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【8月のトレード総括】アトリーは新天地で併殺コンビを復活させ、ロドニーとジャクソンは再びチームメイト

宇根夏樹ベースボール・ライター
チェイス・アトリー&ジミー・ロリンズ(左)October 29, 2008(写真:ロイター/アフロ)

7月31日のトレード・デッドラインが過ぎても、ウェーバーを経由すればトレードは行える。ただ、その年のポストシーズン(プレーオフ)に出場できるのは、8月31日時点でそのチームに在籍していた選手に限られる。今シーズンもまた、最初のデッドラインから第2のデッドラインまでの間に、いくつかのトレードが成立した。

なかでも、8月19日にはビッグ・ネームが動いた。フィラデルフィア・フィリーズからロサンゼルス・ドジャースへ、二塁手のチェイス・アトリーが移籍した。フィリーズは7月に先発左腕のコール・ハメルズをテキサス・レンジャーズを放出しただけでなく、昨年12月には遊撃手のジミー・ロリンズをドジャースへトレードしている。

3人とも、2007~11年にフィリーズが成し遂げた地区5連覇の主力メンバーで、プロ入りから移籍まではフィリーズ一筋にプレーしてきた。イライアス・スポーツ・ビューローによれば、アトリーとロリンズがフィリーズで二遊間コンビとしてスタメン出場した1187試合は、ルー・ウィテカーアラン・トランメル(デトロイト・タイガース)の1612試合に次いで多い(レギュラーシーズンのみ/1900年以降)。アトリーとロリンズは8月22日の試合で、昨年9月8日以来の二遊間コンビを組み、そろって二塁打を放った。アトリーにとってはこれがドジャース初安打で、ロリンズは通算500二塁打に到達した。

また、ハメルズが7月25日のフィリーズ最終登板でノーヒッターを達成したのに対し、アトリーは8月21日に出場したドジャース最初の試合で、マイク・ファイヤーズ(ヒューストン・アストロズ)にノーヒッターを喫した。アトリーは8月30日にもジェイク・アリエタ(シカゴ・カブス)のノーヒッターに遭遇していて、この試合では9回裏2死から空振り三振に倒れた。6月下旬から8月上旬まで、アトリーはDL(故障者リスト)に入っていたため、ハメルズのノーヒッターには出場していない。

ドジャースは8月31日に、外野手のジャスティン・ルジアーノ(←シアトル・マリナーズ)とクリス・ハイジー(←トロント・ブルージェイズ)も獲得した。ハイジーはもともとドジャースにいたが、7月30日に40人ロースターから外され、8月7日に解雇。13日にブルージェイズとマイナー契約を交わしたが、今回のトレードでドジャースへ戻った。現時点で今シーズンのメジャーリーグ出場は、最初にドジャースでプレーした17試合だけだ。

ドジャースを追うサンフランシスコ・ジャイアンツは、噂の出ていたアトリーではなく、故障者が相次ぐ外野陣に2人を加えた。8月20日にシンシナティ・レッズからマーロン・バード、31日にボストン・レッドソックスからアレハンドロ・デアザを獲得。バードは2013年、デアザは2014年に「8月のトレード」を経験しており、2人ともその年に初のポストシーズン出場を果たした。

カブスは8月27日に救援右腕のフェルナンド・ロドニー、31日には外野手のオースティン・ジャクソンを入手した。どちらもマリナーズからの移籍。数日間のブランクを経て、2人は再びチームメイトになった。両選手ともタイガースでプレーしたこともあるが、時期は重なっていない。

レンジャーズは8月7日に一塁手のマイク・ナポリ、18日に外野手のウィル・ベナブルを、それぞれレッドソックスとサンディエゴ・パドレスから獲得した。ナポリは2011~12年にもレンジャーズでプレーし、この両年ともポストシーズンに出場している。

ニューヨーク・メッツはブルペンに左右の両腕を得て、外野手も加えた。8月4日にオークランド・アスレティックスからエリック・オフラハティ、30日にアリゾナ・ダイヤモンドバックスからアディソン・リードを獲得。22日にアトランタ・ブレーブスから移籍したエリック・ヤングJr.は、2013~14年にメッツで、準レギュラーながら2年続けて30盗塁以上を決めている。

他、ブルージェイズは8月8日に内野手のクリフ・ぺニントン(←ダイヤモンドバックス)、カンザスシティ・ロイヤルズは31日に外野手のジョニー・ゴームズ(←ブレーブス)を獲得。アストロズとミネソタ・ツインズは、それぞれ左のリリーバーを入手した。アストロズは8月8日にオリバー・ぺレス(←ダイヤモンドバックス)、ツインズは21日にニール・コッツ(←ミルウォーキー・ブルワーズ)を加えた。

なお、8月7日にはブレーブスとクリーブランド・インディアンスの間でトレードが成立し、マイケル・ボーンニック・スウィッシャーの外野手2人が約1500万ドルとともにブレーブスへ移り、交換に三塁手のクリス・ジョンソンがインディアンスへ移籍した。トレードの時点でも、両チームが今年のポストシーズンに出場する可能性はほぼ消滅していた。

そのからくりをざっくり説明するとこうなる。3人とも近年は不振に喘ぐベテランだが、ボーンとスウィッシャーの契約は2016年まで、ジョンソンは2017年まで残っている。今回のトレードにより、インディアンスは来シーズンの年俸総額からボーンとスウィッシャーの分を取り除くことに成功。一方、ブレーブスが焦点を合わせているのは来シーズンではなく、新球場のサントラスト・パークがオープンする2017年だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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