母が読んでいた35年前の育児書を読んでみたら、育児において大切なことは今も昔も変わらなかった
育児書というと、子どもの成長の目安が書いてあるものが多いかと思います。
子どもの成長には個人差があり、子どもの成長に関する研究も進歩しており、この数十年で変化したこともたくさんあるでしょう。
例えば「抱き癖がつくから、抱っこはほどほどに」と言われていたものが、現在は愛着形成として、抱っこは積極的にしてもいいものとされています。
今回は、母が読んでいた35年前の育児書を読んでみて、感じたことを紹介したいと思います。
育児書と言っても、子どもの成長に関するものではなく、子どもとの関わりかたに関する育児書です。
現在の教育に特化した育児書と読み比べて、気づいた点などもご紹介します。
永遠のテーマ『子どものやる気を育てるには、どうすればいい?』
子育てにおける課題や悩みとして、「どうやったら子どものやる気を育めるか」という壁にぶつかる親御さんは今も昔も多いようです。
「子どもが好きなことを頑張ってくれれば、それでいい」と思っていたとしても、本人のやる気がないと、頑張りにはつながりませんよね。
子どもの才能や可能性を伸ばしたいと思うからこそ、どのようにやる気を育てるか悩むのではないでしょうか。
私の母が読んでいた育児書も『やる気を育てる心理作戦』という題名でした。
現在では「自己肯定感」が人生において重要だと言われるようになり、自己肯定感の向上のためには幼少期から「子どものことを褒めて、認めることが大切」だと言われていますよね。
「自己肯定感」という言葉が使われ始めたのは、ここ最近の話ですが、35年より前から「やる気」が人生を左右するということには気づいていたようです。
心理学においても、行動の裏には必ず「動機」が存在すると言われています。
コーチングという技術も、質問によって相手の本心を探り、そこから動機を見つけていくという過程があります。
子育てに限らず、よりよい人生を送るためには、動機(やる気)が重要だということがわかります。
ただ、このやる気というのは、外から働きかけても、自分の中でスイッチが入らないと発揮されません。
かといって、放っておいたら勝手にスイッチが入る、というわけでもありません。
きっかけや、スイッチが入ったタイミングを見逃さないことが、重要なのかもしれません。
35年前の書籍から学ぶ「やる気を育てるための4つの作戦」
やる気を育てるための作戦として、以下の4つの作戦が挙げられていました。
- カンドコロを間違えない作戦
- ほめて、認めてやる作戦
- 個性を見つけてやる作戦
- お母さんにしかできない作戦
「カンドコロ」というのは、「肝心かなめの場所」「ものごとの急所」を指します。
例えば、熱心な親ほど子どもが「不登校」や「登校拒否」に陥りやすいと言われていますが、そのためには、まずは、親がこだわりから離れることが大切です。
学歴によって給料に差が出たり、就職に有利だったりと、まだまだ日本は学歴社会なところがありますが、「なりたい自分になること」が本当の幸せですよね。
自分の不満を子どもによって拭おうとしたり、成績やテストの結果にとらわれるのはよくないということが述べられています。
その他にも、やる気を育ててくれる塾はあるのか、家庭教師にやる気を育てられるかなど、間接的に家庭学習の大切さを気づかせてくれます。
「勉強の量とやる気とは、何の関係もない」というのも核心をついており、量より質が大事だということがわかります。
「ほめて、認めてやる作戦」というのは、子どもも認められれば、やる気が出るのではないかという作戦です。
「がんばってね」と応援されるより、「がんばったね」と認めてもらったほうが、「次もがんばろう!」と思えたり、自分の努力を見てくれていたと実感しますよね。
親が聞き上手になり、子どもが学んだことを話すようにすると、それが学習の理解を深め、記憶の定着にもつながります。
「個性を見つけてやる作戦」は、子どもの集中力を大切にし、競争心もやる気の一部として認め、個性を見つけることが、やる気を育てることにも繋がるという考えです。
「多様性」という言葉も最近出てきた言葉ですが、子どもの「個性」を尊重し、その個性に適したアプローチが必要だということ。
欠点をなくすのではなく、長所を伸ばしていくことが自信にもつながります。
最後の「お母さんにしかできない作戦」は、子育ての核心に迫っています。
お母さんに対する負荷が大きいと思われるでしょうが、家庭で子どもと過ごす時間が長いお母さんが必然的にこの役割を担っているという話だと思います。
子どもの個性を尊重し、親が情報に惑わされないことがなによりも大切だと書かれています。
また、幼少期からの愛着形成で信頼関係を築いておかないと、その後にやる気を育てることは極めて難しいとも述べられています。
現代のベストセラーから学ぶ「子どもの才能の伸ばし方」
累計15万部越えのベストセラーなので、読んだことのある親御さんも多いかもしれません。
子どもの行動を叱るのではなく、親が見方を変えることで、「9つの知能」を伸ばすハーバード式の考えと、自立心と集中力が育つモンテッソーリの教えを掛け合わせた子どもの才能を伸ばす方法が記されています。
こちらの書籍でも、脳の発達が著しく、人格を形成する6歳までの育てかた(親の関わりかた)が重要だと書かれています。
子どもの行動にはちゃんと理由があり、それを知ることで、親も子育てを楽しむ余裕が出てくるのではないでしょうか。
自立心と集中力を育むモンテッソーリで大切にしている「子どもへの8つの接しかた」は、どれも子どもの意思や個性を尊重しています。
また「9つの知能」というのは、学力以外の非認知能力にフォーカスしています。
子育てにおいて、親の関わりかたが大切ということは、今も昔も変わらない
母が読んでいた『やる気を育てる心理作戦』という本は、著者の昌子武司さんが自身の経験や、長年の教育相談という仕事を通じ、さまざまな親子と関わってきてわかった事柄を、親が子育て中にやってしまいがちな誤りを指摘すると同時に、やる気を育てるテクニックを具体的に記した一冊です。
日本が学歴社会であることに疑問を呈し、評価対象が学力である以上、勉強を好きにさせるにはどうするかという一種の葛藤のようなものも感じました。
個人的には、著者の哲学的な考えや、率直な表現や言い回しが非常におもしろかったです。
一方で、『子どもの才能の伸ばし方』という本は、マンガが交えてあり、非常にわかりやすく、”今時”の書籍という印象です。(最近の本なので、当たり前なのですが)
著者の伊藤美佳さんは、幼稚園や保育園などで子どもたちと長年関わってきた一方で、自身の子どもがモンテッソーリ教育の幼稚園での成長に感銘を受け、モンテッソーリ教育とハーバード大学教授の「多重知能理論」を取り入れ、独自のメソッドとして「9つの知能」を開発したそうです。
どちらの2人も、長年教育に携わってきたプロとして、「親の関わりかたが子育てにおいて最も重要」という答えに至ったのだと思います。
時代は違えど、子どもをありのまま受け止め、個性を伸ばしていくということは、不変的なことなのだと感じました。
もしかすると、35年という年月をかけて、この考えがやっと広く認識されてきたのかもしれませんね。
参考書籍:
『やる気を育てる心理作戦』著:昌子武司、あすなろ書房(1987年)
『マンガでよくわかる モンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの才能の伸ばし方』著:伊藤美佳、かんき出版(2020年)