オダギリジョーが脚本・演出を務め、自身も「犬の着ぐるみ」姿で出演し、ぐうたらな「警察犬」オリバーを演じた『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』(NHK)は、「ユニークな発想が随所に見られるとともに、劇画的でスピーディーな演出、それでいて破綻しない構成が素晴らしい。表に出ている現象の裏には、壮大な物語があるということを見事に描き、見ていて近来になくワクワクした。豊富で豪華な出演者の動きすべてに神経が行き届いたオダギリジョーの演出が光る。続編にも期待したい」と評され、ギャラクシー賞2021年10月度月間賞を受賞するなど大きな話題となった。
その続編となるシーズン2(全3話)が、9月20日から始まった。
27日放送のシーズン2の2回目(第5話)で衝撃的なシーンがあるという。
実際の脚本はどうなっていたのか
池松壮亮演じる主人公・青葉一平と、麻生久美子扮する漆原冴子が約1分間にわたり延々と「え?」「え?」と言い合うというのだ。
池松がゲストに訪れた『あさイチ』(NHK、2022年9月16日放送)では、2人の「え?」が2頁以上続く脚本が紹介されていた。そこには( )書きで「え?」の中に込めた意味が書かれていた。
台本を渡されたときには「え?って感じでした」と笑う池松は、実際に演じた時のことをこう振り返った。
麻生久美子とオダギリジョーがゲストの『土曜スタジオパーク』(NHK、2022年9月24日放送)でもこの台本が紹介され、麻生久美子がこの台本を受け取った時の心境をこう語っている。
感覚をいかに使うか
この「え?」だけのやり取りが記された台本には直後にこんな言葉が添えられていた。
なんとト書きにオダギリの所感が書かれているのだ。「普通、名指しのト書きとかないですからね。初めて見ました」と池松が言うように、なかなかないオダギリジョーらしい型にはまらない脚本だ。
オダギリが最初に演技を学んだのはアメリカだった。映画監督志望だった彼は高校卒業後、母に懇願しカリフォルニア州立大学フレズノ校に留学。監督養成コースを志望していたが、願書の記入ミスによって俳優養成コースに入り、2年間演技を学ぶことになる。その後も、国内外で演技の方法論を学んだオダギリジョー。その中で「同じ言葉を延々と繰り返すという訓練」があり、それを脚本に取り入れたのだという。「感情や思いを込めれば相手とのキャッチボールは延々と続けられる」のだと。
またオダギリは以前、「“感覚をいかに使うか”という方法論を学び、やり続けてきた」(「リアルサウンド」2018年7月6日 )と語っている。「その役者さんがどういう人生を送ってきたか」ということに興味があるというオダギリは「どう演じるかよりも、人間性や経験が大事」だと持論を展開する。
「え?」の応酬には、池松壮亮と麻生久美子の人間性や経験に基づく感性、そしてその奥には演出したオダギリジョー自身が滲み出ているに違いない。
<関連>オダギリジョーは「謎の男」である