パリ・サンジェルマンで形成される「シン・銀河系軍団」と問われる大型補強の成果。
花の都と称されるパリが、熱狂に包まれている。
リオネル・メッシの移籍先が決定した。バルセロナ残留を望みながら、それが叶わなかったメッシは、パリ・サンジェルマンに加入。バルセロナでトップデビューした際に着けていた「30番」を与えられ、フランスで新たな挑戦に向かう。
メッシの到着を、パリの人々は歓迎した。世界最高の選手を一目見ようと沿道は埋め尽くされ、“生メッシ”をカメラに収めようと誰もがスマホを必死に掲げていた。その日の10時にオープンした公式ショップでメッシのユニフォームは即完売。なお、ネット販売においても開店前にすでに売り切れだった。
「クレイジーだった。とても驚かされたよ。人々にああいう反応をしてもらえて、居心地の良さを感じないわけがない」とはメッシの言葉だ。
「クラブに感謝を捧げたい。バルセロナから(退団の)公式声明が出されてから迅速に行動してくれた。これだけ早くすべてをまとめるのは簡単ではない。僕の移籍を容易にしてくれた」
■移籍市場の動き
この夏、パリSGは積極的に補強を敢行している。メッシだけではない。セルヒオ・ラモス(フリートランスファー/前所属レアル・マドリー)、ジョルジニオ・ワイナルドゥム(フリートランスファー/リヴァプール)、ジャンルイジ・ドンナルンマ(フリートランスファー/ミラン)、ダニーロ・ペレイラ(レンタル後完全移籍/移籍金1600万ユーロ)、アクラフ・ハキミ(移籍金6000万ユーロ/約78億円/インテル)が加入した。
ただ、多くの選手が移籍金ゼロで加入している。先日、移籍金1億1700万ユーロ(約152億円)でジャック・グリーリッシュを獲得したマンチェスター・シティ、移籍金8500万ユーロ(約110億円)でジェイドン・サンチョを獲得したマンチェスター・ユナイテッドといったプレミア勢に比べれば、大金をはたいているわけではない。
ただ、パリSGの選手たちの年俸は決して安くない。メッシには、年俸3500万ユーロ(約45億円)を準備した。ネイマール(推定年俸3600万ユーロ/約46億円)、キリアン・エムバペ(2450万ユーロ/約32億円)、S・ラモス(2000万ユーロ/約26億円)、ドンナルンマ(2000万ユーロ/約26億円)、ワイナルドゥム(980万ユーロ/約12億円)、アクラフ(980万ユーロ/約12億円)、彼らが受け取る額は欧州でもトップクラスである。
「我々はファイナンシャル・フェア・プレーを守っている。すべての移籍の前に、フランスのリーグや株主と話し合いの場を設けている。メッシの獲得が実現したのは、その点で問題がないからだ」
これはナセル・アル・ケライフィ会長の弁である。2011年に会長職に就いたアル・ケライフィとしては、ついに“ドリームチーム”を手にしたというところだろう。
新たな銀河系軍団の誕生。スペインやフランスのメデイアでは、パリSGがそのように評されている。
銀河系軍団―ーロス・ガラクティコスー―は2000年から2006年にかけて一世を風靡した。フロレンティーノ・ペレス会長がレアル・マドリーを強くするために採った施策は、毎年移籍市場が開くたびにスタープレーヤーを獲得して、メディアとファンの期待値を爆上げしながら勝利を目指すというものだった。
ルイス・フィーゴのバルセロナからの禁断の移籍に始まり、ジネディーヌ・ジダン、ロナウド、デイビッド・ベッカム、マイケル・オーウェンと大物選手が次々にスペインに降り立った。
象徴的なのは、フィーゴとネイマールの移籍である。200年夏に移籍金6100万ユーロ(約79億円)で移籍したフィーゴ、2017年夏に契約解除金2億2200万ユーロ(約288億円)で移籍したネイマール。“裏切り者”あるいは“金の亡者”と揶揄された両者であるが、いずれもバルセロナを離れて新天地に向かった。
■大型補強の成果
2011年夏以降、パリSGは補強に13億9100万ユーロ(約1807億円)を投じている。
メッシ、ネイマール、エンバペ、S・ラモス、アンヘル・ディ・マリア、マルコ・ヴェッラッティ…。その結果、“新銀河系軍団“あるいは”ドリームチーム“が形成された。
歴史的にみても、パリSGのそれは浅い。クラブが創設されたのは1970年だ。チャンピオンズリーグで13度の優勝を誇るレアル・マドリーには、100年以上の歴史がある。
ライー、ペドロ・パウレタ、ジョージ・ウェア、ロナウジーニョ、ベッカムと複数選手がクラブ史に名を刻んだ。アル・ケライフィ会長就任の数年前には、セカンドユニフォームの制作にルイ・ヴィトンが携わったことがある。新興勢力のシンボルが、メッシを確保して欧州の頂を見据えている。