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ノート(93) 元特捜部長らのマスコミ対応に思ったこと 情状弁護の検討

前田恒彦元特捜部主任検事
(ペイレスイメージズ/アフロ)

~整理編(3)

勾留37日目

マスコミ対応の是非

 この日の夕方に放送されたNHKニュースでは、大坪さんが家族にあてた手紙の件が報じられていた。家族を気にかけて心配しており、拘置所を出た後はのんびりした場所で家族と静かにすごしたい、といったものだった。大坪さんの弁護団が公表したという。

 前日の夕方に放送されたNHKニュースでも、佐賀さんがNHKの面会要請に応じたという話題が取り上げられていた。記者に対し、無罪を主張したという話だった。

 被疑者や被告人にとってマスコミ対応など百害あって一利なし、というのが持論だ。本当に言いたいことを全て正確に報じてもらえる保証などなく、しかも検察側に得難い情報を提供する利敵行為ともなり得るからだ。

 だからこそ、拘置所に願い出て、記者からの面会要請を全てシャットアウトしてもらっていた。これに対し、大坪さんや佐賀さん、その弁護団は、マスコミの取材に応じる方針だということが改めてよく分かった。

 しかし、大坪さんの手紙の件については、なぜこのタイミングで公開することにしたのか、弁護団の狙いが理解できなかった。少なくとも裁判対策には何の役にも立たないものだったし、世間の同情を集めるかもしれないが、逆に反感を買うリスクもあったからだ。

 また、佐賀さんの件も、マスコミが否認の具体的な中身やそれを裏付ける証拠関係にまで踏み込んで詳細に報じるはずがない。同じく裁判に向けて何のメリットもないばかりか、単に社会に対して往生際の悪さを印象づけるだけだろう。

 SNSと同じで、炎上している時に何か反論や訂正といったアクションに出れば、燃料投下となり、ますます炎上が長引くだけだ。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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