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令和の若武者・出口若武新六段(26)忍者・服部慎一郎四段(22)を降し、藤井聡太叡王(19)に挑戦!

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月2日。東京・シャトーアメーバにおいて第7期叡王戦挑戦者決定戦▲服部慎一郎四段(22歳)-△出口若武五段(26歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は16時48分に終局。結果は142手で出口五段の勝ちとなりました。出口五段は初のタイトル挑戦を決め、規定により、六段昇段を果たしました。

 藤井聡太叡王(19歳)に出口新六段が挑戦する叡王戦五番勝負。第1局は4月28日、東京都千代田区「江戸総鎮守 神田明神」でおこなわれます。

千日手打開で勝利

 2021年度成績は、出口五段は39勝14敗(勝率0.736)。服部四段は43勝12敗(勝率0.782)。両者ともにランキング上位の好成績を残しています。どちらが挑戦者となっても、フロックではありません。

 服部四段先手で矢倉模様。服部四段が早めの動きを見せ、現代調の急戦となりました。

 中盤でまず優位に立ったのは、服部四段。しかしそこから混戦となり、形勢が揺れ動く終盤に入りました。

 最終盤、出口五段はピンチをしのいで形勢好転。勝ちが見つかりそうな局面を迎えます。しかし持ち時間3時間を使い切っての一分将棋。服部四段は千日手の筋で引き分けに持ち込もうとします。

出口「千日手にするつもりはなかったです」

 同一手順が繰り返される中、出口五段は時間を稼いだのち、服部玉の詰み筋を確認して打開。それが勝着となりました。出口五段は危ないながらも一手の余裕を得て、中段に逃げ越していた服部玉に王手をかけます。最後は長手数ながらも服部玉は詰み。大熱戦に幕が降ろされました。

 服部四段は史上4人目の、四段の立場での挑戦者決定戦勝利はなりませんでした。

 令和の若武者・出口新六段が挑むのは、史上最年少五冠・藤井聡太叡王です。

 藤井叡王が過去にタイトル戦で対戦したのは、渡辺明名人3回、豊島将之九段3回、木村一基九段1回。いずれも実績十分の棋士ばかりでした。そこに現れた、タイトル初挑戦の出口新六段。新しい時代の到来を感じさせる、フレッシュな五番勝負となりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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