永久凍土から太古のバクテリア発見、プラごみ分解に期待
永久とは言いますが、実はそうでないものの例に「永久凍土」があります。その定義は、2年以上にわたり地中温度が0℃以下の土地。実際のところ2年凍れば永久凍土なのです。
「気候の時限爆弾」
永久凍土は「気候の時限爆弾」とも呼ばれます。氷が解けるとCO2やメタンなどの温室効果ガスが大気中に放出されて、地球全体の気温上昇を加速させる恐れがあるからです。
目を覚ます病原体
永久凍土が融解すると、眠っていた微生物が目覚める危険もはらんでいます。過去の例を挙げてみましょう。
2005年アラスカで、32,000年前のものと見られるバクテリアが永久凍土の中から発見されています。そのバクテリアは、氷が解けるやいなや水中を泳ぎまわったそうです。
また2014年にはシベリアで、30,000年前のものと見られるウイルスが見つかりました。このウイルスは直径が1.5マイクロメートルと、顕微鏡で見ることができるほどの巨大サイズだったといいます。
これらは人間には無害ということですが、2016年シベリアでは、12歳の少年が亡くなるという痛ましい出来事が起きています。
原因は、75年前に炭疽菌で死んだトナカイの埋葬地の氷が解けたことです。その死骸に付着していた病原菌が動物に感染し、それを食べた人にも広がったことが理由のようです。
氷下のバクテリアで問題解決
一方で永久凍土は、環境保全や人命に役立つ可能性もあるようです。どういうことでしょうか。
スイスの研究機関(WSL)は、アルプス山脈の標高3,000メートルの永久凍土の中から、13,000年前に存在していたと見られるバクテリアを発見しました。このバクテリアをバイオリアクターの中に入れると、プラスチックを分解できる可能性があるようです。
地球にやさしい方法でプラごみを分解し、埋め立て地の減少や環境汚染の軽減などに一役買えるのではないかと、期待を寄せています。
同研究所は以前にも、永久凍土の中から発見した微生物の酵素から、低温で脂肪を分解する性質を発見しています。この性質を使って、低温の水でも汚れをきれいに落とせる洗剤が開発できるのではないかと模索しているようです。実現すれば、エネルギーを節約しながら洗濯ができると自慢げです。
さらに最近では、永久凍土の中のバクテリアから、新しい抗生物質を作れるのではないかと考えているといいます。
「永久凍土の融解は、人間にとって『金鉱』になる可能性がある」。同研究所はそう話しています。
永久凍土の融解は、このように好ましい可能性も秘めています。しかしながら、失うものの方がはるかに大きいことは言うまでもありません。
*参考リンク*
『Swiss researchers identify new bacteria in permafrost』 (Swissinfo.ch)
『Researchers identify ... bacteria in permafrost …』(Daily Mail)