中国で爆発的なパンダブームが到来?きっかけはシャンシャンの返還と日本人のパンダ愛
4月27日、18時過ぎ―。アメリカ・テネシー州のメンフィス動物園で飼育されていたジャイアントパンダのヤーヤーが、約20年の貸与期間を終え、中国・上海の空港に到着した。
その様子は中国中央テレビや人民日報など大手メディアで速報され、まるで日本からシャンシャンが飛び立ったときを再現するかのように、飛行機が着陸する模様や、機内から運び出される映像などが生中継された。
その後も、「18時46分、検疫所に入った」「23時04分、検査場で竹を食べた」などと続報され、本日(4月28日)午前9時時点で、検索サイト「百度」でランキング第1位となった。
微博(ウェイボー)でも上位に「ヤーヤーが“帰宅後”ごはんを美味しそうに食べた」などのセンテンスがトップ10入りし、かつてない「ヤーヤーフィーバー」「パンダフィーバー」に沸いている。
シャンシャンの帰国がきっかけ
SNS上でもヤーヤーを温かく迎える声は大量に投稿されている。
「お帰りなさい!無事にたどり着けるかずっと心配していたが、よかった!」
「これから穏やかな余生を送ってほしい」
「故郷の美味しい竹を食べて、元気になってほしい」
こうした労いの言葉が飛び交い、ネット上にはヤーヤーを描いたイラストや動画なども投稿され、さながら「ヤーヤー祭り」状態になっている。
なぜ、ここまでのフィーバーになったのか。
中国在住の複数の知人に聞いてみたところ、大きなきっかけは、2月下旬に日本からシャンシャンが返還されたことにあるのではないか、という。
「シャンシャンが帰ってくる際、日本人は、本当は去ってほしくないと思いつつも、寂しさを隠して、温かく見送ってくれましたね。そのシャンシャンに対する深い愛情、日本での帰国までの過程が大きく報道されて、中国人の心を打ちました。
こうした細かい情報が中国のSNSでも拡散され、中国人の心を動かし、改めてパンダへの関心が高まったのかなと思います」
シャンシャンに続き、和歌山県のアドベンチャーワールドから永明、桜浜、桃浜も返還されたが、そうした一連の「返還報道」の流れで、アメリカから返還される予定のヤーヤーにも注目が集まったのではないかという。
事実、日本から4頭が返還されたことでヤーヤー問題が注目され、早期の返還を求める声が高まっていた。
ヤーヤー問題とは、ヤーヤーが皮膚病で脱毛したり、衰弱したりしていたこと、健康問題だ。元気がなさそうなヤーヤーの姿を見て、中国で心配の声が上がり、「いつ帰国するのか」「一刻も早く帰ってきて」とSNS上で話題になっていた。
「かわいいパンダ」が急増
もうひとつの理由として、中国の人々がSNSの影響で、パンダという自国の希少動物の存在を改めて認識し、日本でこれだけ大切に育ててくれたパンダを「大切にしたい」「かわいい」といった気持ちが強まったことだろう。
昨今、中国のネット上ではパンダのぬいぐるみがたくさん売れているというが、少なくとも、数年前まではそんな現象は起きていなかった。もちろん、パンダは中国を代表する動物としてもともと人気があり、ぬいぐるみも売られていたが、なぜか「顔」があまりかわいくなかった。
中国の空港で、子どものためにパンダのぬいぐるみを買おうと思っても「かわいくない」という理由で、買わなかった経験がある日本人観光客や出張者は少なくなかったのではないか。少なくとも、私はそう感じていた。
だが、最近では、かわいいパンダのぬいぐるみが多数発売され、それを中国の子どもだけでなく、大人も買うようになった。そうした社会の変化、成熟も少しは関係しているのではないかと思う。
また、四川省にある中国ジャイアントパンダ保護研究センターを訪れる人も急増している。地元では2歳になる和花(ホーファー)というパンダが「かわいい」と評判で、アイドル化しているが、日本から返還されたシャンシャンも4月10日に現地で「竹を食べる様子」が動画で公開されると、閲覧者が急増。
「動画で見るだけでなく、日本で愛情深く育てられたシャンシャンを現地で見てみたい」といったファンも増えている。
中国では、とくにZ世代の若者の間でペットとして猫を飼うことがブームになっており、孤独な若者の間で「かわいいもの」「癒されるもの」への関心が高まっているが、そうしたことも、中国人のパンダ愛を目覚めさせたことと関係があるのかもしれない。