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仙台国際ホテルで「落語と晩餐会」の特別な一夜 いったい何が食べられるのか?

東龍グルメジャーナリスト
仙台国際ホテル (C) 東龍

仙台国際ホテルでイベント

最近では宴席も増えてきており、ホテルや飲食店が徐々に勢いを取り戻しています。魅力的なガラディナーも開催されるようになりました。

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以前「サイ・イエングアン リサイタル&自家製キャビア 至福の晩餐会」を紹介した仙台国際ホテルでは、また特別なイベントが行われました。

それは2023年9月18日に開催された「国際派落語家 三遊亭竜楽 浮世絵と愉しむ古典落語と小粋なディナーの夕べ」(30,000円、コース料理、ドリンク、税・サ込)です。

落語とディナーコース

仙台国際ホテル (C) 東龍
仙台国際ホテル (C) 東龍

仙台国際ホテル総支配人であり、東武ホテルマネジメントの代表取締役副社長である野口育男氏が、先の記事で次回開催すると述べていた「本物志向・お客様に夢を与える」というイベント。

15時30分から、シャンパーニュやカクテルなどのアペリティフを嗜みます。場が温まってきたところで、同ホテルと二十年来の付き合いがある三遊亭竜楽師匠の落語を鑑賞。17時30分からディナーが始まるという流れです。

アペリティフ (C) 東龍
アペリティフ (C) 東龍

三遊亭竜楽師匠は、仙台にも数多くのファンをもち、情感あふれる人情噺はもとより、八か国語を操る国際派であり、古典落語の雄としても知られています。今回は新たな試みとして、ゲストに浮世絵伝道師の牧野健太郎氏を迎え、「芸術の都パリで喝采を浴びたプログラムを杜の都で再現」といった趣向で「古典落語と浮世絵語り」を披露。

これだけ充実したイベントだったので、すぐに満席となり、170人のゲストが至福の時を過ごすことになりました。

コース内容

小粋なディナーの夕べ (C) 東龍
小粋なディナーの夕べ (C) 東龍

ガラディナーの内容は次の通りです。

・熱々キノコのタルトレット

・山元町おひさま村農園のさつまいもの冷製スープ“カプチーノ”

・カリフラワーのフォンダンに活ホタテ貝とボタン海老のメリメロ オーラキングサーモンのミキュイ ラヴィゴットソース

・佛跳牆(ファッチュウチョン)

・海鮮とカラスミの高級珍味XO醤炒め

・仙台牛フィレ肉の藁包み塩釜焼き 秋の恵み野菜とともに

・山形産最上早生 手打ちそば

・ピーチメルバ 2023

・ホテルオリジナルブレンドティー「杜の馨」

・ホテルメイドパン 発酵バター

アミューズから始まって、冷前菜、スープ、魚介料理、肉料理、デザートというフルコース仕立て。フランス料理と中国料理のどちらとも味わえるのが嬉しいところです。

熱々キノコのタルトレット

熱々キノコのタルトレット (C) 東龍
熱々キノコのタルトレット (C) 東龍

マッシュルームとエシャロットをソテーしたシャンピニオンデュクセル、原木椎茸、濃厚なサバイヨンソースのタルトです。慎ましやかな甘味をもつ田代農園のフルーツほおずきを合わせました。

山元町おひさま村農園のさつまいもの冷製スープ “カプチーノ”

山元町おひさま村農園のさつまいもの冷製スープ “カプチーノ” (C) 東龍
山元町おひさま村農園のさつまいもの冷製スープ “カプチーノ” (C) 東龍

火を入れて甘くした熟成サツマイモの冷たいスープです。ミルクの泡で軽やかにし、自家製生ハムで塩気を加えました。添えられた折り鶴は、サツマイモのペーストにゼラチンを加えたシートでつくられていて、パリパリっと食べられます。

カリフラワーのフォンダンに活ホタテ貝とボタン海老のメリメロ オーラキングサーモンのミキュイ ラヴィゴットソース

カリフラワーのフォンダンに活ホタテ貝とボタン海老のメリメロ オーラキングサーモンのミキュイ ラヴィゴットソース (C) 東龍
カリフラワーのフォンダンに活ホタテ貝とボタン海老のメリメロ オーラキングサーモンのミキュイ ラヴィゴットソース (C) 東龍

魚介類をメリメロ=混ぜ合わせた、賑やかな前菜です。甘いボタン海老と帆立貝に、香り高いエシャロットを合わせ、ディジョンマスタードとライムジュースをアクセントにしました。カリフラワーのフォンダンのやさしい甘味が印象的です。最高と称されるニュージーランド産のオーラキングサーモンを半生仕立てにし、まろやかな口当たりに。フランボワーズソースの赤、バジルソースとナスタチウムの緑が鮮やかです。

佛跳牆(ファッチュウチョン)

佛跳牆(ファッチュウチョン) (C) 東龍
佛跳牆(ファッチュウチョン) (C) 東龍

フカヒレ、スッポン、比内地鶏、金華ハム、干貝、薄くスライスした花椎茸、衣笠茸、クコの実、干した龍眼、ナツメ、朝鮮人参など様々な食材が使われた極上のスープです。上湯は金華ハム、鶏ガラ、鶏むね肉、干し貝柱と野菜を4時間煮込んだもの。体の芯から温まり、様々な滋味が口の中に広がります。

海鮮とカラスミの高級珍味XO醤炒め

海鮮とカラスミの高級珍味XO醤炒め (C) 東龍
海鮮とカラスミの高級珍味XO醤炒め (C) 東龍

鮑、海老、カラスミ、ナマコと魚介類の高級珍味が盛りだくさんです。コリッとした夏草花、香りのいい黄ニラ、甘い仙台曲がりネギが下にしのばされています。

仙台牛フィレ肉の藁包み塩釜焼き 秋の恵み野菜とともに

仙台牛フィレ肉の藁包み塩釜焼き (C) 東龍
仙台牛フィレ肉の藁包み塩釜焼き (C) 東龍

仙台牛フィレ肉の藁包み塩釜焼き 秋の恵み野菜とともに (C) 東龍
仙台牛フィレ肉の藁包み塩釜焼き 秋の恵み野菜とともに (C) 東龍

仙台牛のフィレ肉にクレピネットを巻き、塩釜生地と藁で覆ってじっくり焼きました。厚みはしっかりありますが、均一で美しいロゼ色に火が入り、非常にやわらかく仕上がっています。フィレ肉は角がとれた穏やかな佳味に仕上がり、そのままでもグレイビーソースをつけてもおいしいです。ガルニチュールは相原農場のツルムラサキ、笹羅農園の茄子、おひさま村農園のイチジク、佐藤勘一郎農園のジャガイモ「紅大福」、庄子農園の万願寺唐辛子。

山形産最上早生 手打ちそば

山形産最上早生 手打ちそば (C) 東龍
山形産最上早生 手打ちそば (C) 東龍

香り高く、甘味とコシのある最上早生そば粉を外二で打った蕎麦です。西洋山葵がちょっとした心地よい刺激。酸化直前まで熟成させてつくられたつゆは、旨味が抜群です。

ピーチメルバ 2023

フランボワーズソースの実演 (C) 東龍
フランボワーズソースの実演 (C) 東龍

ピーチメルバ 2023 (C) 東龍
ピーチメルバ 2023 (C) 東龍

結城果樹園とサンフルーツファームの宮城県産桃を用いたコンポート。濃厚な「竹鶏たまご」のバニラアイスクリームとの相性が抜群です。アーモンドのブランマンジェは風味がよく、フランボワーズソースは実演のできたてで香りが立ちます。上にはサクサクとしたアーモンドのチュイール。

ペアリングの妙味

ドリンクカウンター (C) 東龍
ドリンクカウンター (C) 東龍

ペアリングは非常に独特です。通常は1品に1グラスがマリアージュされますが、ゲストの自由度を高めるために、お酒が同時に提供され、自分で合わせることができます。シャンパーニュ、白ワイン、赤ワイン。日本酒、紹興酒が提供されるので、自身で様々な組み合わせを試すことができました。

誕生の背景

仙台国際ホテル総支配人であり、東武ホテルマネジメントの代表取締役副社長である野口育男氏 (C) 東龍
仙台国際ホテル総支配人であり、東武ホテルマネジメントの代表取締役副社長である野口育男氏 (C) 東龍

「国際派落語家 三遊亭竜楽 浮世絵と愉しむ古典落語と小粋なディナーの夕べ」が開催されたのは、どのような背景からでしょうか。自身も美食家である野口氏は説明します。

「お客様にご好評いただいている晩餐会イベントは毎年恒例で行っていましたが、コロナ禍でやむなく開催を断念していました。コロナ禍が落ち着いて宴会場の営業が再開し、晩餐会イベントも2023年3月19日にようやく復活しました。その時はオペラと料理を楽しむイベントでお客様にとても喜んでいただいたので、今度は三遊亭竜楽様のイベントを再開する運びになりました」

企画の話は年初から始まっていたといいます。

「企画が持ち上がったのは2023年2月頃でした。そこから、三遊亭竜楽様に演目を相談したり、メニューを考案したりしました。8月25日には社員向けに本番さながらの試食会を開催。量や盛り付け、ワインとの相性、お客様の動線などを細部までチェックし、9月はじめには全て確定しました」

何度も何度も調整

ガラディナーの様子 (C) 東龍
ガラディナーの様子 (C) 東龍

これまで何度も大きな晩餐会イベントを成功させてきた野口氏にも苦労したことはあったといいます。

「演目は、コロナ禍で開催ができずにおりましたので、三遊亭竜楽様と今まで培ってきた阿吽の呼吸がとれるのか、そして今回初めての試みとなる浮世絵と古典落語の世界観をお客様に余すことなく体感していただけるのか、懸念しておりました」

料理についてもトライ&エラーを重ねています。

「料理は洋食と中国料理の折衷コースなので、双方の主張が強すぎるとせっかくのコース料理のクオリティが落ちてしまいます。どちらとも存分に楽しんでいただけるように食材、味、量を何度も何度も調整いたしました」

採算度外視で本番さながらの試食会を行ったことが功を奏し、晩餐会イベントは大成功を収めることができたのです。

晩餐会イベントは仙台国際ホテルの宝

最後の挨拶 (C) 東龍
最後の挨拶 (C) 東龍

野口氏は次のように結びます。

「前回3月19日の晩餐会イベントは本当に久しぶりの開催でしたが、お客様にご満足いただけて、社員一同とても喜びを感じていました。私が2006年社長に就任し、2008年から2017年までの間、毎年4回、既に40回以上行ってきました。晩餐会イベントは、お客様に喜んでいただける仙台国際ホテルの大切な宝です」

晩餐会イベントは仙台国際ホテルの宝であると同時に、ゲストにとっての宝でもあります。軌道に乗ってきたところで、次の晩餐会イベントに期待したいです。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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