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帝京大学の竹山晃暉、新ゴールキッカーとしての特訓+α法明かす。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真中央が竹山。ピンチの時でも「そういう時ほど落ち着いている」と強調する。(写真:アフロスポーツ)

 大学選手権8連覇中の帝京大学で1年時からエース格と目されてきた竹山晃暉は、3年目となる今季は春からゴールキッカーも任されている。

 トライ後のコンバージョンや相手の反則後のペナルティーゴールを任されるゴールキッカーは、前年度まで日本代表で現パナソニックの松田力也が務めていた。一方で竹山も、昨季から松田とともにキックの練習を積んできていた。

 身長176センチ、体重82キロ。決して大柄ではないが、持ち前のポジショニングやランニングスキルを持ち味とする。奈良・御所実業高校時代は男子7人制ユース日本代表に名を連ね、帝京大学でも初年度は加盟する関東大学対抗戦A で2位の18トライをマーク。甘い顔立ちと相まって注目を集めてきた。

 9月30日、東京・秩父宮ラグビー場。加盟する関東大学ラグビー対抗戦Aの2戦目で、ウイングとして今秋初先発を果たす。日本体育大学を相手に70-3で勝利した。この日、自身は2トライを挙げ、コンバージョンゴールを10本中10本、成功させる。

 試合後、取材エリアに現れ普段の取り組みなどについて語った。その言葉からは、常勝集団の中長期的な視座も見え隠れする。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――きょうの試合。立ち上がりは相手の圧力を受けるなどしましたが、最終的には快勝しました。

「今日のゲームは、自分たちの大学選手権優勝という目標に向かってのプロセス。ジュニア(控えチームの公式大会)も含めて16試合あるのですが、その16分の2にあたります。ひとつひとつのプレーを丁寧にやっていこう、と、臨みました。ただ前半の前半、相手の勢いのあるアタック、ディフェンスに雰囲気的に飲み込まれたところがある。それに、自分たちのやらなければならないことが明確になっていなかった。1年生が多かった分(4人が先発)、僕らがサポートできればよかったのですが、それ以上に1年生がてんぱってしまっていました。そこをうまく修正していきたいな、というのが、今後の課題として出たと思います」

――自陣へ蹴り戻された時、新人選手の隣でパスを受けて蹴り返す。そういう場面がありました。

「僕も1年生の時に色々と助けてもらっていたので。ゲームの時に何をしなくてはいけないかを言ってあげると、リラックスしていいプレーができる。帝京大学の代表として1年生から試合に出ることは、とても誇りのある事でもある。そこに自信を持ってもらって、伸び伸びとできる環境を作っていきたいです。自分自身としては、これから選手権に向けて、対抗戦ではひとつひとつのプレーの丁寧さを(意識する)。コンバージョンもしっかり蹴られたと思うので、これからも精度を高く、仕事を果たしていきたいと思います」

――コンバージョンは10本中10本成功。

「それをスタンダードにできるように。ラストワンプレー(のペナルティーゴールで)狙って、と言ってもらえるような選手になりたいなと思います。そのためにも、信頼作りをしていきたいなと思っています」

――長距離を走ってトライを決めた後のコンバージョンも、多く発生しそう。

「それをイメージした想定内の練習をしています。息を上げた状態で、コンストレーションの切れた状態で蹴る、と。22メートルとゴールラインの間を1往復、2往復してから蹴ったり…。あとはラストプレーとか、前半の締めくくりといった風に、シチュエーションを決めて蹴ることもあります」

――前年度は松田選手が蹴っていました。

「プレッシャーはあります。どこからでも入る松田力也選手、というイメージがあった。そこを埋めたい、と、3年生のシーズンをスタートさせました。今年、来年と蹴らせてもらえると思うのですが、いい結果を出せるように頑張っていきたい。…来年も蹴るか、ということに関しては、少し考えてもいます。いまの1年生にいいキッカーがいれば、大舞台で蹴らせてあげて、彼らが3、4年生になった時に『帝京大学にはいいキッカーがいる』という状態にしたい、とも。ただ、いまは自分が帝京大学のキッカーとしてやっていきたいと思っています」

――試合終盤、みぞおちにタックルを決められていました。

「来るのはわかっていたので構えていたのですが、構えようと思った時に入られて。本当はあそこでパスが放れればよかった。ポジショニングから、修正していきたいです」

――点差のついた後半27分頃、自陣中盤左へ攻め込まれた際の防御は見事でした。境界線の後ろへ回って接点に身体をねじ込み、相手の反則を誘います。

「3年生なので、ブレイクダウン(接点)にもどんどん行かないと信頼を得られない。今日はディフェンスの部分で身体を当てられたと思います。これからも課題のディフェンスを、もっとハイレベルになった時もできるようにしていきたいです」

 竹山の白眉について、向こうの陣営の1人が舌を巻いていた。

 日本体育大学は、帝京大学の大きく揺さぶる攻撃に備え、両翼にあたるウイングのうち片側を前方の防御網に入るよう打ち合わせていた。竹山の対面にあたる右ウイングの深見柊真も、自身のサイドに球が来たら極端に前進していた。

 結果、その手前にあたるアウトサイドセンターの城大二郎がビックタックルを連発。竹山の「前半の前半、相手の勢いのあるアタック、ディフェンスに雰囲気的に飲み込まれたところがある」の背景には、かような準備があったのだ。

ところが時間が経つにつれ、竹山のある声が気になったと深見は言う。

「前半は城が常に上がってシャットダウンするというディフェンスがはまっていたんですが、後半は竹山が『裏、裏、裏、裏』と。それを聞いて僕が上がれないうちに、帝京大学は(防御網の)くぼんだ所を突いてきたり、僕が下がっているために城が(前後のバランスを取るあまり)上がれないところで外へ放ってきたり…。帝京大学は明確に修正をして、(穴を)突いてくる」

 共同取材の輪が解けた後、当の竹山がその件を伝え聞く。自らの視野と情報発信のスキルについて、口笛を吹くように明かす。

「あのウイングの選手は、僕のコールを聞いて反応をしていたと思うんですけど…。相手がやって来ることがわかっていたので、それを(仲間に)伝えてあげた、ということです。相手にそう言ってもらえることは嬉しいことなので、僕も相手のウイングから盗めるところを盗めるようにしていきたいと思っています」

 試合までのプロセスや試合中の心境を朗々と具体的に語る竹山。目下、「丁寧さ」を意識する抜け目のないエースである。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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