アマゾン、噂の「会員制デジタル図書館」発表か? 電子書籍の読み放題サービス、テストページを一時公開
米アマゾン・ドットコムが、定額制で読み放題の電子書籍サービスを準備していると海外メディアが大きく報じている。
アマゾンは今のところ正式発表をしておらず、コメントも出していない。だが、業界関係者の話やテストページが、まもなくサービスが始まることを示唆していると海外メディアは伝えている。
グーグルの検索ロボットがテストページを捕捉
報道のきっかけとなったのは、アマゾンが7月16日に一時的に公開したサービスのテストページ。そこには「キンドル・アンリミテッド(Kindle Unlimited)」というサービス名と、「月額9.99ドルで、60万冊以上の書籍をあらゆる機器で楽しめます」との説明が書かれてあった。
これを含む新サービスに関する一連のウェブページはすでに削除されているが、米グーグルの検索ロボットがデータを収集しており、その一部が今もキャッシュに残っている。
これを見ると、人気作品、文芸小説、注目作家などの分類で、対象となる電子書籍が紹介されている。テクノロジー系ニュースブログのギガオム(Gigaom)によると、このほかにも「KUテスト」というテストページが一時的に公開され、そこには63万8416タイトルの電子書籍と、7351タイトルのオーディオブックが表示されていた。
米ウォールストリート・ジャーナルによると、その中にはスカラスティック(Scholastic)という米出版社の書籍もあった。そこで、同紙が出版社に問い合わせたところ、広報担当者は、アマゾンが新サービスに関して連絡を取ってきたと話したという。
また、アマゾンと出版社がすでに結んでいる契約には、書籍コンテンツを定額制サービスに利用できるという条項が盛り込まれている。これにより、アマゾンは別途契約を結ぶことなくサービスを開始できるという。
既存の「Kindleオーナーライブラリー」と異なる本格的サービス
なおアマゾンには「Kindleオーナーライブラリー」という電子書籍のレンタルサービスがある。
ただし、こちらは、同社の書籍端末「キンドル」や、タブレット端末「キンドルファイア」のみで利用でき、有料の商品配送優遇プログラム「アマゾン・プライム(Amazon Prime)」に加入する必要がある。また、レンタルできる書籍は1カ月に1冊という制約も設けられている。
これに対し、新サービスは「あらゆる機器で利用できる」とあり、アンドロイド端末やiOS端末上のキンドルアプリで利用できるようになるのではないかと見られている。
また米テッククランチは、「キンドル・アンリミテッド」はアマゾンの新たな戦略だと伝えている。
というのも、これまで同社が提供してきたサブスクリプションサービスは、いずれも「アマゾン・プライム」の特典の一部だからだ。「Kindleオーナーライブラリー」、見放題の映像配信サービス「プライム・インスタント・ビデオ」、先頃始めた音楽聴き放題サービス「プライム・ミュージック」はどれも、年額99ドルのプライムに値頃感を出そうと狙ったものだ。
「アマゾン・プライム」と切り離し単独で提供
一方、これまでの情報によると、新サービスはプライムとは切り離して提供される可能性が高い。アマゾンは電子書籍市場にいち早く参入しており、この分野に強みを持っている。単独サービスとして展開しても十分に勝算があると同社は考えているようだと海外メディアは伝えている。
アマゾンが、「会員制デジタル図書館」を計画しているという噂は3年ほど前からあり、ジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)が出版社側と交渉していると伝えられていた。今回の報道が正しければ、支払金額や対象作品を巡る交渉がようやくまとまったということになる。
同社は先月、かねて噂されていたスマートフォン「ファイア(Fire)」を発表しており、7月25日に出荷を開始する。こうした自社ブランドのハードウエア販売を後押しするためにも、サービス、コンテンツの拡充が不可欠と言われている。
(JBpress:2014年7月18日号に掲載)