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グラント・ハッティングに聞く。サンウルブズのラインアウトはなぜ乱れた?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
懐が深い。(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

 公式記録で「身長201センチ、体重112キロ」。文句なしのビッグマンである。

 日本のサンウルブズでは南アフリカ出身のグラント・ハッティングが戦列復帰。国際リーグのスーパーラグビーで今季初勝利を目指す。4月14日、東京・秩父宮ラグビー場でのブルーズとの第9節で、ロックとして先発する。

 2016年から日本のクボタでプレーしてきたハッティングは、母国のライオンズ、ブルズでもスーパーラグビーを経験してきた27歳。2016年に来日し、日本のトップリーグでは昨季までクボタの一員としてプレーした(今季から神戸製鋼に加入)。他国での代表経験はなく、連続居住3年以上で得られる日本代表入り資格の取得も間近と見られている。

 ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ曰く「サンウルブズのプレーにフィットしている選手」。過去戦は胸椎の怪我のため欠場も、復帰が期待されていた。

 13日、秩父宮で前日練習をおこない、共同取材に応じた。

 

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――怪我から復帰し、久々の出場となります。

「とてもエキサイティングな気持ちです。タッチラインの向こう側で試合を観るというのは、いいものではありませんでした。明日はしっかりとプレーし、今季初勝利をもぎ取りたいです」

――ハッティング選手以外の先発選手は、前節と同じメンバーです。連携は強くなっていますか。

「今週のトレーニングはいままでで一番いいものでした。同じメンバーが出続けることでコミュニケーションも密になり、いい影響が出ています」

 ハッティングに期待されるのは、ラインアウトの安定化である。ラインアウトとは、グラウンドの外へボールが出た後に試合を再開させるプレー。両軍のフォワード陣がタッチラインと垂直に並び、両軍の間に投げられたボールを空中で競り合う。

 今季のサンウルブズは、自軍ラインアウト成功率を前15チーム中最下位の77.4パーセントとしている。球がまっすぐ投げ入れられない「ノット・ストレート」の反則を取られたり、相手の擁する2メートル超級の選手に空中で球をはたかれたりしている。

 列強国に比べ体格差で下回る日本のチームとしては位置取り、リフト(飛ぶ選手を支える動き)、ジャンプのスピードや精度にこだわりたいところだが、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチの指導するラインアウトセッションは、相手の分析結果に基づく動きの練習が主体となっている。身長で相手と伍するハッティングの存在が、いっそう必要になってきそうだ。

――ラインアウトでは、ハッティング選手が頼りになります。

「これまで獲得率が100パーセントになっていないのはご存知の通りですが、今回はいいジャンパーもいて、いいプランもある。風が強くなければ、100パーセントに到達するのではないでしょうか」

――ハッティング選手が出ていない時のサンウルブズのラインアウトについて、印象をお聞かせください。

「うまくいかなかった部分があり、それが大きな損失に繋がりました。ただ、明日は100パーセントに到達するようにベストを尽くします」

――具体的にどんな「うまくいかなかった部分」があり、明日はどう改善するつもりですか。

「個人のミスや風があった。(改善に向けた)ポイントはリレーションシップ(互いの連携)を取るということ。プランをしっかりと遂行すれば、明日はうまくいく」

――サンウルブズのフォワード陣は、日本人、韓国人、ジョージア人、南アフリカ人、オーストラリア人と多国籍の選手で構成されています(直近の出場メンバーに限る)。言葉の壁が、ラインアウトの「リレーションシップ」に影響している部分はありますか。

「(影響が)あるかないかで言えば、あります。ただ、障害ではあっても、小さな障害ですので、これをしっかりと乗り越えます。どのプレーヤーもベーシックな日本語は理解しているつもりです。…ただ、ジョージア人に日本語を理解させるのは大変ですね(一同、笑い)」

 これまでの獲得率低迷の理由を、「個人のミス」や言葉の壁に見出すハッティング。今季初勝利に向けては、空中戦に臨む選手同士の「リレーションシップ」を深めたいという。

 チーム全体について話が及ぶと、所属選手のポテンシャルを高く買う発言が続いた。

――全体的に、明日は相手のどこを上回って勝ちたいですか。

「相手を上回るというよりも、ミスを減らすのが大事です。私たちにはミスが多かったのですが、サンウルブズにはいい選手がたくさんいてトライも取れる。課題は、ミスを減らすことです」

 クボタで同僚だった日本代表の立川理道が認める通り、明るい好漢で鳴らすハッティング。空中でも地上でもハードに戦い、歓喜の瞬間を迎えたい。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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