「東洋の歌姫のリサイタル」と「名工のフレンチ&中華フルコース」がたった4万円! お得な理由とは?
ガラディナーとは
ガラディナーに参加したことがありますか。
ガラディナーとは何かを祝したり、記念したりして、開催される特別なディナーのことです。晩餐会と同じような意味合いで使われます。開催期間は1日から3日くらいが多く、ホテルの宴会場で行われることが一般的です。
これまでにも数多くのガラディナーが行われてきましたが、最近行われたある晩餐会が話題となりました。
それは、2023年3月19日に仙台国際ホテルで行われた、一夜限りの「サイ・イエングアン リサイタル&自家製キャビア 至福の晩餐会」(39,000円、税・サ込)です。
サイ・イエングアン リサイタル&自家製キャビア 至福の晩餐会
コロナ禍でクローズしていた宴会場再開を記念して行われたガラディナーでした。
世界的なソプラノ歌手であり、東洋の歌姫と称されるサイ・イエングアン(崔岩光)氏のリサイタルを鑑賞してから、ディナーを体験するという贅沢な構成。サイ氏と旧知の仲であり、エレクトーン奏者として高い評価を受けている神田将氏が演奏します。
晩餐会のコースは総料理長の菅井敏彦氏と副総料理長・中国料理長の羽田満氏が紡ぎました。菅井氏は「厚生労働大臣表彰」「宮城の名工」「ディシプル・オーギュスト エスコフィエ」を、羽田氏は「宮城の名工」「現代の名工」「黄綬褒章」を受章したという輝かしい実績をもちます。
料理には、生きたチョウザメを加工してつくられたホテル自家製のキャビアもふんだんに使用。通常のキャビアは保存のために、塩分濃度が7%から10%となっているので、キャビア本来の味わいが感じられるとはいえません。しかし、ホテル自家製であれば、塩分濃度を抑えられ、キャビアのフレッシュで繊細な佳味を体験できるのです。仙台国際ホテルは、魚卵本来の旨味を感じやすいように、塩分濃度3%に仕上げています。
2人の“名工”によるスペシャルなメニューを紹介していきましょう。
自家製キャビア軍艦巻き
宮城県七ヶ浜の焼き海苔と、粘りが少なく上品な宮城県登米の「つや姫」の軍艦巻の上には、ホテル自慢の自家製キャビア。海苔は直前に焼いてから巻くので、香りがよく立ちます。醤油を使っていないのでキャビアの繊細な味わいが楽しめ、好みで山ワサビを付けて賞味します。シャンパーニュ、日本酒、ウォッカが同時に提供され、3種類のお酒と合わせられる“粋なマリアージュ”です。
蕪と海の幸、自家製キャビアのハーモニー
サラダ蕪のブランマンジェの上には、マリネしたサラダ蕪のスライスとエディブルフラワー。ダイスカットした生のサラダ蕪や「もものすけ」も添えて、様々な蕪を楽しめます。自家製キャビアとシェルスプーンが添えられており、キャビアを合わせて食べられます。ナスタチウム、ミニオゼイユが散らされ、フランボワーズのソースやバジルのソースと、彩りも豊かです。
自家製キャビアに中国料理の歴史と多彩を添えて
5種類の中国料理のオードブル。生湯葉と自家製キャビア、昆布〆したヒラメのサボイキャベツ巻、白菜の甘酢かけ、スパイスをまぶした春筍。メリハリのある味わいで、紹興酒との相性も抜群です。
作りたて伝統仕立てコンソメスープと至高・上湯スープの共演
ホテル伝統のコンソメスープは、2度も牛肉と香味野菜の風味をつけたダブルコンソメ。温めたワイングラスで提供されるのは、モダンです。上湯スープは、4時間じっくりと煮込みました。金華ハム、鶏ガラ、干し貝柱、干し椎茸などで、旨味たっぷりの力強い味わいに。
フランス料理と中国料理の極上スープを飲み比べることができるのは、まさに口福です。
気仙沼フカヒレ その粋を晩餐会仕立てで
気仙沼のヨシキリザメの尾ビレと手ビレを異なる味付けで食べ比べできるという行幸。手ビレは上湯で煮てから自家製の発酵唐辛子「パオラージャン」で酸味と辛味を付けました。尾ビレは醤油ベースのソースと上湯と白湯で煮込み、干して乾燥させた海老の卵「シャーズー」を旨味の隠し味に。
特撰仙台黒毛和牛骨付きローストビーフ 熱々ポテトのグラタンを付け合わせに
なめらかで肉汁がたっぷりの黒毛和牛サーロインを、骨付きのまま低温で5時間ゆっくりとローストしました。ジューシーで赤身の旨味と脂の美味を味わえます。香味野菜をたっぷりと用いたグレービーソースとブドウ果汁やシナモンなどのスパイスが入ったマスタード、黒胡椒と塩が添えられているので、好みの味変を。ジャガイモのグラタン「ドフィノワーズ」は、仙台国際ホテルのスペシャリテのひとつです。
もものすけのアイスクリームと自家製キャビアのデュエット
仙台市泉区にある田代農園の赤蕪「もものすけ」を、スライスしてシロップ漬けにしたチップと、そのピューレでつくったアイスクリーム、自家製キャビアの塩味が「もものすけ」の甘味を引き立てます。
お愉しみアマゾンカカオのデザート 炎の演出 フレーズジュビレ
アマゾンカカオのクーベルチュールは実に濃厚。そのアイスクリームとミルクジェラートが合わせられ、酸味のあるフレーズジュビレがよいコントラスト。フレーズジュビレは実演でつくられ、フランベの演出もあって大盛り上がりでした。
仙台国際ホテルオリジナルブレンドティー「杜の馨」とフランス小菓子
3種類の小菓子も趣向が凝らされていました。山元町のおひさま村農園の柚子「多田錦」と丸森町石塚養蜂園の蜂蜜「百花」でつくられたフィナンシェ、おひさま村農園の「紅さつま」を使用したスイートポテト、サブレにキャラメルをサンドしてチョコレートでコーティングしたキャラメルサレ。
ホテルメイドパン 発酵バターとヴァージンオリーブオイル
シャンピニオン型のパンは外はカリっとして中はもっちり。有塩のエシレバター、オリーブオイルを添えて。
お酒も充実
ガラディナーにはワインなどのドリンクも含まれていました。
リサイタル前にはアペリティフと4種のカナッペが提供され、爽やかな「シャンパーニュ ロワイエ」、目を引く演出で提供される「シェリー マンサリーニャ」、美しい色合いの「カクテル サクラモヒート」、さらにはノンアルコールドリンクまで楽しめました。
コースでは8種類ものアルコールペアリングを提供。アミューズの自家製キャビアには、「ジョセフ・ペリエ・キュベ・ロワイヤル・ブリュット」「伯楽星 純米大吟醸 宮城 三本木 川崎藏新澤酒」「スミノフ ウォッカ」と、いきなりシャンパーニュと日本酒とウォッカの豪華な飲み比べ。
フカヒレには「紹興酒 古越龍山」が合わせられ、ローストビーフにはブルゴーニュの赤ワイン「ニュイ・サン・ジョルジュ」がマリアージュ。最後はブルゴーニュ地方のスパークリングワイン「クレマン・ド・ブルゴーニュ ロゼ ブリュット」で〆るという、非常にクリエイティビティ溢れるアプローチでした。
誕生の背景
これほどの豪華なディナーはどのようにして誕生したのでしょうか。
仙台国際ホテル総支配人であり、株式会社東武ホテルマネジメントの代表取締役副社長である野口育男氏がキーパーソンです。野口氏は、フランス料理をはじめとした美食、ワインや日本酒といったお酒に造詣が深く、ホテルのオリジナルキャビアをつくるという先進的な試みを、自ら企画して推進した人物。
野口氏は振り返ります。
「このガラディナーの原型となったのは、2005年に系列の東武ホテルレバント東京で行われたイベントです。20年来の知人であるサイさんの歌を鑑賞できることに加えて本格的なディナーも堪能いただけたらお客様に喜んでいただけるのではと、私自身が考えた企画でした」
通常のオペラでは、アペリティフやアミューズは提供されますが、ディナーのコースまではついていません。そこで野口氏が、採算度外視で、リサイタルの後に場所を変えてからディナーまで楽しめるように仕上げたところ、これまでにはない極上のイベントであると話題になりました。
「仙台国際ホテルのイベントは今回で11回目となります。1回目は2008年2月25日に開催され、前回の10回目は2017年に行われました。コロナの影響もあり、しばらく開催できませんでしたが、お客様からご要望の声が多かったので、久しぶりの開催に至った次第です」
従業員の教育にも
第11回目は、昨年の2022年11月から12月頃に企画が持ち上がりました。
「宴会の復活」という狼煙をあげ、ゲストに受け入れられるには何が必要か、社員のモチベーションを上げるためには何が必要かを熟慮したといいます。
「これだけ大きなイベントに携わることによって、従業員も様々なことが学べ、モチベーションも向上します。本番さながらの試食会も行い、従業員からは気付きが多かったというフィードバックをもらっています」
通常であれば、キッチンなどの場所でテイスティングのポーションを立ったまま一口食べてみるだけです。しかし、仙台国際ホテルでは、野口氏によるディレクションのもと、従業員もゲストと同じように会場のテーブルに着いて、ペアリングも体験しているので、顧客目線で価値を高めることができます。
“食の仙台国際ホテル”復活
メニューはどのような経緯で決まったのでしょうか。
「12月から考えはじめ、1月中旬には決まりました。タイトなスケジュールでしたが、集中力を高めて、スピード感をもって進められたと思います。これまではフランス料理のコースでしたが、今回はフランス料理と中国料理のコースだったので、どちらとも味わえるのが嬉しいというご反応もいただいています」
今回の料理で意識したのは、仙台国際ホテル伝統のおもてなしの精神「本物志向・お客様に夢を与える」であり、原点回帰でした。
全てのメニューにこだわりがあり、最後の小菓子に至るまで本物志向を貫いているといいますが、強いて挙げるとしたら、どちらでしょうか。
「強いて挙げるとしたら『自家製キャビアの軍艦巻き』ですね。宮城県七ヶ浜産の海苔をご提供する直前に巻きました。上等な寿司屋では行いますが、あえてこの規模でも決行しました。大変地味な作業ですが、風味や食感を余すことなくお召し上がりいただくためには、欠かすことのできない手間でした」
こだわりのメニューばかりなので、ゲストにもすこぶる好評です。長年の顧客などは、“食の仙台国際ホテル”復活ということで、非常に喜んでいるといいます。
今後も開催する予定
ガラディナーは今後も続けていくのでしょうか。
「もちろん今後も続けていく予定です。今秋には落語家の三遊亭・竜楽様を迎えて、『古典落語と小粋なディナーの夕べ』を開催いたします。これからも『本物志向・お客様に夢を与える』をテーマに掲げ、イベントを開催いたしますので、お楽しみにしてください」
今回は150人という大きな規模で行われましたが、数日ですぐに予約が一杯となりました。全部で4万円未満という価格で、ここまで紹介してきた内容を鑑みれば、十分に納得できることでしょう。
音楽も料理も人々の心を癒やし、感動を与え、明日への力を与えてくれるもの。このような素晴らしいガラディナーが継続されることは非常に喜ばしいことです。