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今年上半期、CMでも光っていた女性たち…のんさん、古川琴音さん、あのちゃんも

碓井広義メディア文化評論家
のんさん出演の国民年金基金CM(広報サイトより)

猛暑の7月となりました。

今年1~6月の上半期、女性たちが光っていたCMを振り返ってみます。

【のんさん】

諦めない生き方を、そのまま体現

この4月からNHK・BSプレミアムで『あまちゃん』が再放送されています。

ご存じのように、2013年の4月から9月にかけて放送された、朝ドラの歴史に残る名作の1本です。

ヒロインの天野アキを演じているのは、能年玲奈(現在は、のん)さん。

16歳のアキは、母の春子(小泉今日子さん)によれば「地味で、暗くて、パッとしなくて、何のとり得もない女の子」でした。

そんな引っ込み思案の少女が、やがて多くの人を元気づける「アイドル」へと成長していく物語です。

国民年金基金のCM「夢を、上乗せしよう」篇に、のんさんが登場しました。

アトリエでキャンバスと向き合い、夢中で絵筆を動かしている、のんさん。

真剣で楽しそうなその横顔に、自身によるナレーションが重なります。

「独立したあの日から、将来のことも自分で考えるんだなあって。私は一生、夢を追い続けたいんです」

『あまちゃん』から10年。様々な体験を積み重ねての今があります。

夢を諦めない。現状に満足せず、夢を上乗せしていくこと。

のんさんの生き方が、それを体現しているような気がします。

【古川琴音さん】

すてきな母娘、演じ分けも見事

サントリー「ほろよい」の新作CM「ほろよいで話そ。」篇は、淡いグリーンの色調が印象的なアニメーションで始まります。

遠くに海が見える、アトリエのような一室。2人の女性が差し向かいで談笑しています。

やがて「ほろよい」で乾杯すると映像が実写に変わり、彼女たちが古川琴音さんとCharaさんであることが分かるのです。

何を話しているのだろう。とにかく楽しそうです。

「私たちって、時々親子」と琴音さん。

「時々、友だち」と続けるCharaさん。

母と娘の関係は一筋縄ではいきません。喧嘩ばかりしていても仲が悪いとは限らない。

また平穏な日々の裏で対立が深まっていたりもする。でも、この母娘は大丈夫でしょう。

バックに流れているのは、Charaさんが1997年に発表した「やさしい気持ち」のアレンジ曲。

当時、琴音さんはまだ生後6カ月でした。

そんな2人が今、画面の中で素敵な母と娘になっています。

NHK大河ドラマ『どうする家康』で目を引く、怪しい巫女との演じ分けも見事な琴音さん。

俳優としての進化の加速度が増しているようです。

【あのちゃん】

未知との遭遇に、自由人もタジタジ

KDDIのau三太郎シリーズ「新人さんのあまのじゃ子」篇で、強烈なキャラクターが登場しました。

舞台は竜宮城。桃太郎(松田翔太さん)と浦島太郎(桐谷健太さん)に、乙姫(菜々緒さん)が新人のあまのじゃ子(あのちゃん)を引き合わせます。

2人は「俺たちは英雄の…」と自己紹介。

ところが、あまのじゃ子は「英雄ってそんなに偉いんですか?」と軽くいなしちゃう。

さらに「生きてるだけで偉くないですか?」と突っ込んできました。

慌てた乙姫が、「2人に会えるの楽しみにしてたのよ~」とフォローするも、「してないです」とニベもありません。

「若いね~」と苦笑いの2人に、「若いでまとめないでください!」と追い打ちをかけます。

いやはや、これは只者ではありません。

桃太郎も浦島太郎も、常識に縛られない自由人です。

そんな彼らをタジタジとさせる「新世代」の出現。

理解不能な相手を、つい「年齢」でくくろうとした、桃太郎たちの困惑が伝わってきます。

しかし未知との遭遇は、新たな世界観や価値観との出会いでもあります。

揺さぶられる自分を楽しみながら、自然体で向き合っていけばいいのではないでしょうか。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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