日本は天然ガス39.1%・石炭30.8%・水力7.8%…国による電源種類別の発電量の違い
電気は色々な形に変換しやすいエネルギーとして重宝され、現代社会には欠かせない存在。その電気をいかなる種類の電源から生み出すのかは、国家戦略の上でも重要な話。主要国の現状を確認していく。
今件記事に関して一次資料となるものはIEA(国際エネルギー機関:International Energy Agency)が毎年発行している「Data and Statistics」。日本原子力文化財団などが発行している「原子力・エネルギー」図面集の最新版において2022年版(データの中身は2020年分)のデータが公開されているため、今回はこれを基に精査を行う。
今グラフは電気の発電様式を主要な発電方法、具体的には石炭・石油・天然ガス(以上火力発電)・原子力・水力・その他に区分し、それぞれの発電「量」(瞬間時の能力を示した「能力」ではない)を総計電力量比で示したもの。
・カナダ、ブラジルは水力発電の比率が高い。自然をフルに活用できる環境を有効に活かしている。特にブラジルは63.8%が水力で占められている。
・イタリアには原子力が無い。国策による結果。
・ロシア、イギリス、イタリアなど欧州地域は天然ガスに寄るところが大きい。
・中国やインドなどの新興国では石炭傾注度が高い。
・フランスでは7割近くを原子力に頼っている。
・日本の原子力は3.8%。
これらの特徴に関して、それぞれの国のエネルギー事情が大きく反映されたものとなっているが、例えば
・イタリアは1987年に脱原発政策が国民投票で決定してから、原発ゼロを貫いている。現在では方針転換を二度繰り返し、結局原発ゼロは継続。
・フランスはエネルギー面でも独立独歩的な政策を現実のものとするため、他国に関与されにくい原発を促進している。一時的に大きな方針転換が行われる可能性が出てきたが、現在ではその動きも沈静化している。
・中国は電力の6割強を石炭から得ているが、これは石炭が安価で経済性に優れているから。ただし環境面での負担も大きいものと考えられる。
などがある。それらが電力量構成にそのまま反映されている。また欧州情勢で話題となった、西欧諸国とロシアとの間におけるパイプライン供給でのガスをめぐる駆け引きや、ブラジルのダム建設問題なども、このグラフを見ながら考察し直すと、なるほど感を覚えることができる。
ちなみに石油のほとんどを輸入に頼っている日本だが、電力発電用としての比率は今回取り上げた国の中ではイタリアに次ぐ大きな値を示している。これは2011年3月に発生した震災とその後の政情的混乱により原発の稼動が止められ、不足した電力を火力発電所で補うための結果によるものである。
次のグラフは今回直近となった2020年の値と、前回年の2019年の値を比較したもの。
これは今回直近となった2020年の値と、前回年の2019年の値を比較したものだが(項目構成が変更になった「太陽光・風力」「その他」は除外している)、いずれの国でも石炭が減少し、天然ガスが増えている。特に日本では天然ガスの増え方が大きなものとなっているが、これは「原子力」の減少分を補うためのものと読み取ることができる(2020年は2019年と比べて原発の設備利用率が21.4%から15.5%に減少している。原子力産業新聞より)。
当然のことながら電気そのものは目に見えることはなく、コンセントにも「原材料は●×です」と書かれているわけではない。発電の原材料で電気の質に違いが生じるわけでもない。インフラがしっかりと安定的に整備されている中で日々を過ごせる、「当然のように繰り返される日常」、そのインフラを絶えず支えている関係者に感謝をしつつ、電気が作られた「素」に思いを馳せることをお勧めしたい。
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【日本は天然ガス33.9%・石炭31.6%・水力8.8%…国による電源種類別の発電量の違い)】
【各国政策がすけて見える主要国のエネルギー源の種類と量、その違いをさぐる(2020年公開版)】
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。