なぜレアルは”積極補強”を行わなかったのか?ヴィニシウス、モドリッチ、ロドリゴ...老若の融合力。
今季初タイトルに、照準は定められている。
レアル・マドリーは現地時間10日にUEFAスーパーカップでフランクフルトと対戦する。昨季、ドブレテ(2冠)を達成したマドリーが、2022−23シーズンの最初のタイトルに挑む。
マドリーは今夏、積極的に補強を行ったわけではない。移籍金8000万ユーロ(約112億円)でモナコからオウリエン・チュアメニを、フリートランスファーでアントニオ・リュディガーをチェルシーから獲得。しかし、そこで補強をストップした。
チェルシー(1億8600万ユーロ/約260億円)、バルセロナ(1億5800万ユーロ/約221億円)、バイエルン・ミュンヘン(1億3700万ユーロ/約191億円)、アーセナル(1億3200万ユーロ/約184億円)、ウェスト・ハム(1億1100万ユーロ/約154億円)、マンチェスター・シティ(1億875万ユーロ/約152億円)、リーズ(1億840万ユーロ/約151億円)、パリ・サンジェルマン(1億600万ユーロ/約148億円)…。欧州の強豪クラブはチーム強化のために大金を投じてきた。
だがマドリーの選手獲得費用(8000万ユーロ)は補強費ランキングで15位だ。
一方で、この夏、マドリーは選手の「放出オペレーション」に力を入れてきた。ここまで6選手を移籍させており、その売却値で2150万ユーロを得ている。
■魔の三角地帯
無論、補強に注力しなかったのには理由がある。フロレンティーノ・ペレス会長、ホセ・アンヘル・サンチェスGD(ゼネラルディレクター)、カルロ・アンチェロッティ監督は現有戦力を信頼しているのだ。
とりわけ、盤石の中盤は強力だ。カゼミロ、ルカ・モドリッチ、トニ・クロースの「CMK」は健在で、彼らが先発した決勝でマドリーは8戦全勝している。
「カゼミロ、モドリッチ、クロース。私は彼らを『バミューダトライアングル』と呼んでいる。なぜなら、そこでボールが消えるからだ」とはアンチェロッティ監督の弁である。
バミューダトライアングルとは、フロリダ半島先端、プエルトリコ、バミューダ諸島を結ぶ三角地帯で、度々、超常現象が起こる地区だ。
強いチームは、中盤が安定している。シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、セルヒオ・ブスケッツはバルセロナの栄光時代を支えた。
1980年代初期のブラジル代表にはソクラテス、トニーニョ・セレーゾ、ファルカン、ジーコが、フランス代表にはミシェル・プラティニ、アラン・ジレス、ルイ・フェルナンデス、ジーン・ティガナが君臨していた。
アリーゴ・サッキ監督が率いた黄金時代のミランには、ロベルト・ドナドーニ、アルベリコ・エヴァーニ、ジョバンニ・コロンボ、そして他ならぬアンチェロッティが中盤にいた。
■新世代の突き上げ
「CMK」とカリム・ベンゼマは、マドリーに必要な不可欠な選手になっている。
とはいえ、マドリーはベテラン頼りではない。“新世代”の突き上げの予感がある。
ヴィニシウス・ジュニオール、エデル・ミリトン、ロドリゴ・ゴエス、フェデリコ・バルベルデ、エドゥアルド・カマヴィンガが新しい時代を切り開こうとしている。
昨季22得点16アシストで攻撃を牽引したヴィニシウスを筆頭に、アンチェロッティ監督をして「ミリトンと(ダビド・)アラバのセンターバックコンビは崩したくない」と唸らせるほどに成長したミリトン、チャンピオンズリーグで貴重なゴールを決めて幾度となくマドリーを救ったロドリゴ、【4−3−3】の右ウィングでポジションを奪ったバルベルデ、フィジカルベースの高さでプラスアルファをもたらすカマヴィンガとそれぞれが特徴を出しながら地位を確立した。
恐るべきは、ペレス会長の先見の明だ。ヴィニシウス(移籍金4500万ユーロ)、ミリトン(移籍金5000万ユーロ)、ロドリゴ(移籍金4500万ユーロ)、バルベルデ(移籍金500万ユーロ)、カマヴィンガ(移籍金3100万ユーロ)と総額1億7100万ユーロで彼らを確保している点だ。彼らはいずれも25歳以下の選手である。
マーケットが開くたび、大型補強は話題になる。ただ、実はマドリーは、もっと早くから「仕掛け」を行っていた。
ベテランと若手の融合――。着々と進められてきた準備が、実り始めている。