東京ロスジェネ男の叫び。「年収400万円では恋愛する気になれません」
●今朝の100円ニュース:負担増の春(朝日新聞)
明日から消費税が上がる。だけでなく、国民年金保険料は増えて、支給額は厚生年金も含めて減るらしい(今朝の朝日新聞より)。「増税前セール」などという品のない商戦も終わり、消費は冷え込むことになりそうだ。
男性の場合、懐が寂しいと恋愛や結婚をする気になれない。共働きをすれば家庭を築ける場合でも、収入が一定基準よりも少ないと「男としての自信」を失ってしまうのだ。現在、その「基準」はいくらぐらいなのだろうか。
2008年から09年にかけて、僕は同世代(ロストジェネレーション:1972~82年生まれ)の未婚男性50人にインタビューをした。彼女がいる人はわずか17人。しかし、平均年齢30.4歳という「若さ」もあって、年収額によらず気ままで明るい生活をしている人が多かった。
あれから5年が経つ。再取材をOKしてくれた38人を訪ね直すと、15人が結婚をしていた(詳細は日経ウーマンオンライン記事を参照)。半数に満たない数字だが、母集団が「平均年齢30歳でも結婚していない男たち」なので、それなりにがんばったと言えるのではないか。
結婚していない人の中には、高年収なのに遊び回っている渉外弁護士や医者が含まれる。結婚するかしないかは収入以上に価値観の違いが反映しているのかもしれない。
一方で、恋愛するかしないかは収入の多寡が如実に影響している。既婚者15人の平均年収が661万円(未婚者平均は584万円)なのに対して、彼女がいない未婚者は444万円だった。
さらに、前回調査時も今回も彼女がいない人の平均年収は398万円。取材対象者のほとんどが東京在住であるため、一人暮らしをしていると気軽にデートする余裕がない金額だ。
野心家の地方出身者が作り上げてきた街ともいえる東京では、経済的な理由で実家を出られない男性がモテる余地はほとんどない。というよりも、男性本人に現実の女性と向き合う気持ちがなくなる。自分が縮んで弱くなり、何かを成し遂げられる気がせず、誰にも会いたくない気分――。30代で年収400万円を割り込んだ経験のある男性にしかわからないだろう。
彼らが恋愛する気持ちになるためには2つしか道はない。1つは、転職を含めた創意工夫と努力をして、年収400万円を超える生活を送ること。これは年齢を重ねるにつれて難しくなる。
取材者の中には年収240万円の歯科技工士(37歳)がいたが、彼の場合は労働条件が劣悪すぎる歯科技工士業界に見切りをつけて、昔からの夢だったバイク販売店に転職をした過去がある。しかし、国内のバイク市場は縮小傾向にあり、夢破れた彼は過酷な歯科技工士業に戻ってしまった。「自分のためだけに生きるのは飽きた」と結婚願望をのぞかせながらも、「結婚は無理。年収240万円の男と結婚してくれる女はいないよ」と言い捨てる。聞いている僕も苦い水を飲んだような気持ちになった。
年収400万円以下の30代40代の未婚男性が恋愛をする道はもう1つある。お金以外のことで大いなる自信を持つことだ。芸術でも家事でもいいので、「これだけはオレに任せてくれ」という何かがあれば、お金はなくても生き生きとしたオーラが出てくるものだ。直観力の優れた女性にはモテるだろう。
手先が器用で機械いじりも得意な歯科技工士の彼は「すごい専業主夫」にもなれると思う。都会における不毛な「男の年収偏差値」競争から脱して、自分なりの恋愛や結婚を見つける道もあるのだ。