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神戸がWEリーグ初代タイトルに王手。意地を見せる皇后杯女王・浦和との“チャンピオンシップ”への期待

松原渓スポーツジャーナリスト
優勝争いも佳境を迎えている(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 WEリーグの優勝争いが佳境を迎えている。

 初年度の女王の座に王手をかけたのは、INAC神戸レオネッサだ。神戸は、開幕から8連勝とぶっちぎりの強さで首位を独走。ウインターブレイクの前後で引き分けを2つ挟んだが、13節以降は再び連勝街道をひた走った。星川敬監督は、「油断も驕りもありません」と、タイトルの重圧がかかる中でメンタル面も重視。モチベーション高く臨んでくる各チームの挑戦を退け、僅差の勝利を積み上げてきた。

 そして、13勝2敗で迎えた4月29日の第19節。勝利+2位の浦和が引き分け以下で優勝が決まるという条件下で、ホームのノエビアスタジアム神戸に広島を迎えた。神戸はFW田中美南の2ゴールなどで、この試合に3-2で勝利。優勝セレモニーの準備が整った状態で、1時間遅れでスタートした他会場の浦和と新潟の試合結果を待つこととなった。

盤石の強さを見せる神戸
盤石の強さを見せる神戸写真:アフロスポーツ

 ここで負けるわけにいかないのが浦和だ。一昨季のなでしこリーグ女王で、今年3月には、皇后杯でも初の王座に就いた。

 リーグで唯一の二桁ゴールを決めているFW菅澤優衣香を筆頭に、GK池田咲紀子、MF猶本光……と、スタメンには代表選手がズラリ。パワーやスピード、ドリブルやミドルシュートなど、スキルが高く、個が強い選手が多く、2019年以降、森栄次総監督の下で主力を固定して戦ってきたため、選手間の連係も抜群だ。

 ただメンバーを固定している分、強みは把握されており、各チームも様々な対策を講じてくる。そうした中でもリーグトップの「30」ゴールを決めている攻撃力は今季も健在。一方で、失点も「18」と増えた。特に3月以降のリーグ後半戦は、リードを守りきれない試合が続き、神戸との差は「12」に開いていた。

 その嫌な流れを払拭したい浦和は、浦和駒場スタジアムで行われたこの試合で、攻守に隙のない戦いぶりを披露し、大雨の中で駆けつけた1,400人近い観客を沸かせた。効果的にボールを動かしながら、遠目からもシュートを放つ積極的な展開で、立ち上がりからアクセル全開。楠瀬直木監督は、「雨もあって駒場のピッチ状態が非常に良くて、体育館でプレーするようにボールが滑っていたので、リズム良く動かせました」と、悪天候も味方に付けたことを明かした。

 先制点は22分。ペナルティエリア右の絶好の位置で得たフリーキック。キッカーの猶本が蹴ったライナー性の強いボールを、長身のセンターバックDF南萌華が、上から叩き落とすような弾道で決めた。さらに、36分にはスピードのあるDF清家貴子が菅澤とのワンツーで右サイドを突破し、クロスを猶本が泥臭く押し込んで2-0。

 新潟は後半に攻撃的なカードを次々に切って反撃を試みたが、浦和も攻撃の手を緩めず、2点のリードを守り切った。

2-0勝利に貢献した南萌華
2-0勝利に貢献した南萌華写真:アフロスポーツ

 3試合ぶりの無失点を統率した南は、なでしこジャパンの次世代リーダー候補でもある。「(これまでは)奪われた瞬間に、センターバック2人の前のスペースを使われてしまい、失点につながることがあった。そこは特に(センターバックを組む高橋)はなと話して、相手の攻撃が始まる瞬間の切り替え、声をかけながらマークにつくリスクマネジメントを徹底できました」と、準備の成果を口にした。

 この試合では、正確なパスで攻撃の起点となり、チームを勢いづける先制点も決めている。「うちが引き分けか負けることで、INAC(神戸)の優勝が決まることは分かっていましたが、特に意識せず入りました。GW3連戦の初戦で、どうしても勝利を掴みたいと思っていました」と、中3日で5月4日に控える新潟とのアウェー戦に向けて表情を引き締めた。

【新国立競技場で初のWEリーグ開催!】

 リーグは残り4試合で、神戸と浦和の勝ち点差は「12」から縮まっていない。そして神戸は次節、アウェーの広島戦で引き分け以上で自力優勝を決めることができる。浦和の逆転優勝はかなり難しい状況だが、両者は5月14日の21節で直接対決する。会場はなんと、新国立競技場だ。

 14日の段階で神戸の優勝が決まっている可能性は高いが、消化試合にはならない。このカードは「WEリーグ王者 va皇后杯王者」という構図になり、WEリーグ1年目の真のチャンピオンを決める戦いになるからだ。観客は2万人を目指しているという。

 新国立競技場では先日、FC東京がガンバ大阪を迎えて初のJ1公式戦を行い、4万3千人以上の観客を集めた。花火やLEDを使用した豪華な入場演出も見応えがあった。高額なスタジアム使用料もあって、これまで、サッカーの公式戦が開催される機会は限られていただけに、大きな話題を集めた。

 同会場は東京五輪の女子サッカーの会場になったが、結局、決勝は直前で会場が変更になったため、実現しなかった。この“新・聖地”で、神戸が女子のサッカークラブとしては初の公式戦を開催することを宣言したのだ。

 女子サッカーのサポーターにとっては特別な体験になるだろう。また、女子サッカーを見たことがない人にとっても魅力を知るきっかけになる。

 現在、代表に多くの選手を輩出している両チームの戦力を考えても、白熱した好ゲームが期待できる。鉄壁の強さを誇る神戸と、勝者のメンタリティーを取り戻しつつある浦和。両者が最高の状態で、14日の歴史的な一戦を迎えることに期待したい。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のWEリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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