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韓国を撃破し、ワールドカップ出場権獲得!リトルなでしこがアジア2連覇をかけて北朝鮮との決勝へ

松原渓スポーツジャーナリスト
圧倒的な強さで2大会連続の決勝進出を決めた(写真:AFC)

【相手を見ながら臨機応変に対応】

 リトルなでしこ(U-17日本女子代表)が、U-17アジアカップ準決勝で韓国を3-0で下し、決勝進出を決めた。また、今大会上位3カ国に与えられる、U-17女子ワールドカップへの切符を手にした。同大会は、今年10月にドミニカ共和国で行われる。

 連日30度近い気候のバリ島で行われている今大会。日本は試合ごとにメンバーを変えながら、グループステージの3試合を戦ってきた。ワールドカップ出場権がかかるこの韓国戦に向けては「ベストチームで臨む」とコメントしていた白井貞義監督は、3日前の中国戦から先発4名を交代。1トップに古田麻子が先発した。

 その古田が守備のスイッチとなり、立ち上がりから積極的な守備で、韓国陣内で試合を展開。基本フォーメーションは4-2-3-1ながら、「(試合の中で)相手を分析しながら対応している」というGK福田真央の言葉通り、この試合は最終ラインの牧口優花、太田美月、福島望愛が3バックのような形でボールを回しながら韓国のプレスをかいくぐる。古田や2列目の辻あみるを中心に、攻撃はシュートで完結させる意識が感じられた。

初先発の古田が守備のスイッチを入れた(写真:AFC)
初先発の古田が守備のスイッチを入れた(写真:AFC)

 だが、韓国のGKウー・スミンが守るゴールは堅く、日本にとってはもどかしい時間が続いた。

 均衡が破れたのは前半40分。左サイドでコンビネーションで数的優位を作り、カットインした古田のクロスを辻がワンタッチで横に落とし、最後は根津里莉日がフィニッシュ。カーブのかかった技ありシュートがゴール右隅に決まった。

 前半終了間際にはペナルティエリアに進入したウォン・ジュウンの強烈なシュートを浴び、この試合最大のピンチを迎えたが、GK福田が横っとびでセーブ。今大会出場試合は無失点の守護神のプレーで、リードを守って後半に臨む。

 追加点は68分。福島が右サイドから入れたクロスを相手がクリアしきれず、セカンドボールを狙っていた眞城美春の左足ボレーがゴールを揺らす。攻撃の手を緩めない日本は、終盤の88分にも、途中出場の菊地花奈のチャンスメイクから分厚い攻撃を見せ、セカンドボールを拾い続けた眞城が試合を決定づける3点目。終盤には、福田に代わってGK永井愛理が出場し、クリーンシートで試合を締め括った。

眞城の2ゴールで試合を決定づけた(写真:AFC)
眞城の2ゴールで試合を決定づけた(写真:AFC)

【決勝の相手は宿敵・北朝鮮】

 韓国にとっては、日本の先発メンバーはほぼ予想できなかったはずだ。メンバーの顔ぶれや組み合わせは試合ごとに変わる。4試合で、23人全員がピッチに立った。

「相手のバランスを見て、相手のストロングを消しながら隙をついていく。ゲームの中で相手に対応しながら(狙いを)変化させられる選手が多い」(白井監督/大会前)

 守備では、酷暑の中でもハードワークを厭わず、攻撃では白井監督が強調していた選手個々の柔軟性の高さが生きている。ほとんどピンチがなかったグループステージに比べれば、韓国戦ではピンチも数回あったが、結果から見れば、4試合で崩された失点は一つもない(オーストラリア戦終盤のPKによる失点のみ)。

 相手のプレッシャーがかかりにくいのは、ボールを持った選手が常にゴールへの最短距離を狙っているからだろう。テクニカルエリアに立つ指揮官から「前を探りながら(ボールを)回そう」と声が飛び、前線の選手はゴールへの意識が高い。

 中国戦で得点した福島は、「ボールを持っていない時は、常に背後への抜け出しを考えています。ボールが来る時にはゴールと相手を見て、ボールを持った時には、まず個人で相手を剥がすことを意識してプレーするようにしています」と話していた。

 その中でも、この試合で2ゴールを決めた眞城は、4ゴール目でチームのトップランカー。テクニックやゲームメイクのセンスもさることながら、豊富な運動量で攻撃に参加し、シュートスキルも高い。相手GKのファインセーブでゴールにはならなかったが、81分にエリア外から放った鋭いカーブのかかったループシュートは、A代表の司令塔・長谷川唯のプレーと重なった。

ボランチとして全試合に先発している眞城(写真:AFC)
ボランチとして全試合に先発している眞城(写真:AFC)

 決勝は中2日で19日に行われる。対戦相手は、準決勝で中国を1-0で下した朝鮮民主主義人民共和国。ここまでの4試合で、北朝鮮は、23得点0失点、1試合平均シュート本数は26.5本を記録。日本は15得点1失点、1試合平均シュート本数は25.8本。両者ともにこの年代では世界一になった経験を持ち、実力通りのカードになった。

 警戒したいのは、今年3月のU-20女子アジアカップでも主力としてプレーしていたチェ・イルソン(背番号15)だろう。今大会は4試合で5ゴールを決め、ジョン・イルチョンと並んでトップスコアラーに名を連ねる。

 ワールドカップ出場権獲得という一つのノルマはクリアしたが、もう2つのタスクが残っている。「アジアチャンピオンになること」と、「見ている人の心を掴むこと」だ。白井監督は、「ボールの動かし方を改善し、しっかりと連係してミドルサードに進入していきたい」と語り、眞城は、北朝鮮のフィジカルや球際の強さを警戒しつつも、「自分たちのやりたいサッカーは通用すると思う」と、ファイナルの舞台を見据えた。

 今大会は2つの会場で行われているが、日本はグループステージから決勝までの5試合を、「カプテン・イ・ワヤン・ディプタ・スタジアム」で戦うことができる。グループステージに比べて芝は湿りやすくなっているようだが、2会場で戦っている北朝鮮に比べてアドバンテージと言える。

 北朝鮮戦は日本時間の5月19日20時キックオフ。ダゾーンでライブ配信される。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のWEリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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