クレージーな冬 北極海の海氷が最小に
北極海の海氷面積は過去37年間で最小に
アメリカ雪氷データセンター(NSIDC)は3月28日、この冬の北極海の海氷面積の最大は3月24日に観測された1452万平方キロメートル(3月24日)であると発表しました。人工衛星による北極海の観測が始まった1978年11月以降で最も小さい記録です。
例年、北極海の海氷面積は9月中旬頃に最も小さくなり、冬の到来とともに拡大します。そして、海氷面積が一年で最も大きくなるのが3月中旬頃で、その後は再び、夏に向かって海氷は小さくなります。つまり、北極海の海氷は一年を通じて、ほぼ同じ大きさではなく、季節の変化に合わせて大きくなり、小さくなりを繰り返しているのです。
クレージーな冬
しかし、この冬は専門家が「クレージーな冬だった」と驚くほどのスーパー暖冬でした。海氷の成長が進まず、結果的に平年を大きく下回りました。
海氷面積の縮小はこの冬に限ったことではなく、昨冬(2015年)も記録的に小さくなりました。北極海の海氷は温暖化と、繰り返される暖冬で年々小さくなり、すでに危機的な状況にあります。
氷は太陽の光を反射しますが、海が氷に覆われなくなると、海が暖められ、海の熱が大気に伝わり、時間をかけて北半球全体の気候に大きな影響を与えます。最近の研究では北極海の海氷(バレンツ海)が少ない年は日本の冬が寒くなるといわれています。
北極海はさらにヒートアップ
以前、フィンランド北部の北極圏を旅したとき、昇らない太陽と氷点下20度以下の極寒に心を奪われました。北極は世界で最も温暖化が進んでいる場所と知ってはいても、体の心から冷える寒さを体感すると、本当なのだろうかと疑問に思ってしまいます。
しかし、事実はそのとおり。最近では北極海が氷で閉ざされる期間が短くなっているため、新たな航路として注目を集めています。
また、北極海に眠る資源を目当てに、周辺国がさまざまな動きを見せています。北極海の温暖化は単に気候の変化だけでなく、世界の政治や経済に影響する問題としてクローズアップされているのです。
【参考資料】
National Snow and Ice Data Center:The Arctic sets yet another record low maximum extent,28 March 2016
National Snow and Ice Data Center:Arctic sea ice 101
気象庁:海氷域面積の長期変化傾向(北極域),平成27年10月20日
気象庁:海洋の健康診断表 総合診断表 第2版,1.3.1 北極・南極域の海氷,平成25年12月20日
国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC):バレンツ海の海氷減少は、 北極の温暖化を強め、大陸を寒冷化させる!,2012年2月1日発表