北方領土返還運動の参加促進として望まれるものは(2024年発表版)
内閣府が2024年1月に発表した「北方領土問題に関する世論調査」(※)の結果によると、北方領土返還運動において、参加促進手法としてもっとも多くの人が重要視しているのは「運動をより理解するための情報提供の充実」だった。2/3近くの人が望んでいる。次いで「新聞、テレビやラジオなどを用いた北方領土問題に関する情報の拡散」「北方領土の問題についての学校教育の充実」が続いている。
「北方領土問題」とは北海道本島の東側に位置する、日本固有の領土である北方四島(歯舞(はぼまい)群島、色丹(しこたん)島、国後(くなしり)島、択捉(えとろふ)島)が、ソ連/ロシアによる法的根拠を持たない状態での占拠が続いている状況に対し、日本への返還を求めている問題。「法的根拠」無くとは第二次世界大戦の末期1945年に、当時のソ連がその時点で有効であった日ソ中立条約を無視して対日参戦し、北方四島を占領、ソ連がロシアになった現時点でも占拠し続けていることを指す。またこの問題が存在するため、日ロ間では現在もなお平和条約は締結されていない。
今調査の結果によれば、北方領土の返還を要求する運動が多様な手法で行われているが、参加意思を持つ人は1/3強でしかない。
今件運動では、その中心となってきた元島民をはじめとした関係者が高齢化しており、新しい参加者と運動の継続・意欲の高まりが強く求められている。そこでどのようにすれば新たな参加者を運動に取り組むことができるのか、複数回答で聞いた結果が次のグラフ。最上位には「運動をより理解するための情報提供の充実」が65.6%でついている。
トップの理由は見方を変えれば、現状では情報を提供する手段・機会が不足しているから、運動が理解されず、望んでいるほどの参加者が集まらなくなっていると認識されていることになる。情報を提供する手段の拡充、さらには提供される情報そのものの充実も求められよう。
次いで「新聞、テレビやラジオなどを用いた北方領土問題に関する情報の拡散」。トップの理由よりも手段が具体化しており、新聞やテレビ、ラジオなどが情報提供のツールとして有益だと認識されているとも解釈できる。その次に「北方領土の問題についての学校教育の充実」とあるが、こちらは主に学校経由で子供達に知らしめるべき、つまり見方を変えれば現状では子供達への周知が不足しているとの結論によるものだと考えられる。
「現状では全然足りない」との点では「ウェブサイトやSNSでの広報・啓発の充実」も上位の選択肢と同じ。特に認知ルートとしてはホームページやインターネットのニュースは16.4%、SNSは11.6%でしかないのにもかかわらず、「ウェブサイトやSNSでの広報・啓発の充実」について28.4%の人が必要と考えており、インターネットに対する期待が大きいことを表している。
他方、「気軽に参加できる広報啓発イベントの充実」「団体関係者などが一堂に会する大会の充実」のような、実際に足を運ぶ、日常生活の時間を新たに割くような行動の同意者は低め。「受け手にとって新たな負担となるようなものは避け、日常生活に溶け込むような負担の無い、軽い切り口でアピールすべき」との総意が透けて見えてくる。
特にインターネット関連の展開は重要と思われるが、同時に行政によるインターネットにかかわる「仕掛け」はピント外れ、旧態依然の手法をそのまま取り組んで大いに空振りする傾向が強い。海外の事例も参考にした上で、鼻で笑われないような手立てを講じてほしいものだ。
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※北方領土問題に関する世論調査
直近分は2023年10月5日から11月12日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を持つ人の中から層化2段無作為抽出法によって選ばれた人に対し、郵送法によって行われたもので、有効回答数は1624人。男女比は785対839、年齢階層別構成比は18-29歳149人・30代165人・40代264人・50代295人・60代289人・70歳以上462人。過去の調査もほぼ同様の形式で行われている。
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