行なわれた南北首脳会談を指す。数千人の記者が取材に訪れ、両首脳の一挙手一投足が世界に向け生中継された。

この会談で南北両首脳が合意した「板門店宣言」では、朴槿恵政権(13〜17年)に断絶した南北関係を回復し軍事的な緊張を緩和すると共に、平和と繁栄ならびに「朝鮮半島の非核化」という目標を共有することが述べられた。

[全訳] 「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」(2018年4月27日)

https://news.yahoo.co.jp/byline/seodaegyo/20180427-00084545/

それから一年、南北関係は大きな進展を見せている。北朝鮮の開城(ケソン)市に常設の連絡事務所が機能し、昨年9月に合意された「南北軍事合意書」により両軍の活動範囲が制限されるなど、軍事的緊張は明らかに下がった。

だが、韓国政府の立場はこうした「成果」を守りたいがためか、釈然としない。以下は筆者が23日午前、ある韓国紙の記者に聞いた話だ。

統一部の会見が紛糾

北朝鮮への通知から一晩明けたこの日、統一部で非公開の記者会見が行なわれた。「一周年記念行事に北朝鮮側が参加するのか、北朝鮮側の反応はどうか」と尋ねる記者団に対し、統一部高官は「通知をしただけなので、(北側が)参加するのか反応を見守っている」と答えた。

曖昧な答えにある記者が「参加要請をしなかったということか」と聞くと、統一部側では「通知内容に参加招待は含まれない。行事の概要を伝えただけだ」と答えた。

これを受けさらに別の記者が、「招待はしなかったが、来るかもしれないということか」と聞くと、「今回の行事は北朝鮮の参加うんぬんよりも、世界の市民と共に朝鮮半島の平和と繁栄を祈願する行事」と言葉を濁した。

続けて記者が、「来ても来なくても招待するのが常識ではないのか?断られると困るから招待しなかったのか?」と聞くと、ふたたび統一部側では「世界の人々が共に参加し、関連する皆が力を合わせて…」と答えたのだった。

この期に及んで、ついにあるベテラン記者が怒りを爆発させた。

「4.27の一周年行事をするのに北側を招待しなかったはずがないだろう。北側が来られないと言うから、形式的に通知するフリだけしたのではないか。『一周年の行事に招待したが北側に断られた』と正直に国民と記者に説明してはどうか」。

念のため、別の記者に確認してみたが、やはり同様の内容だったという。

「板門店宣言」の発表に続き晩餐会まで終え、別れる直前の南北首脳夫妻。昨年4月27日。写真は合同取材団提供。
「板門店宣言」の発表に続き晩餐会まで終え、別れる直前の南北首脳夫妻。昨年4月27日。写真は合同取材団提供。

頑張る所はそこではない

筆者が冒頭で「失笑を禁じ得ない」と表現したのは、北朝鮮側に過度に配慮するような韓国政府の弱腰な立場だ。

南北関係は確かに、金正恩氏が「差し出がましい仲裁者や促進者のフリをするのではなく、民族の利益を擁護する当事者にならなければならない」(12日、最高人民会議)と発言するなど、米朝非核化交渉停滞の影響をモロに受けているのが現状だ。

だが今回、仮に北朝鮮側が参加を断ってきたとしても、それは隠し、カモフラージュするべき性質のものなのだろうか?平和と繁栄を目指す長い南北関係の中にある、紆余曲折の中の一つに過ぎないのではないか?

もっと言うと、こんな所でまごまごするほどの覚悟で始めた「朝鮮半島運転者論」だったのだろうか?

統一部から追加の釈明があると思われるが、くれぐれも堂々とした態度で前に進んで欲しいものである。

ソウル在住ジャーナリスト。『コリア・フォーカス』編集長

群馬県生まれの在日コリアン3世。1999年からソウルに住み人権NGO代表や日本メディアの記者として朝鮮半島問題に関わる。2015年韓国に「永住帰国」すると同時に独立。16年10月から半年以上「ろうそくデモ」と朴槿恵大統領弾劾に伴う大統領選挙を密着取材。17年5月に韓国政治、南北関係など朝鮮半島情勢を扱う『コリアン・ポリティクス』を創刊。20年2月に朝鮮半島と日本の社会問題を解決するメディア『ニュースタンス』への転換を経て、23年9月から再び朝鮮半島情勢に焦点を当てる『コリア・フォーカス』にリニューアル。ソウル外国人特派員協会(SFCC)正会員。22年「第7回鶴峰賞言論部門優秀賞」受賞。

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