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KADOKAWAによるアニメホテル閉館の衝撃:考え得る外的要因とは

小新井涼アニメウォッチャー
EJアニメホテルが所在するところざわサクラタウン(筆者撮影)

“「好きな物語に、泊まる」を理念としたコンセプトホテル(公式HPより)”として、2020年10月に埼玉県所沢にオープンした「EJアニメホテル」が、今年5月31日を持って閉館することが発表され、大きな反響が起きました。

新型コロナウィルスによる制限も徐々に緩和され、本来ならより一層インバウンドや国内旅行者の利用も期待できるタイミングでの閉館には、SNSでも様々な声があがっています。

発表を受けての人々の反応、そして考え得る閉館の要因には、どんなものがあるのでしょうか。

■様々な反応

アニメとの“コラボを前提に開業”した珍しいホテルとして、オープン時も注目を集めたEJアニメホテル。それが3年足らずで閉館に至ったことに関しては、発表時、やはり多くの驚きの声が上がりました。

次いで生じていたのが、発表に関するネット記事等に掲載されたホテルの客室写真をみての、批判的な反応です。

それらで取り上げられた写真だけみるとコラボルームの装飾は比較的シンプル。

そのため写真をみたアニメファンからは、しょぼい、アニメファンを舐めている、閉館も納得といったようなニュアンスの、かなり厳しい声が当初あがりました。

一方で生じたのが、そうしたコラボルームへの批判的な感想をみた、実際に宿泊した人達からのホテルへの好意的な感想です。

写真からは伝わりにくいですが、実際のコラボルームには、装飾をはじめ、持ち帰り可能なアメニティやとりおろし音声でのウェルカム映像、専用端末で遊べる作品関連のミッションやキャラクターが起こしてくれるアラームなど、ファンには嬉しい特典も盛り沢山。

レポートや感想をあげているファンからの評価も高く、決してアニメファンを舐めているような内容ではなかったとの声が多くあがっています。

あくまでホテルの満足度は人それぞれで、数値で示すこともできませんが、少なくともそうした反応をみるに、そこで提供されているサービスは閉鎖の要因となるほど酷いものであったとは考えにくいようです。

■外的要因

そうなると、閉館はホテルを取り巻く様々な外的要因によるものも大きかったことが考えられます。

SNS上でも、オープン以降続いていた新型コロナウィルスの影響をはじめ、周知が不十分であったことやアクセスが複雑な立地であったことなどが、考え得る要因として多く挙がっていました。

加えてひとつ大きいと思われるのが、ここ数年程で、競合となるサービスが他の一般的なホテルでも頻繁に行われるようになってきていることです。※

かねてより、プリキュアやトーマスルーム、ディズニーホテルの客室など、キッズファミリー層からアニメファンに限らない層にまで向けたコンセプトルームは既に存在していました。

それらとは別に、特にここ5年程の間に、ハイターゲットな作品ファン層や推しのいるファン層に向けたコラボや宿泊プランのサービスが、各地の一般的なホテルなどでも実施される機会がかなり増えてきたのです。

たとえば、池袋 サンシャインシティプリンスホテルの作品コラボや、東京ドームホテルの推し活宿泊プランなどをみるだけでも分かる通り、そこでのサービスにもEJアニメホテルと同様に、ファンが楽しめる仕掛けが沢山用意されています。

もしも、作品世界が楽しめる、プロジェクター等を使って推し活ができる、という宿泊施設が日本でそこにしか無かったとしたら、ファンの間でも頻繁に話題にのぼるでしょうし、多少立地が不便であったとしても利用へのハードルにはならないかもしれません。

しかし同様のサービスが、元々アクセスの良い一般のホテルでも行われているならば、数ある選択肢のうちのひとつとして希少性は薄れ、そこでしかコラボが行われていない作品ファンや近隣に所用がある人以外からは、なかなか食指も動きにくくなってしまいます。

今回は様々な要因が重なっての閉館ではあると思うので、もちろんそれが決定打という訳ではありません。

しかしその背景には、国内外でのアニメ人気や認知度の高まりを受けてオープンした施設が、皮肉にも同様のニーズにより生まれた競合により集客面での影響を受けていた面も、少なからずあったのではないでしょうか。

※2023年4月14日18:36 一部漢字表記等修正

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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