地域航空会社がグループの枠を超えた連携へ動き出す。そのメリットと課題は?
国内の離島路線を中心に運航する地域航空会社がグループの枠を超えた連携へ向けて動き出している模様だ。
一部報道によると、日本エアコミューター(本社:鹿児島・霧島市)、天草エアライン(熊本・天草市)、オリエンタルエアブリッジ(長崎・大村市)、北海道エアシステム(札幌)やANAウイングス(東京)の5社が将来的なコードシェア便(共同運航)や機体整備や調達などの部分において連携することに合意した模様だ。
まずは九州の3社による連携を先行
先行して、九州に拠点を持つ日本エアコミューター、天草エアライン、オリエンタルエアブリッジの3社による連携がスタートするようだ。当初は、国土交通省の有識者会議において「経営統合も含めて模索するべきである」という報告書が出ていたが、各地域航空会社では、周辺自治体の出資もあることなどからまずは「統合」ではなく「連携」という選択をしたようだ。
ANAやJALの販売力に期待
地域航空会社におけるメリットは「営業強化」「コスト削減」の2つだろう。営業強化においては、訪日外国人観光客(インバウンド)が増える中で、ANA(全日本空輸)やJAL(日本航空)の販売力を活用したいところであり、今回の連携強化によって、地域航空会社が運航する便にANA便名・JAL便名両方のコードシェア便にすることで、外国人が離島を訪れやすくする狙いがある。
具体的には、世界遺産にも登録されており、外国人観光客も多く訪れる屋久島へは、現在JALグループの日本エアコミューターのみ乗り入れているが、ANA便名のコードシェア便もスタートすれば、ANAで海外から日本に到着した外国人は、羽田からANAで鹿児島へ飛び、ANA便名が付与された日本エアコミューターのコードシェア便で鹿児島から屋久島へ飛ぶことが可能になり、航空券も一度に購入できることになる。もちろん日本人の利用者にとっても、乗り継ぎ運賃が設定されれば、羽田→鹿児島→屋久島とANA便名で行けることになり、ANAのマイレージ会員を新たに取り込める可能性もある。また、ANAとコードシェア便を既に行なっているオリエンタルブリッジを使って福岡から対馬や五島福江などへ飛ぶ場合もJAL便名で行けることになる。
システムの接続などに大きなコストも
ただ実現にはハードルも高い。まず大きなネックになるのがシステムの接続だろう。各地域航空会社の予約システムをANAやJALのシステムに接続しなければならない。一部の地域航空会社では、コードシェア便を既にしている場合でも、システム連携はせずに事前に決められた一定座席数を販売してもらい、その乗客データを共有するだけの場合もある。地域航空会社では、他社とは接続しない独自にカスタマイズされたシステムを使っているケースが多い。
もし、ANAやJALの両方でコードシェア便が行われることになれば、まずはシステムを改修する必要があり、その初期コストも大きな負担となる。更に地域航空会社関係者によると「初期コストだけでなく、システム連携によるランニングコストも増えるだろう」とコストが増える懸念もあり、その費用負担を誰がするのかも含めて今後の課題になるだろう。
整備や空港業務などでは大きなコスト削減が可能
またコスト削減については、連携が強化されることで大きな効果が期待できる。現在、天草エアラインと日本エアコミューターはフランス製のATR機を導入しているが、両者は既に機体整備やパイロット訓練などで連携をしており、コスト削減に大きく貢献している。更に保有機を1機しか持たない天草エアラインでは、計画整備の際に日本エアコミューターから飛行機だけを借りて、自社のパイロットと客室乗務員で運航している。明日12日から18日までの7日間の天草エアライン便は全便日本エアコミューターのATR機で運航されるが、従来であれば整備期間中は事前告知による欠航となっていたが、両者間の連携によって欠航せずに整備が可能となった。
更に空港においても、チェックインカウンターを共通化させ、グランドスタッフや整備士も含めた連携ができれば便数が少ない地域航空会社にとってメリットは大きいだろう。このような枠組みが最終的に5社間で実現すれば、コスト削減はもちろん、運航品質を高めることになる。
生活の足としての役割を果たす地域航空会社
地域航空会社の連携強化。実現すれば離島路線の利用促進に繋がり、日本人も外国人も訪れやすくなる。観光客の取り込みも大事であるが、それ以上に、離島で生活している人の生活の足という公共交通機関としての役割も大きく、連携によって路線をしっかり維持できる盤石な体制が構築されることを期待したい。