レノファ山口:2点差を詰めた2分2点の維新劇場。前節の反省生かす
J2レノファ山口FCは3月25日、山口市の維新みらいふスタジアム(維新百年記念公園陸上競技場)で松本山雅FCと対戦。2点ビハインドの中、後半アディショナルタイムにオナイウ阿道と前貴之が連続得点を決め、引き分けに持ち込んだ。勝ち点1を積み上げ、順位は4位を維持している。
明治安田生命J2リーグ第6節◇山口2-2松本【得点者】山口=オナイウ阿道(後半46分)、前貴之(同47分) 松本=高崎寛之(前半46分)、岩上祐三(後半28分)【入場者数】6318人【会場】維新みらいふスタジアム
タフな戦いの前半。先制は松本
松本は試合前までに2ゴールを挙げているセルジーニョが先発するなど、前節からスタメンを4人入れ替えた。対するレノファは前節と同じメンバーを組み、21歳のヘナンや19歳の高橋壱晟が出場するなど、先発平均年齢が24歳と若い顔ぶれで臨戦。霜田正浩監督は「疲れているから違うことをやりましょうとか、疲れているからこれはやらなくてもいいよとか、そういうハードルは下げない。疲れていてもやる。今日はどれだけ走り勝てるかがテーマだ」と連戦最終日でも若いイレブンに運動量を求めた。
霜田監督の意図を反映してレノファは立ち上がりから前掛かりにボールを奪いに行く。攻撃に転じた局面では、小野瀬康介のドリブルやクロスからペナルティーエリア内に進入したほか、瀬川和樹のロングシュートでも相手ゴールを脅かす。松本も初勝利を目指して先発起用された選手を中心にタフに戦い、ロングスローやクロスからチャンスメーク。下川陽太のヘディングシュートなどでレノファゴールに迫った。
前半から中盤の攻防が激しく、ゴール前でも身体を張ったプレーが連続。そうした中、前半43分に松本・永井龍が負傷し、ピッチの外へ。松本は先発から外れていた高崎寛之を緊急投入して立て直しを図る。
早い時間帯でのFWの交代が、レノファにとっては不利に働いてしまう。動きを掴みつつあった相手攻撃陣へのマークにズレが生じ、投入されたばかりの高崎の動きに瞬間的な対応で遅れが出てしまう。前半のアディショナルタイムにはスローインの流れから松本に攻め込まれ、人数が足りていたにも関わらず高崎に先制点となるシュートを浴びる。
前半はレノファにとって攻める時間もありながら、0-1で折り返すことになった。
池上丈二を投入、流れに変化
後半の主導権を掌握したのは、ここまで未勝利で山口に乗り込んできたアウェーチームだった。順位の低迷を感じさせないミスのないビルドアップでゲームを作り、レノファ陣に入り込んでいく。対して、レノファはパスの質が大きく低下し、自陣からつなぐのを放棄したかのようにフィフティー・フィフティーのどっちつかずのボールばかりを蹴り出してしまう。中盤の強度では松本に分があり、中途半端なボールの大半は松本が収めてプレーを継続。「クオリティーのある選手たちに押されて勇気が足りなくなった。プレスに行けなくなって、マイボールも大事につながない」(霜田監督)という状況のまま、後半28分には岩上祐三に追加点を決められ、レノファは2点を追いかける展開となった。
残り15分となり、勝ちたいという気持ちでも松本が上回っているように見えたが、霜田監督は選手交代によって選手の闘争心を呼び覚ました。ターニングポイントになったのは、昨シーズンの松本戦でも決勝点を決めていた池上丈二の投入だ。「去年のアウェーの試合も頭に浮かんだ。シュートチャンスもあり常にゴールを狙っていた。最後の最後まで僕たちは諦めていなかった」。そう話す池上が入ったことで、アンカーに入っていた三幸秀稔とともにパスの経由地点が増加。一方で今季の初勝利をつかみ取りたい松本は終盤になって引き気味になり、レノファのボール保持時間が明らかに増えていく。ボールを動かして相手を揺さぶるレノファらしさを取り戻すと、次なる一手として大石治寿を送り込む。
このときのレノファが敷いた布陣は、2-5-3とも、2-4-4とも取れる2バックの超攻撃的なフォーメーション。絶対に点を取りに行くぞという分かりやすいメッセージに闘志が重なり合い、アディショナルタイムはレノファのショータイムとなった。
小野瀬康介が後半46分、大石と山下敬大の待つペナルティーエリア内にクロスボールを供給。山下が高さを生かしヘディングでリレーすると、オナイウ阿道が左足でトラップしてボールを引き寄せ、右隅に決めきった。
さらにその1分後には、今度は三幸が縦に浮き球を送り、こぼれ球を池上が奪取。相手が詰め寄ってきたところを左に流し、フリーで受けた前貴之がグラウンダーのコースを突いたシュートをしずめた。「ふかさずに、コースを低い弾道で。ピッチも濡れていたのでそういうところも意識した」と前。土壇場で同点に追いつき、勝ち点0になりそうな試合で、レノファは勝ち点1をしっかりと手にした。
また、いずれのゴールシーンでも「とにかくゴール前に入っていき、自分の良さのゴール前での強さや動き出しを発揮し、点につなげたい」と話した大石が、ペナルティーエリア内で相手DFを引きつけていた。前線に人数を割きながらも、ゴール前で仕事ができる大石、高さのある山下、身体能力の高いオナイウなど個々の選手がそれぞれの特長を輝かせ、2分2ゴールを成し遂げた。
修正と積み重ね。一歩ずつ成長
前節のツエーゲン金沢戦は2点を先行したものの、終盤で2失点し勝ち点1に終わっていた。霜田監督は「アディショナルタイムで点が取れたり、逃げ切れたりするチームが上に行く。僕らが上に行くためにはそこをクリアしなければならない」と選手に話し、中3日という短いトレーニング期間できっちりと後半アディショナルタイムの使い方を修正した。
ただ、厳しい言い方をすれば、前半の失点も残り数分で起きている。後半も池上丈二を投入するという物理的な策を講じるまでは、相手に流れを渡してしまっていた。時間をどうマネジメントするかは課題として、今後も取り組まなければならない。それに、この試合では勝負の分かれ目となる部分をコーチングスタッフが判断し、選手交代やフォーメーション変更で難局を乗り越えた。つなぐべきところやリスクを回避すべきところをいずれは中の選手たちで判断し、動けるようにしたい。まだまだ道は長いが、ゲームから出てくるポジティブな課題を適切に評価し、積み重ねていきたい。一歩ずつの成長が楽しみでもある。
ミッドウィークの負けに等しい引き分けをバネに、最後まで諦めずに戦い、勝ち点1を手にしたレノファイレブン。「追いついたあと逆転できれば良かったが、次につながる勝ち点1にはなったと思う」(前貴之)と顔を上げて次へと進んでいく。次節はアウェー戦。3月31日にNDソフトスタジアム山形でモンテディオ山形と対戦する。
引き分けの次に踏むべきステップは一つしかない。