「強い」「大型」「遅い」という危険三要素を持つ台風10号
太平洋高気圧と台風10号
東日本から西日本は8月12日にかけて太平洋高気圧に覆われて暑い日が続き、連日にわたり日最高気温が35度以上となる猛暑日のところがあります(図1)。
この優勢な太平洋高気圧により、小笠原近海の台風10号の動きがブロックされ、東や北へ動けなくなっています。
日本付近には台風9号と台風10号があります。
沖縄県の先島諸島を8月8日夜遅くから9日未明に通過した台風9号は、中国大陸の華中を北上中で、14日には渤海で最大風速が毎秒17.2メートル以下に衰え、熱帯低気圧に変わる見込みです。
台風9号は、日本への直接的な影響はなくなりましたが、動きの遅かった台風10号が太平洋高気圧の周りをまわるように、日本の南海上を北西に進み、その後は進路を北よりに変えながら15日頃に西日本に接近し、上陸するおそれがあります(図2)。
つまり、お盆期間中に台風10号が襲来する可能性が高くなりました(図3)。
多くの人が移動するお盆期間での襲来ですので、大きな影響が出ることが懸念されます。
台風10号の暴風域に入る確率
今年、令和元年(2019年)5月から、台風の強さについての予報が3日先までから5日先までに延長されましたので、「5日先までに西日本で台風10号の暴風域に入る確率が30~70パーセント」という情報は、平成の時代は発表されませんでした。
気象庁ホームページには、暴風域に入る確率について、図3の分布予報だけでなく、都道府県をいくつかに細分した地域に対して、1時間ごとに暴風域に入る確率が提供されています。
例えば、宮崎県の宮崎地区では、8月14日未明から暴風域に入る確率が上昇しはじめ、15日の明け方に確率がピークになると予想されています(図4)。
この情報も、平成の時代は提供できませんでした。
台風が接近してくれば確率のピーク値が大きくなり、確率が100パーセントになれば暴風域に入ったことになります。
台風の危険三要素
台風の勢力が強いと大災害が発生しますので、台風の強さは、台風災害の危険要素であることは言うまでもありません。
しかし、台風の勢力が強くなくても大災害が発生することがあります。
それは、台風の広がりが大きい時と、台風の動きが遅いときです。
台風の広がりが大きいと、台風による暴風や強い雨の継続時間が長くなります。
このため、建物が長時間の暴風に耐えられなくなり倒壊、あるいは、雨の総量が非常に多くなって洪水や土砂災害が発生しやすくなります。
また、台風の広がりが小さくても、動きが遅いと、台風進路にあたる地方では、比較的狭い範囲とはいえ、台風による暴風や強い雨の継続時間が長くなります。
台風の危険要素として、「勢力が強い」「規模が大きい」「速度が遅い」の3つがあり、この危険三要素のうち、1つでもあればより一層の警戒が必要な台風ということができます。
しかし、台風10号は、この危険三要素をすべて持っています。
気象庁では各地に早期注意情報を発表し、8月14日と15日は西日本を中心として、大雨警報や暴風警報などの警報を発表する可能性が「高」としています(図5)。
台風10号から離れていても
近くに台風10号がある小笠原諸島では、8月12日にかけて非常に強い風が吹き、猛烈なしけとなる見込みですが、西日本と東日本の太平洋側や南西諸島でも、12日午後からはうねりを伴った大しけとなる見込みです。
うねりは、遠くにある台風からやってくる波長の長い波で、海岸付近では晴れて風が穏やかでも波が高くなり、事故が多いことから、昔から「土用波」として恐れられてきました。
台風10号による風や雨が強まる前の8月12日には、東日本から西日本の太平洋側では、台風10号からの波がうねりとしてはいってきますので波浪警報が発表される可能性があります(図6)。
うねりには警戒することがあります。
それは、うねりのような波長が長い波は、海岸付近の地形の影響を大きく受け、局地的に大きくなるところがあることです。
東日本の太平洋側から沖縄本島まで3メートルの波が押し寄せるという予報でも、海岸地形によっては、この値以上の波となります。
海岸で海の事故が起きるのは、晴れて風もないおだやかな状態で、うねりが高いときです。
大荒れのときではありません。
大荒れの時は多くの人が用心するので、むしろ事故はおきません。油断大敵です。
図1、図2、図5、図6の出典:ウェザーマップ提供。
図3、図4の出典:気象庁ホームページ。