北京・大気汚染で史上初の「赤色警報」発令
現在の北京は最高レベルの高濃度スモッグに覆われています。
深刻な状態が長続きする恐れがあるために、今日(8日)から、かつて北京で出されたことのない「赤色警報」が発令されます。これに伴い、都市機能も一部遮断されてしまうのです。
「赤色警報」の意味
中国政府は警報を4段階で区別しています。低いレベルから順に「青色」、「黄色」、「オレンジ」そして「赤色」となっています。
最も深刻な「赤色警報」は、重度の汚染が72時間以上続くことが予想される時に出されるものです。この警報の発令時には、学校の閉鎖、工場の操業停止、屋外作業の禁止などの措置が取られます。さらに、奇数日は奇数ナンバーの車しか通れないなどの、車両の走行規制も行われるのです。首都機能が奪われ、経済損失もあまりに大きくなるために、これまでに北京で赤色警報が出たことはありませんでした。
実際、先週PM2.5の値が世界保健機関が人体に問題ないと定める基準の25倍にも達し、汚染状態が5日間に渡り続きましたが、その時でも、警報レベルはオレンジでした。ネット上では、中国政府の判断を非難する記事が掲載されたものの、その後記事は意図的に削除されてしまったそうです。
今冬の大気汚染の原因
北京にとって、冬はスモッグシーズンです。それは、石炭ストーブの使用によって、石炭が大量に燃やされることで汚染物質が増えるためです。また冬は放射冷却によって、人の暮らす地面付近で気温が下がり、密度が高く重い空気とともに汚染物質が溜りやすくなります。加えて、北京は盆地なので、よりスモッグによる影響が出やすい地形と言えます。
さらに、史上最大規模といわれる、現在進行中のエルニーニョにより、今後被害が一層悪くなる恐れがあります。エルニーニョ時には、北京では風や降水の少ない天候になることが多く、よどんだ空気を周辺に分散させることないからです。
いつまで続くのか
赤色警報は10日(木曜)まで発令されますが、その後は低気圧の接近に伴って風が吹き、改善される見込みです。
ただ、一時的に状況がよくなったとしても、スモッグの本格的なシーズンはこれからです。それは、暖房消費が増えることに加え、シベリア高気圧に覆われて、晴天率が高くなるからです。
中国政府はCOP21において、2030年までに二酸化炭素排出量を減少に転じさせると言及しています。しかし逆に言えば、早急な対策は望めないということです。中国では大気汚染が原因で、毎日4000人、毎年160万人が死亡しているという研究もあります。このまま続けば、さらに甚大な被害が広がることは目に見えています。