4年ぶり正のインド洋ダイポールモード現象が発生 日本への影響は?
気象庁は15日、8月の世界の海面水温の状況分析で、インド洋では正のインド洋ダイポールモード現象(IOD)時に見られる水温パターンが現れていると発表しました。正のインド洋ダイポールモード現象の発生は2019年以来、4年ぶりのことです。
インド洋ダイポールモード現象は日本付近を流れる偏西風に影響し、東・西日本では気温が高くなる傾向があります。この冬の影響について考えてみました。
インド洋ダイポールモード現象とは
世界三大洋のひとつであるインド洋には特徴的な海面水温の変動があります。それは西部と東部で、シーソーのように水温が上がったり下がったりするのです。
このシーソー現象のうち、西部で水温が高く、東部で水温が低くなるパターンを正のインド洋ダイポールモード現象(Indian Ocean Dipole)と呼んでいます。
インド洋熱帯域の西部では海面水温が高くなることで、雲がより多く発生するようになります。活発な対流活動は強い上昇気流を生み、上空の風の流れを大きく変えます。そのため、世界的な異常気象の引き金になるのです。
世界で、日本で大被害
前回の2019年はオーストラリアで極端な高温と乾燥により大規模な森林火災が発生し、深刻な大気汚染やコアラなど多くの野生動物が犠牲になりました。また、日本でも、10月の台風19号(令和元年東日本台風)による記録的な大雨で、長野市内を流れる千曲川が氾濫し、北陸新幹線の車両が水に浸かる被害や高層マンションのライフラインが途切れるなど大きな影響があったことを思い出します。
この秋冬はダブル現象に
今年は春にエルニーニョ現象が発生し、強い発達をみせています。秋から冬は正のインド洋ダイポールモード現象とエルニーニョ現象が同時発生した状況となる見通しです。
記録的な暖冬で、深刻な雪不足も
正のインド洋ダイポールモード現象とエルニーニョ現象が同時発生していた2018年秋から冬は記録的な暖冬になりました。東京では39年ぶりに木枯らし1号が吹かず、年末になってもゲレンデに雪がなく、スキー場のオープン延期が相次ぎました。
今後、同時発生の影響はあるのでしょうか?最新の予想図によると、日本付近を流れる偏西風は平年より北を流れ、全国的に暖かい空気に覆われやすい見通しです。
この夏は観測史上最高の暑さとなり、9月半ばになっても暑さが引く気配はありません。今後も気温の高い状態が続き、影響が長引く可能性があります。
【参考資料】
気象庁:全球の海面水温の変動(2023年8月)、2023年9月15日
気象庁ホームページ:インド洋に見られる海面水温の偏差パターンと日本の天候
気象庁:エルニーニョ監視速報(No.372)、2023年9月11日
オーストラリア気象局(BoM):Climate Driver Update、Positive IOD very likely to emerge; El Niño Alert continues、12 September 2023