山口県初の棋士・徳田拳士四段(24)島根県初の棋士を目指す里見香奈女流五冠(30)の壁となるか
今年度デビューの徳田拳士四段(24)が快進撃を見せています。
ここまでの公式戦成績は12勝1敗(勝率0.923)。暫定的ながら現在、勝率ランキングで全棋士中1位の成績を挙げています。
最新の『将棋年鑑』(2022年版)の名鑑のページを開くと、棋士になったばかりの徳田四段と、女流棋士中席次1位の里見香奈女流五冠は、上下すぐそばに配されています。めぐり合わせによって、最も棋士番号の若い徳田四段が、里見女流五冠が受験する棋士編入試験五番勝負のトップバッターを務めることになりました。
多くの将棋ファンにとって徳田四段の対局姿を見るのは、この編入試験第1局が初めてとなるでしょう。
里見女流五冠は島根県、徳田四段は山口県の出身。隣県同士の両者が対戦するのも、なにかの因縁かもしれません。もし里見女流五冠が棋士となれば、実はそれもまた、島根県初の快挙となります。
「山口県の顔」徳田四段
徳田四段は山口県周南市出身です。将棋の強い少年として、地元では早くから将来を嘱望されていました。また柔道も強く、新聞データベースを検索すると、柔道の大会で入賞した記事も多くヒットします。小2(8歳)のときに将棋のアマ大会で大人の強豪を連破して上位入賞した際には、次のように書かれています。
2009年、小6のときには小学生名人戦全国大会で決勝に進出。解説は羽生善治名人、聞き手は里見香奈倉敷藤花が務めていました(肩書は当時)。徳田少年は攻めを続けるうまい手を指します。
勝った徳田少年は小学生名人となりました。
山口県は将棋がさかんなところです。しかしこれまでなぜか、県出身者の棋士はいませんでした。
2010年、徳田少年は郷土の期待を背負って、小林健二九段門下で関西奨励会に入会します。
日本将棋連盟のウェブページには徳田二段(香落上手)-藤井聡太初段の対局の棋譜も残されています。結果は徳田二段の勝ちでした。
徳田三段(当時)は2018年竜王戦第7局(羽生竜王-広瀬章人挑戦者)や2021年竜王戦第4局(豊島将之竜王-藤井聡太挑戦者戦)と、地元山口県でおこなわれたタイトル戦で記録係も務めていました。
難関の三段リーグには8期4年在籍しました。
徳田三段は2021年度後期のリーグで15勝3敗(2位)の好成績をあげ、念願の四段昇段を果たしています。
発言もなかなか面白い。
徳田新四段誕生に、地元山口県も盛り上がりました。
徳田新四段の恩師である、地元山口県のアマ強豪・北村公一さんは次のように語っていました。
北村さんたちの期待通り、徳田四段は早くも白星を重ねています。
棋士編入試験ではおそらく、世のほとんどの人は、里見女流五冠の応援をするでしょう。そうした中で徳田四段もまた、そう簡単に負けるわけにはいきません。勝敗予想は難しいところ。まったくの五分と見るのが妥当でしょうか。
里見女流五冠、島根県初の「棋士」となるか?
島根県は山口県の隣です。
里見さんもまた幼少の頃から、地元の人々の希望の星でした。
里見現女流五冠の恩師である島根県のアマ強豪・柳浦正明さんはかつて、次のような言葉を残しています。
島根県からは里見女流五冠と、妹の里見(現姓・川又)咲紀女流初段。2人の女流棋士が生まれています。里見女流五冠は女流棋界で史上最高の実績を残し、すでに数多くの偉業を達成しています。その存在は島根県の方々の誇りでしょう。その上でこれから、里見女流五冠は島根県初、そして女性初の棋士となれるでしょうか。
いよいよ始まる注目の大一番。囲碁・将棋チャンネル(将棋プレミアム)では、羽生善治九段が解説を務めます。