日本作品もノミネート。オスカー短編アニメ部門の候補作を見た。
長編部門に比べると、ずっと目立たないのがオスカーの短編部門。短編にはアニメ、ライブアクション、ドキュメンタリーの3部門があるが、批評家の目にもあまり触れることがないので、反響がわからず、この分野の予測は極めて難しい。
短編部門は、まず、その分野を専門とするアカデミー会員の中から選ばれた人々で構成されるグループが、資格に当てはまる作品を見て絞り込み、段階を経て候補作5作品を決める。資格を得るためには、映画祭などで上映されて受賞していたり、L.A.で最低3日間、劇場にて上映されているなど、いくつかの条件がある。候補作が発表されたら、あとは、アカデミー会員全員が投票する。しかし、とくにこういった短編部門や、音響編集など専門的な部門は、「候補作全作品を見ていない」「よくわからない」という理由で、その部分を空白のまま投票する人も少なくないようだ。
今年の短編部門の候補作は、「Feral」(アメリカ、)「Mr. Hublot」(フランス、)「ミッキーのミニー救出大作戦」(アメリカ、)「九十九」(日本、)「Room on the Broom」(イギリス)の5作品。CGアニメあれば2Dもあり、作風もすべてまったく違う、ユニークな作品が集まっている。
「Feral」(上映時間13分)は、ロード・アイランドの芸術学校の卒業生ダニエル・ソーザが、ほぼひとりで作りあげた2Dアニメ。サンダンス映画祭で上映された。狼に育てられた男の子が、やがて人間に助けられる物語で、色がほとんどなく、会話も、明確なストーリーラインもない、静かで、シンプルで、アーティスティックな作品だ。
「Mr. Hublot」(上映時間11分)も、会話のない映画。SF的な舞台で展開されるCGアニメで、孤独な男性がロボットの犬の世話をするようになり、そこから絆が生まれていく。単純な話だが、ビジュアルは美しく、心温まる映画。
「ミッキーのミニー救出大作戦」(上映時間6分)は、初期のミッキーマウスをスクリーンによみがえらせたレトロな作品。爆発的にヒットしている「アナと雪の女王」の前にセット上映されているため、見ている人の数の多さは、ほかの候補作と比較にならない。(『モンスターズ・ユニバーシティ』とセット上映されたピクサーの『ブルー・アンブレラ』は候補漏れした。)古き良きどたばたコメディぶりが、いかにも昔懐かしく、年配の世代には間違いなくアピールするが、意外にも子供たちからも大きな笑いを取っている。
「九十九」(上映時間14分)は、日本の時代物。雨やどりのために見知らぬ家に入り込んだ男が、モノノケと遭遇するという物語。監督は森田修平。日本では、オムニバス映画「SHORT PEACE」のひとつとして、昨年夏に公開された。いかにも18世紀の日本らしい風景や衣装、字幕入りのせりふが、アカデミー会員の目には異国情緒たっぷりに映ると思われる。
「Room to Broom」(上映時間25分)は、おそらく今回の候補作の中で、もっともわかりやすいタイプの作品。主人公の魔女は、猫、犬、鳥、カエルなど、重くなることもかえりみず、魔法のほうきに乗せる仲間をどんどん増やしていく。彼女がドラゴンから襲われる危機に直面した時、決して仲良しとは言えなかったそれらの動物は、力を合わせて彼女を救う。ストーリーラインがしっかりしている上、メッセージも感じられる作品で、声の出演も、サリー・ホーキンス(『ブルージャスミン』で助演女優部門に候補入りもしている、)サイモン・ペグ、ジリアン・アンダーソンなど有名どころが揃うが、それは果たして吉と出るのか、よくあるパターンでおもしろくないのか。結果は、まもなく判明する。