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肌トラブルに悩む人必見!ミネラルが皮膚疾患に及ぼす効果を徹底解明

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(提供:イメージマート)

【皮膚の健康を左右する亜鉛・銅・鉄の働きとは】

私たちの体内で重要な役割を果たすミネラル、特に亜鉛、銅、鉄は、皮膚の健康維持に欠かせない栄養素です。これらのミネラルが皮膚に与える影響について、詳しく見ていきましょう。

亜鉛は、皮膚の新陳代謝や創傷治癒に深く関わっています。表皮の再生を促し、皮膚のバリア機能を維持することで、外部からの刺激や感染から肌を守る働きがあります。また、炎症を抑制する作用もあるため、アトピー性皮膚炎や乾癬などの炎症性皮膚疾患の改善に効果が期待できます。

銅は、コラーゲンの生成に不可欠なミネラルです。コラーゲンは、皮膚の弾力性を維持し、しわやたるみを予防する上で重要な役割を果たします。さらに、銅はメラニン色素の生成にも関与しているため、シミやそばかすの予防にも役立つと考えられています。

鉄は、皮膚の健康的な色合いを保つために必要不可欠です。ヘモグロビンの主成分として知られる鉄は、酸素を運ぶ働きがありますが、皮膚細胞の新陳代謝にも関わっています。鉄不足は、皮膚の乾燥やくすみ、ひいては肌荒れの原因になることもあるのです。

【皮膚疾患とミネラルの関係性 - 最新の研究から見えてきたこと】

近年、皮膚疾患とミネラルの関係性について、数多くの研究が行われています。例えば、乾癬患者を対象とした研究では、健康な人と比べて血清中の亜鉛濃度が有意に低いことが明らかになっています(Lei et al., 2019)。また、銅の濃度が高い傾向にあることも報告されており、亜鉛と銅のバランスが乱れることで、乾癬の症状が悪化する可能性が示唆されています。

アトピー性皮膚炎についても、亜鉛や鉄の不足との関連性が指摘されています。Gray et al.(2019)によるメタ分析では、アトピー性皮膚炎患者の血清亜鉛濃度が健康な人よりも有意に低いことが示されました。また、鉄欠乏性貧血がアトピー性皮膚炎の重症度と関連があるという報告もあります(Makino et al., 2018)。しかし、これらのミネラルを補給して症状が改善するかどうかは、未だ議論の余地があります。

ミネラルの不均衡が尋常性ざ瘡(にきび)の発症にも関与している可能性が示唆されています。Ozuguz et al.(2014)の研究では、重度の尋常性ざ瘡患者で血清亜鉛濃度が有意に低く、症状の重症度と相関があることが明らかになりました。

ただし、ミネラルの過剰摂取は健康上のリスクもあるため、サプリメントなどで補給する際は医師や薬剤師に相談し、適切な量を摂取することが大切です。また、個人差もあるため、自己判断での補給は避けるべきでしょう。

【皮膚の健康を守る!ミネラルを上手に摂取するためのポイント】

それでは、亜鉛や銅、鉄をバランスよく摂取するためには、どのような食品を選べばいいのでしょうか。

亜鉛は、牡蠣、豚肉、ナッツ類など動物性食品に多く含まれています。植物性食品では、大豆製品や全粒穀物が比較的良い供給源です。

銅は、レバー、豆類、カカオ、キノコ類などに豊富に含まれています。特に、ゴボウは銅の含有量が多い食材として知られています。

鉄は、レバー、赤身の肉、魚介類のほか、ほうれん草、小松菜などの緑黄色野菜にも多く含まれます。また、貝類もヘム鉄の良い供給源です。

バランスの取れた食事を心がけることで、これらのミネラルを効率的に摂取することができます。特に、動物性食品と植物性食品をバランスよく組み合わせることが大切です。また、ビタミンCを同時に摂取することで、鉄の吸収率を高めることもできるでしょう。

しかし、偏食や食事制限などで十分なミネラルが摂れない場合は、医師や薬剤師に相談しながらサプリメントを活用するのも一つの方法です。ただし、必要以上の摂取は控え、適切な量を心がけましょう。

【まとめ】

亜鉛、銅、鉄は、皮膚の健康を維持する上で欠かせないミネラルです。これらのミネラルが不足すると、乾癬やアトピー性皮膚炎、尋常性ざ瘡など、様々な皮膚疾患のリスクが高まる可能性があります。バランスの取れた食事を心がけ、必要に応じて医師や薬剤師に相談しながらサプリメントを活用することで、皮膚の健康を守りましょう。美しく健康的な肌を目指すために、ミネラルを上手に取り入れることが大切です。

参考文献:

Int J Mol Sci. 2024 Mar 29;25(7):3823. doi: 10.3390/ijms25073823.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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