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Facebookが新検索Graph Searchを公開、Googleと何が違うのか?

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
FacebookのGraph Search。文章での条件検索に対応した。

Facebookは米国時間2013年1月15日に、新しい検索プラットホームである「Graph Search」を発表しました。これまではGoogleのような全文検索の仕組みを用いており、お世辞にも目的の情報がすぐに見つかるという経験は少なかったのですが、Facebookらしい、人々のソーシャルネットワーク上での活動を元にした検索を提供する仕組みになります。

Googleはウェブ全体のオープンな情報を優れた検索エンジンの仕組みで探ることができます。しかし、FacebookはFacebookの中という限られた(とはいえ10億人を越えるユーザーが登録している)コミュニティの中だけでの検索であり、情報量はGoogleの方が上です。

しかしユーザーである人と、他の人・ウェブ上の情報・写真・音楽・企業のビジネスなどとの「関係性」の記述に取り組んできたFacebookは、Googleとは全く違う検索の体験を提供することができるでしょう。まずは英語圏のユーザーに対してβテストからスタートします。

Graph Searchで、何ができるの?

Graph Searchで最も大きく違う点は、平易な文章で検索ができること、より自分を中心とした検索が可能になることです。

Googleの場合、キーワードをスペースで区切って複数入力すると効率的に検索ができますが、Googleには自分についての情報を持たせているわけではないので、「me」(私)と検索しても、それはユーザー本人のことではなく、単に「me」という文字列を含むウェブページの羅列を結果として返します。

FacebookのGraph Searchでは、「me」が使っているユーザー自身を意味し、「Friend」(友人)はあなたの友だちを指します。そのため、例えば「Photo of me」と検索すると、Facebookに投稿された自分のタグづけがなされている写真がリストされるようになり、「Friends who live in New York」と検索すれば、自分の友だちのうちニューヨークに住んでいる人の一覧が出てくるわけです。

また、過去に「いいね」ボタンを押したり、コメントをした写真や投稿を見つけ出すこともできます。Facebook上の投稿やリアクションなどを手がかりにして、情報を見つけることができるようになったということです。これまで、Facebookでの自分の活動は、自分のページの「アクティビティログ」で振り返ることができましたが、このログを、平易な文章で検索することができるようになった点も進化のポイントです。

簡単に言えばFacebookにおける「思い出を検索できるようになった」ということでしょう。

思い出の検索をサポートする条件として、まずは、友人のつながり、写真、場所、そして興味からスタートさせる、としています。

ビジネスとモバイルへの影響

「思い出の検索」というと個人のユーザーにフォーカスが当てられているように感じますが、それだけではありません。Facebookにページを開設している企業やブランド、レストランなどもこの検索の対象となります。

Facebookページには、レストランやテレビ番組、製品、学校など、様々なジャンルを設定することができ、リアルな店舗を持つお店の場合には位置情報を登録して、店を訪れた人にチェックインしてもらうことができる仕組みを提供しています。こうしたユーザーとのFacebook上での交流が、検索対象になるのです。

例えば、「Bakery that my friends have been to in San Francisco」と検索すると、友人が行ったことがある(チェックインしたことがある)サンフランシスコのパン屋さんが出てきます。あるいは「TV shows my friends like」と検索すれば、友だちがいいねボタンを押したテレビ番組を調べることができるのです。ディナーの席で、「あの番組面白かったよ!」と教えてくれたとき、番組名が思い出せなくても、話題に出ていた番組を発見できるようになるでしょう。

Facebook上にページを開設している企業やお店にとって、いいねボタンを押してもらったり、実際にお店に行ってチェックインしてもらうことで、そのユーザーや周りの友人が必要なときに検索結果に現れ、知ってもらうことができるようになるということです。

特にリアル店舗にとって、モバイル環境ではさらに重要な意味を発揮するでしょう。現在はデスクトップでの検索が紹介されていますが、モバイル環境では、あらかじめ自分の位置をスマートフォンのGPSで把握していることになり、わざわざ地名を入力しなくても、優先的に近くのお店を紹介してくれるようになるのです。

プライバシーと、ちらつく音声検索

こうして、Facebook上での情報や活動が検索の対象となることで、Googleとは違う、より絞られた情報を見つけ出すことができるようになります。しかしユーザーの情報を使うと言うことで、プライバシーへの懸念も考えられます。

例えば「興味」に関する検索では、現状友人ではないけれども周りで興味がある人を知りたい、というニーズに応えます。例えば、「People who love cycling in my city」と検索すると、自分の街に住んでるサイクリング好きの人を発見でき、サイクリングのサークルに参加して趣味を楽しむ事も可能になります。

しかしそうした興味を知らない人に知られたくない、と言う人にとって検索結果に出てしまうことは迷惑でしかありません。Graph Searchに結果を出したくないというニーズに対して、プライバシー設定できっちりブロックしたり、特定の行動に対して検索対象から外す、といった対策をユーザーは取る必要があります。またFacebookはそうした方法について、ユーザーに伝える努力をしていくべきでしょう。

もう1点、普通の言葉で検索できるようになると、音声で検索をしたくなります。これは、AppleのSiriやGoogle音声検索などが存在しています。現在Appleはスマートフォン・タブレット向けのiOSやMac向けのOS Xで、Facebookの機能を内蔵するようになりました。あるいはSiriに質問したら、FacebookのGraph Searchの結果をリストアップしてくれる、といった連携も期待できるかも知れません。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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