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エッセンシャルオイルの効果と使い方 - ニキビ・アトピー性皮膚炎・乾癬への応用と注意点

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

エッセンシャルオイル(精油)は、植物から抽出した天然の芳香油で、アロマテラピーなどに用いられています。リラックス効果や免疫力の向上などが期待されていますが、最近では皮膚疾患の改善にも効果があるのではないかと注目されています。

ニキビ、アトピー性皮膚炎、乾癬など、様々な皮膚トラブルに対して、エッセンシャルオイルを活用する研究が進められていますが、まだエビデンスレベルは十分とは言えません。あくまで補完的な療法として捉え、標準的な治療を基本とすることが大切です。

【ニキビ・アトピー性皮膚炎・乾癬とエッセンシャルオイル】

ニキビに対しては、ティーツリーオイルの抗菌作用や抗炎症作用に期待が寄せられています。オーストラリアで行われたランダム化比較試験では、ベンゾイルペルオキシドと比べてティーツリーオイルジェルの方が副作用が少ないことが示されました。ただし、ニキビの減少効果はベンゾイルペルオキシドの方が優れていたとのことです。

アトピー性皮膚炎には、カモミールオイルやラベンダーオイルのかゆみ抑制効果や皮膚バリア機能の改善作用が注目されています。ラベンダーオイルについては、ラットを用いた動物実験で、創傷治癒を促進する効果が確認されています。ただし、ヒトでの臨床試験はまだ限定的で、さらなるエビデンスの蓄積が必要とされています。

乾癬に対しては、フランキンセンスオイルの抗炎症作用が症状改善に役立つ可能性が示唆されています。ボスウェリア属植物由来のフランキンセンスオイルを配合したクリームを用いた二重盲検ランダム化比較試験では、プラセボ群と比較して乾癬の症状が有意に改善したと報告されています。

しかし、これらの研究はまだ限られた規模で行われたものが多く、大規模な臨床試験によるエビデンスの確認が不可欠です。現段階では、エッセンシャルオイルはあくまで従来の医学的治療を補完する位置づけと考えるべきでしょう。

エッセンシャルオイルは天然由来ですが、使い方を誤ると皮膚トラブルを引き起こす恐れがあります。中には刺激の強いオイルもあるため、濃度が高すぎたり、使用部位を誤ったりしないよう注意が必要です。自己判断で使用するのは避け、必ず医師に相談しながら進めることが賢明です。

【エッセンシャルオイルの品質と選び方】

エッセンシャルオイルを安全に使用するためには、品質の高い製品を選ぶことが重要です。オイルは天然100%のピュアなものを選び、信頼できるメーカーの製品を使用するようにしましょう。

オイルの抽出方法も品質に大きく影響します。水蒸気蒸留法や圧搾法など、適切な方法で丁寧に抽出された製品を選ぶことが大切です。

また、エッセンシャルオイルは、植物の種類だけでなく、産地や収穫時期、抽出部位によっても成分が異なります。同じ植物でも、品種によって含有成分に違いがあるケースもあるのです。

専門家の助言を参考にしながら、目的に合った高品質なエッセンシャルオイルを選ぶようにしましょう。

【エッセンシャルオイルの使用上の注意】

エッセンシャルオイルを皮膚疾患に用いる際は、以下の点に注意が必要です。

1. 標準的な治療と併用する
2. オイルは必ずキャリアオイルで薄めて使用する(1〜3%程度)
3. 天然100%の高品質なオイルを選ぶ
4. 肌に合わない場合は速やかに使用を中止する
5. アレルギー反応など副作用にも注意する

皮膚疾患は、適切な診断と治療が何より大切です。エッセンシャルオイルに頼りすぎるのは禁物で、あくまで補助的な位置づけと心得るべきでしょう。

使用する際は、低濃度から始めるのがポイントです。少量ずつ使い、肌の様子を見ながら徐々に量を増やしていくようにしましょう。

現時点では、エッセンシャルオイルの効果は限定的と言わざるを得ません。ニキビ、アトピー性皮膚炎、乾癬など、皮膚疾患の症状を和らげる補完的なケアとしては期待できるものの、根本的な治療法とは言えないのが現状です。

皮膚疾患でお悩みの方は、まずは皮膚科専門医による適切な診断と治療を受けることが大切です。その上で、医師と相談しながらエッセンシャルオイルを活用するのであれば、症状の緩和に役立つ可能性があります。

エッセンシャルオイルの効果を確かなものにするには、さらなる研究の蓄積が欠かせません。質の高い大規模臨床試験によるエビデンスの構築が強く望まれるところです。将来的に、エッセンシャルオイルが皮膚疾患の新たな選択肢の一つとなる日が来るかもしれませんが、現段階では慎重に取り組むことが肝要だと言えるでしょう。

参考文献:

Pharmaceuticals (Basel) . 2024 Apr 29;17(5):571. doi: 10.3390/ph17050571.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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