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バイデン大統領がロックダウンに「絶対戻らない」3つの理由 米オミクロン株対策 日本はどうする?

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
「ロックダウンには絶対戻らない」と強調したバイデン大統領。(写真:ロイター/アフロ)

 全米の新規感染件数の73%を占めるまで急増したオミクロン株による感染。

 全米で最も人口が多い郡であるロサンゼルス郡(人口約1000万人)では、連日、1日の新規感染件数が3,000を超える日が続いていたが、22日に報告された新規感染件数は6500と1日で倍増した。2週間以内には、新規感染のほとんどがオミクロン株による感染になると予測されている。

 ロサンゼルス郡公衆衛生局によると、20日時点で、同郡でオミクロン株による感染が確認された件数は99。オミクロン株により入院したり、亡くなったりした人はいないものの、オミクロン株はデルタ株よりも感染力が強いことから、感染件数の増加とともに医療が逼迫する可能性があることが懸念されている。

 アメリカではオミクロン株による感染者が急増しているものの、ワクチンの普及により、1年前と同じ状況ではなく、ビジネスやスクールの閉鎖などのロックダウンは必要ないという見方が様々な行政レベルで示されている。

 ロサンゼルス郡公衆衛生局のバーバラ・フェラー局長も「感染者が激増した1年前と同じ状況ではない。ワクチン接種の普及(ロサンゼルス郡のワクチン接種完了率は66%)で状況は良好。昨年のように、店をロックダウンしたり、ステイホームしたりする必要はないと思う」との見方を示した。ロサンゼルス市のガルセッティー市長も同様の見方だ。

ロックダウンには絶対戻らない

 バイデン大統領も、21日、オミクロン株対策に関する演説を行う中で、状況はロックダウンが始まった2020年3月時点とは異なるとし、「(パンデミックでロックダウンが始まった)2020年3月に戻るのか?とよくきかれるが、答えは“絶対に戻らない”だ」と語気を強め、ビジネスやスクールの閉鎖を行わない方針を示した。

 バイデン大統領はロックダウンに戻らない理由として、以下の3つの点を指摘している。

1. 2020年3月時点では誰もワクチンを打っていなかったが、今は、2億人以上の人々がワクチン接種を完了していること(アメリカのワクチン接種完了率は62.4%)。接種を完了し、ブースター接種も受けた人は、感染してもほとんどが無症状や軽症ですむ可能性が高いこと。

2. 21ヶ月前より、人工呼吸器や防護服などのサプライがあり、ワクチン未接種者の感染による入院増加に対する準備ができていること。

3. 新型コロナに対する取り組み方がわかったこと。昨年は学校を閉鎖したが、今では5〜11歳児もワクチン接種しており、学校を閉鎖する必要がなくなったこと。

ブースター接種体制と検査体制の拡充

 バイデン大統領はさらに、この冬の新型コロナ・アクション・プランについても説明。

 新たに1万のワクチン接種場を追加したことや、ブースター接種ためにワクチン接種場をさらに増やし、FEMA(米連邦緊急事態管理庁)に全米的にポップ・アップ・クリニックを設けさせてブースター接種を提供する方針などについて話した。

 また、オミクロン株は感染力が高いことから感染者を見つけることが重要であるとして、連邦政府は、1月から無料の家庭用簡易検査キットの配布を始める予定だ。さらには、検査キャパシティーが不足しているところに緊急検査場を設けたり、グーグルで至近の検査場を見つけることができるようにもするという。

 医療が逼迫する可能性に備え、人工呼吸器や防護服などのサプライを迅速に病院に供給したり、病院に軍の医師やナースを派遣したり、病院のそばに緊急時対応センターを作る準備もしているという。

 アメリカはリソースの拡充により、ロックダウンすることなく、“ウィズコロナ”を実施していこうとしている。

今が正念場

 リソースの中でも、バイデン大統領が重視しているのはやはりワクチンだ。繰り返し、ワクチン接種をするよう訴えた。

「オミクロン株は懸念すべきだが、パニックに陥ってはならない。ワクチン接種を完了しており、特に、ブースター接種も受けていたら、強い防御力を得られる。しかし、ワクチン接種を受けていない人は重症化して入院したり、亡くなる可能性もある」

 実際、テキサス州ではワクチン接種を受けていなかった、基礎疾患のある50代の男性がオミクロン株に感染し、亡くなった。

 さらに、パンデミックは終わっておらず、今が正念場であると強調。

「みなが疲れており、終わらせたいと思っていることはわかっているが、まだ終わっておらず、正念場にいる。我々には以前よりツールがある。準備もできている。我々は乗り切れる」

 一方、ヨーロッパを見ると、オランダは19日から厳格なロックダウンに入った。アイルランドも日曜の午前零時から1月30日まで、レストランやバー、カフェの営業時間は午後8時までとする制限を敷いた。

 その正体がまだ完全には把握しきれていないオミクロン株に対する各国の対応は異なっているのだ。

 日本を見ると、オミクロン株に対し、外国人入国禁止による水際対策で、現在のゼロコロナに近い状況を保とうとしているようだが、すでに大阪や京都ではオミクロン株による市中感染も発生しており、今後も感染者数が増加すると予測されている。

 日本はオミクロン株による感染拡大により再び時短営業のような制限に戻るのか、あるいはアメリカが行っているようなリソースの拡充によるウィズコロナに移行するのか、今後の動きが注目されるところだ。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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