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脱線事故の「いすみ鉄道」 近年は「保線不備に検査未実施」で相次ぐ行政指導 市議会は虚偽報告を疑う

鉄道乗蔵鉄道ライター
脱線した車両と同型車(写真AC)

 2024年10月4日に発生した脱線事故を受けて、現在も全線で運休が続いている千葉県のいすみ鉄道。10月7日に開かれた記者会見では、同社の古竹社長は謝罪し、事故の原因について「枕木の劣化が事故の一因」と言及し、事故の原因が「車両ではなく保線の問題と考えている」という見方を示した。

度重なる行政指導

 いすみ鉄道では、事故のおよそ1年半前となる2023年1月25日付で国土交通省関東運輸局より保線の不備に関して行政指導を受けていたことは記事(千葉県「いすみ鉄道」の脱線事故、原因は枕木の劣化!? 2023年には保線不備で関東運輸局より行政指導)でも触れているが、その2年以上前の2020年12月10日付でもいすみ鉄道は「自動列車停止装置(ATS)の動作試験未実施」「車両検査未実施」「運転士の身体機能検査未実施」「ほとんどの駅ホームで建築限界を支障」の4項目について行政指導を受けていた。

 線路の状況に関しても、すでにこの時から目視でも劣化が明らかだったようで、2021年11月4日に開かれたいすみ市議会でも、大曽根信太郎市議会議員から「いすみ鉄道では十分な安全性が確保されているのか」と一般質問がなされた。この質問に対して、いすみ市企画政策課の海老根良啓課長は、「いすみ鉄道の説明によると老朽化した施設については問題があれば早急に改修するなど安全性の確保に努めており、関東運輸局に提出している基準を十分クリアしていることから運行に支障をきたす問題はない」と答弁している。

市議会議員は「いすみ鉄道」の虚偽の報告を疑う

 しかし、大曽根議員はこの答弁に納得がいかなかったのか、「いすみ鉄道は昨年、レーザー式軌道計測というものを行っており、ミリ単位で整備がなされているはずであるが、目視でも線路がゆがんでいる現況があることから、いすみ鉄道の見解とわれわれの認識がずれている」と再質問で食い下がった。さらに「いすみ鉄道が問題ないと公式の場で課長を通じて発言したので、脱線事故になることはないと思うが、もしそういうことがあれば、これは虚偽の報告をなされてということになってしまう」と述べている。

 こうした発言を裏付けるかのように、いすみ鉄道では翌年の2022年11月28日から11月30日にわたって関東運輸局によって行われた保安検査では保線の不備が指摘され、2023年1月25日付で再び行政指導を受けることになり、2024年10月4日に脱線事故が発生した。

管理体制の刷新を

 脱線事故の原因については、運輸安全委員会の鉄道事故調査官が調査を進めているが、同社の古竹社長は事故原因については「枕木の劣化が事故の一因」で「車両ではなく保線の問題」と記者会見で言及している。いすみ鉄道は、事故原因が「保線の問題」と考えるのであれば、2020年代に入り度重なる行政指導を受けることとなったずさんな管理体制を改めるべきではないだろうか。

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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