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口腔内の色素斑が気になる方必見!バラン症候群を専門医が解説

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(提供:イメージマート)

【Laugier-Hunziker-Baran症候群(バラン症候群)とは?その特徴と症状】

Laugier-Hunziker-Baran症候群(略してバラン症候群)は、口唇や口腔粘膜に特徴的な色素斑が現れる比較的稀な良性の色素沈着障害です。唇や頬粘膜に、黒色、褐色、灰色の斑点が多発します。まるでゴマをまぶしたように見えることから、「ゴマ粒状色素斑」とも呼ばれています。

この色素斑は直径数mmの小さなものから、数cmに及ぶ大きな斑点まで様々です。他にも、指先や爪、足の裏などにも色素斑が現れることがあります。爪には縦走性の色素線がみられ、爪甲色素線条と呼ばれる症状を呈します。

バラン症候群は全身疾患の合併はなく、良性の疾患とされています。しかし、類似した症状を呈するPeutz-Jeghers症候群では、消化管ポリープを合併し、胃癌や小腸癌のリスクが高いことが知られています。鑑別診断が重要となります。

【ダーモスコピーを用いた新たな診断法とその有用性】

バラン症候群の診断には、視診に加え病理組織検査が行われてきました。しかし近年、皮膚の拡大鏡であるダーモスコピーを用いた非侵襲的な診断法が注目されています。

ダーモスコピーとは、皮膚の表面を拡大して観察する診断機器です。専用の機器を用いて皮膚に光をあて、表皮から真皮上層までを拡大し、色調の変化や構造、血管像などを詳細に観察します。メラノサイト由来の病変の診断に特に有用とされ、悪性黒色腫と良性の色素性病変との鑑別などに用いられます。

ダーモスコピーを用いることで、バラン症候群の色素斑の特徴的な所見を詳細に観察できます。例えば、口腔粘膜では褐色の網目状パターンとそれに伴う線状や曲線状の血管像がみられます。指先では平行隆線パターン、爪では均一な褐色や灰色の縦走線が特徴的とされています。

ダーモスコピーは簡便かつ非侵襲的な検査であり、バラン症候群の早期診断に有用であると考えられます。病理組織検査を補完する検査法として、今後さらなる活用が期待される分野と言えるでしょう。

【バラン症候群と悪性黒色腫の鑑別】

ごくまれではありますが、バラン症候群に合併して口腔粘膜悪性黒色腫が発症した症例報告があります。口腔粘膜原発の悪性黒色腫は進行が速く、予後不良な疾患です。ただし、過去の報告は悪性黒色腫をバラン症候群と誤診した可能性も否めません。

ダーモスコピーでは、悪性黒色腫に特徴的な所見として、不規則な血管像、青白構造、非定型な色素ネットワークなどがみられます。一方、バラン症候群の色素斑は、均一で規則的な色調と構造を示します。これらの所見を詳細に観察することで、両者の鑑別が可能となります。

色素斑の形状変化や不規則な色調を認めた場合は、早急な皮膚科専門医への相談が必要です。必要に応じて病理組織検査を行い、悪性黒色腫を確実に除外することが肝要といえるでしょう。

参考文献:

1. Ko JH et al. Dermoscopic features in Laugier-Hunziker syndrome. J Dermatol. 2011 Jan;38(1):87-90.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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