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Wサイクルは逃すも24点大勝でA組1位に【第18回アジア競技大会野球日本代表】

横尾弘一野球ジャーナリスト
24点を奪って大勝したタイ戦で、サイクル安打をマークした日本代表の佐藤 旭主将。

 インドネシア・ジャカルタで開催されている第18回アジア競技大会の野球は、8月28日に一次ラウンドを終了。第3戦でタイと対戦した日本は、21安打の猛攻で24点を奪い、3試合連続のコールド勝ちでA組1位となり、スーパーラウンド進出を決めた。

 立っているだけで体力を奪われるような蒸し暑さの中、この日の日本はスターティング・メンバーを大幅に入れ替え。これまで出場機会の少なかった主将の佐藤 旭(東芝)、堀米潤平(東芝)、田村 強(JR西日本)を上位に並べ、強打の地引雄貴(東京ガス)を六番、捕手もベテランの細山田武史(トヨタ自動車)を起用する。

 1回表に佐藤と堀米の連打で1点を先制すると、田村が豪快に2ラン本塁打。二死後に地引も一発を放ち、4点を先行する。

 第1打席で最高の打撃を見せた地引は、3回表にライト右への三塁打、4回表には三遊間のゴロが内野安打となり、二塁打を残してサイクル安打に王手をかける。また、1打席目から二塁打、左前安打、二塁打と勢いに乗る佐藤も、4回表二死一塁でセンターオーバーの三塁打を放ち、本塁打が出ればサイクル安打と2人目の王手だ。

 4回までに16点を奪ったため、大会規定で5回コールドが確実に。最後の攻撃になる5回表、一死一塁で4打席目に立った地引は左飛に倒れる。それでも、二死から打線がつながり、岡部通織(JX-ENEOS)が満塁弾を放つと、一番の佐藤が5打席目に。強くバットを振り抜いた佐藤の打球はレフトに高々と舞い上がり、歓声の中でフェンスを越える。サイクル安打の達成だ。

 しかも、この後も四番・笹川晃平(東京ガス)の3ラン本塁打などで、二死一塁で地引にも5打席目が回る。ベンチから「狙え!」と声が飛んだが、惜しくも遊ゴロに倒れ、極めてレアな2人サイクル安打の記録はならなかった。

ボール球を振らず引きつけて叩く打線は絶好調

 ただ、3試合で15名の野手全員が安打を放ち、11本塁打をマークしたように、実力差がある対戦相手だったとはいえ、日本の打線は絶好調だ。日本人とはタイプが異なる投手にもしっかりタイミングが取れており、強く振れているために打球がいい角度で飛ぶ。若林重喜コーチによる、遅いボールを引きつけて叩く練習の成果と言っていい。

「今回の代表選手は生真面目。互いに技術面の情報交換をしながら、点差の離れた展開になっても、自分の打撃を崩さないようボール球には決して食いつかない」

 打撃陣の好調さを、石井章夫監督はこう分析する。スーパーラウンドで対戦するチャイニーズ・タイペイや韓国の投手陣はそう簡単には打てないだろうが、大きな希望を抱かせる内容を示している。

 29日は休養日で、30日には大一番の韓国戦。勝てば決勝進出が決まる試合で、プロで活躍する韓国の投手を相手に、どんな攻撃を見せてくれるか楽しみだ。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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