マイケル→普通の人→老いる。映画『ハロウィン THE END』(少しネタバレ)
シリーズ最終章なので最終決戦だ。だがマイケルだって人間。そりゃあ、歳も取るよ。
※この評には少しネタバレがあります。
マイケル・マイヤーズの年齢を計算してみる。
第一作『ハロウィン』で、1963年ハロウィンの夜に6歳だったことが語られるから、本作『ハロウィン THE END』の舞台、2022年ハロウィンの夜には65歳になっている計算だ。
ちょうど年金が出始める年。これで大立ち回りは厳しい。
■人間のファイナル(最期)はやはり寂しい
つまり、シリーズ最終作の本作で期待される「最終決戦」は、迫力のあるものになりにくい、ということだ。
不死身の肉体にもガタがきて、動きだって鈍くなるし、力比べでも若い奴にかなわなくなるし、ケガからの回復も遅れるし……。
ファイナルに相応しいのは、“シリーズ最強のマイケルによるシリーズ史上最も壮絶なバトル”と勝手に期待してしまいがちだが、マイケルだって寄る年波には勝てないのだ。
前作『ハロウィン KILLS』を見た際には、「相手はモンスター級の強さ」として、「至近距離から正々堂々と決闘を挑まず、もっと卑怯にいこう」、「火力は強ければ強いほど良いから、ピストルよりもショットガンがおススメ。安全確実にマイケルを倒すならこれしかない」なんて必勝法をアドバイスしていたのだが、あれは衰えない前提での話。還暦をとっくに越えた相手には、取りこし苦労だったかもしれない。
参考――映画『ハロウィン KILLS』。人々はマイケルに優し過ぎる!(ネタバレ)
これ、マイケルが人間だからこそ生じる制限である。
幽霊や悪魔やモンスターであれば加齢による衰えとは無縁でいられた。だけど、初期設定を変えては続編にならない。第一作のジョン・カーペンター監督も、まさかシリーズ化されてその後44年間も続き、マイケルの終活に悩まされることになろうとは、思ってもいなかったろう。
■より残虐な後継者を作る手もあった?
このマイケル老化問題、私が脚本家ならどうクリアしただろう?
やはり、若い奴にバトンタッチする、かな。
※以下、私の妄想です。
マイケルに後継者を作る。マイケルが人間であることは、この場合は有利な材料になる。マイケルが人間に生まれたということは、人間から第二のマイケルが生まれ得る、ということだから。
で、バトンタッチは思いっ切り残酷なものにする。殺人鬼なんだから「師弟愛」なんて甘っちょろいものがあってはならない。
『エイリアン4』に、エイリアン・クイーンから生まれたニューボーンが、母クリーンを躊躇なく殺す衝撃的なシーンがあった。あれを使う。
マイケル弟子はマイケル師を殺すことで、師を超える存在になる。マイケルを殺してくれて「助かった!」と安堵した次の瞬間に惨殺される人々。新たな恐怖の時代の始まりである――。
問題は、『ハロウィン THE END』がジ・エンドにならず、“看板に偽りあり”で袋叩きにされかねないことだろう。
どう終わらせれば、シリーズの最後とマイケルの最期に相応しいのか?
これ、かなり難しい問題なんです。本作はこの難問をクリアできていない、と私は思う。じゃあ、代案を出してみろ、と言われたら困るのだが。
みなさんはこの最終作どう見ましたか?
※写真提供はシッチェス・ファンタスティック映画祭