BE・LOVEがトップの7.3万部…女性向けコミック誌の部数動向をさぐる(2018年10~12月)
女性向けコミック誌のトップは「BE・LOVE」
日々進歩を見せる技術革新、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀無くされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は少年・男性向けコミック誌ばかりで無く、少女・女性向けのものにもおよんでいる。今回はその雑誌のうち、女性向けコミック誌(少女向けのコンセプトで発刊されている雑誌群よりも対象年齢は上。おおよそ大学生以上が対象)について、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(※)から、実情をさぐる。
まずは女性向けコミック誌の現状。最新データは2018年10~12月のもの。
トップの「BE・LOVE」(主に30代から40代向けレディースコミック誌)がトップ、「プチコミック」「Kiss」が続く。上位陣、具体的には「office YOU」までは各誌でそれぞれ類似順位他誌と一定の差異があり、並べるとそれなりにきれいな傾斜ができている。ただし「Kiss」と「プチコミック」はここしばらく激しいつばぜり合い、さらには順位の差し換えの動きを示しているのが興味深い。
部数順位では下の方ではあるが「MELODY」が前期から大きく落ちているのが確認できる。これについては次の項目で解説する。
プラスは皆無…四半期変移から見た直近動向
次に前期と直近期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。
「MELODY」は大きく落ちているが、次の項目で示す前年同期比では少女向けコミック・女性向けコミック合わせて唯一プラスを計上している。前期において同じ出版社から発行されていた「別冊花とゆめ」の休刊に伴い、今誌への移籍が決まっていた日渡早紀氏の「ぼくは地球と歌う」の連載再開が始まっており、これが前期の部数を引上げた。今期は前期の勢いの反動によって落ちたと考えられる。
部数動向は2017年10~12月期を底に反転上昇の動きを示している。長期連載のパラレル江戸ドラマ「大奥」も表紙に取り上げられるなど好評を博している。「ぼくは地球と歌う」の連載再開で部数上昇への勢いがつけばよいのだが。
唯一マイナスとならなかった「フラワーズ」だが、2018年5月発売の7月号から「ポーの一族」の新シリーズ「ポーの一族 ユニコーン」が始まったものの、前期の2018年7月発売の9月号でいったんお休みとなり、2019年春に再開予定と告知された。
グラフを見れば分かるように、「ポーの一族 ユニコーン」などの特需で大きく部数が跳ねる時期以外はおおよそ3万3000部を維持するという安定ぶり。
なおその「ポーの一族 ユニコーン」だが、2019年3月末発売号から再開することが発表されている。次期は2019年1~3月なので、ぎりぎり該当することになるため、部数は再び大きく跳ねることだろう。どこまで伸びるかが楽しみではある。
季節変動を考慮しなくて済む前年同月比では
続いて「前年同期比」による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による変移を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。
前述の通り、唯一「MELODY」が前年同期比でプラス。「フラワーズ」は上記の通り特需以外は鉄板の部数計上をしているため、プラスマイナスゼロ。
それを別にすると、1割以上の下げ幅は7誌、2割超えの下げ幅も「FEEL YOUNG」が計上してしまっている。あまりよい状態とは言い難い。
「進撃の巨人」や「おそ松さん」のような盛り上がりを複数タイトルで意図的に起こせるようになれば、それこそ全盛期の週刊少年ジャンプのような活性化も不可能では無い。最近ならば「ポーの一族」の新連載が好例。そのためには幅広い層へ訴えかける、購入動機をかきたてる作品との連動、あるいは発掘、さらには創生が欠かせまい。
他方、他ジャンルの記事でも言及しているが、多くの雑誌で電子化が行われており、電子版に読者の一部を奪われ、結果として紙媒体としての印刷部数が減っている可能性は否定できない。
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※印刷証明付き部数
該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数では無い。売れ残り、返本されたものも含む。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。