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回転寿司店で他人の寿司をレーンから直箸で取った動画が大炎上! 自作自演を主張するもやはり問題のワケ

東龍グルメジャーナリスト
(写真:イメージマート)

回転寿司店での問題行動

これまでYouTuber=YouTube投稿者が起こした食の事件について、いくつも記事を書いてきました。ここ数日、TikToker=TikTok投稿者による、ある動画が世間を騒がせています。

問題になった動画が撮影された場所は、大手チェーン系の回転寿司店。件の投稿者が、レーンを回っている皿から、2貫のうち1貫だけ寿司を取り、食べてしまいました。皿と残りの1貫はそのまま流れていくことに。これには「注文品」と明記されており、他の人がオーダーした寿司がおいしそうだったので食べてしまったという内容でした。

@itaiTikTok 氏のツイート (C) 東龍
@itaiTikTok 氏のツイート (C) 東龍

このTikTokの動画が、別のユーザーによってTwitterへ投稿されたところ、大きな批判があり、炎上しています。

ちなみに、個人的な攻撃をしたいわけではなく、炎上を煽りたいわけでもありません。したがって、リンクを張ったり、Tweetをエンベッドしたりはせず、キャプチャ画像を掲載しています。

TikTokのアカウントは削除

炎上の拡大をおそれてか、件の動画を投稿したTikTokのアカウントは既に削除されました。その一方で、件のTikTok投稿者であると公言したTwitterのアカウントがコメントを投稿しています。このアカウントは2022年9月に開設されているので、今事案を受けてつくられたものではありません。

コメントの内容は次の通りです。本当は自分が注文した寿司であり、他人のものであるようにみせかけて投稿したこと、防犯カメラや注文履歴を確認しても問題ないこと。さらには、謝罪を述べているものの、Twitterの投稿者に対しては転載した動画を1月8日15時までに削除することを要請し、それが叶わない場合には開示請求すると述べています。

指定した日時を過ぎても動画を投稿したツイートは削除されていません。逆に、件のTikTok投稿者であると思われるTwitterアカウントは削除されています。

当記事では、今回の炎上事件について考察していきましょう。

犯罪に値するような行為

Twitterで自分が注文した寿司であると述べられていますが、これが事実であるかどうかは、まだ客観的に判明していません。もしも、他の人がオーダーした寿司を、皿を残したままで2貫のうち1貫だけを取って食べた場合には、どのような問題になるのでしょうか。

回転寿司店では、食べた皿の値段と数によって、支払金額が決まります。したがって、気付いていなかったなど過失であればまだしも、故意に皿の数をごまかしたとすれば、大きな問題です。

一般的に、飲食店と客は、料理、ドリンク、サービスなどを、どれくらいの金額で提供・享受するかといった契約で成り立っています。ファインダイニングであれば、予約時にコース=料理の皿数や値段が決まっており、当日にアルコールドリンクおよびノンアルコールドリンクの分量=金額が決まり、全体の支払額が決まることでしょう。

回転寿司であれば、皿=のせられたものによって値段が異なり、値段別に分類された皿が、それぞれ何皿あるかによって、支払う金額が決まります。つまり、テーブルに置かれた皿が支払額に直結しており、非常に重要な意味をもつのです。

こういったことを前提にすれば、皿の数を誤魔化すことは犯罪となることは容易に想像できることでしょう。

【犯罪?】回転寿司店で皿を取らずにポテトをつまみ食い!/シェアしたくなる法律相談所

食べ終えた皿を他のテーブルに置くと、皿を置いたテーブルの人や飲食店に対しての詐欺罪となったり、回っているものを勝手に食べたら窃盗罪となったりします。したがって、もしも他の人がオーダーした皿から勝手に取って食べたとすれば、他の客から盗んだということになり、他の客が1貫しかないので店に新しくつくり直してもらったとしたら、回転寿司店から盗んだということになるでしょう。いずれにせよ、どちらとも立派な犯罪です。

イメージダウンや食品衛生の問題

では、件の投稿者が弁明しているように、もしも、自分がオーダーした寿司を、他人が注文した寿司のように見せかけたのであれば、問題ないのでしょうか。

犯罪にはなりませんが、やはり問題は残ります。

最初に挙げられるのは、飲食店のイメージダウン。実際にこの回転寿司店の名前をタグ付けして投稿していましたが、それによって、この飲食店で犯罪まがいの行為が行われていると喧伝しています。

飲食店の雰囲気を形成しているのは、飲食店の造りやスタッフだけではありません。雰囲気を形成する最も大きな要素は、実は他ならぬ客そのものです。犯罪にみせかけた行為を行い、その様子を嬉々として投稿する非常識な人が訪れる飲食店に、消費者はあえて訪れたいと思いません。演出された動画ですが、イメージが重要なので、同様のことです。

次に挙げられるのは、食品衛生の問題。本来であれば、レーンから皿を取って、テーブルで寿司を食べるというルールになっています。テーブルは自分が専有しているエリアなので、食品衛生的な観点から問題ありません。しかし、レーンで回っている皿から直箸で寿司だけを取ると、共用エリアであるレーンに口に入れた箸をもっていくことになるので、食品衛生的な観点から好ましくないでしょう。

多くの飲食店は、新型コロナウイルスの感染症対策として、アクリル板を設置したり、席の間隔を広げたりして、飛沫が拡散するのを防いできました。それは回転寿司店でも同じです。飲食店はしっかりと対策しているのに、このような工夫を台無しにするようなマナー違反が起きるのは甚だ残念です。

利用者にも悪影響

飲食店だけではなく、利用者にも悪い影響を及ぼします。

本当はやらせであったとしても、ぱっと見ではやらせであるとわかりません。一見すると犯罪と思われる行為を、誰もが閲覧できる場所へ投稿することによって、犯罪に対する心理的なハードルが下がり、飲食店での犯罪行為が助長される可能性があります。

もしも動画の最後に、本当は自分がオーダーした寿司を他人がオーダーしたように装ったと明記していたとしても、勘違いする閲覧者はいるでしょう。件のTikTokの動画では、それすらも明示していなかったので、より悪質です。

Twitterの投稿では「ネタ」というハッシュタグを記載していたことを免罪符にしています。しかし、これが明示的であり、誤解を完全に払拭するものであるとはいえません。なぜならば、動画のインパクトや雰囲気に比べれば、全く目立たず、気付かれにくいからです。そうであるからこそ、これだけ大きな批判を受けているのではないでしょうか。

ネタであるかどうか、これが面白いかどうかはさておき、飲食店での犯罪行為を投稿することに、何か意義や意味があるようには感じられません。飲食店や利用者にとって、ひいては、投稿者以外の誰かにとって、何かしらのメリットは存在しているのでしょうか。

食をネタにしたコンテンツ

TikTokやYouTubeでは、食に関する炎上事件が起きることがあります。その大きな理由は、飲食店やつくり手に対するリスペクトの欠落や食材や生産者に対する感謝の気持ちの欠如ではないでしょうか。食は、投稿者が考えているような面白い動画を制作するための“材料”ではありません。

食べたり飲んだりすることは、人間の本能であり、誰しもが身近に感じられることです。それだけに、食を粗末に扱うようなコンテンツが大きな反発を生むことは想像に難くありません。

動画の投稿者には、このことをよく理解していただけたら嬉しく思います。そして、当事案のように他の方が発想しないようなクリエイティビティを発揮しながらも、食の素晴らしさを発信するコンテンツを、是非とも創っていただけたら幸甚です。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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