ソダシのJRA史上初、白毛馬芝重賞勝ちへつながったファインプレーとは?
ダート血統という先入観に縛られず
今週末、札幌競馬場で行われるのが札幌2歳S(GⅢ)。芝1800メートルで行われるこの2歳の重賞を、昨年制したのが後のGⅠ馬ソダシだ。
ソダシがデビューしたのは2020年7月の函館競馬場。芝1800メートルの新馬戦にエントリーしたのだが、結果的にこれが管理する須貝尚介調教師の大ファインプレーとなった。騎乗した吉田隼人騎手は言う。
「ダート血統という先入観があったので、正直、半信半疑でした」
主戦騎手がそう語るように母のブチコはダートばかりで4勝、その姉のユキチャンも地方の交流レースを勝つなど、この血を引く馬達は皆、ダート路線で活躍していた。しかし、それに流されず芝をチョイスした理由を指揮官は次のように語った。
「先入観でダートに引っ張られたくなくて芝で調教をしたところ、良い走りを見せてくれました。そこでオーナーに相談して、芝でデビューをさせました」
この判断が吉と出て、ソダシの人生、いや、馬生を変えた。スタートを決めると最後は2着を2馬身半突き放し、ゆうゆうと先頭でゴールを切ったのだ。再び主戦騎手の弁。
「調教で乗った段階でしっかりしていたのでそれなりにやれるとは感じました。ただ、芝だったのでどうかと思ったのですが、終わってみれば強かったです」
こうして2戦目に出走したのが札幌2歳Sだった。
「初戦の結果次第ではダート路線とも考えたけど、余裕のある勝ち方をしてくれたので引き続き芝の2歳Sに向かう事にしました」
矛先をここに向けた理由を司令官はそう言った。
当日、ソダシは2番人気に支持された。ちなみに1番人気に推されたのは後にニュージーランドT(GⅡ)を勝つバスラットレオン。それぞれオッズは4・7倍と3・9倍だった。ところが終わってみればここもソダシが着差以上に独擅場と思える走りを披露する。好位から早目にバスラットレオンをかわし先頭に立つと、最後は後のオークス馬ユーバーレーベンの追い上げを抑えて優勝。勝ち時計の1分48秒2は2歳のコースレコード。これが白毛馬として初めてとなるJRAの芝の重賞勝ちとなった。
「流れを考慮するとタフな競馬だったけど、よく粘ってくれました」
鞍上はそう語り、真っ白なパートナーを高く評価した。
再びの札幌で復活の狼煙
こうして白毛馬として初めてJRAの芝の重賞を制したソダシの、その後の活躍は皆さんご存知の通り。アルテミスS(GⅢ)で重賞連勝を飾ると続く阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)ではGⅠ制覇。更にそれ以来のぶっつけで挑んだ今年初戦の桜花賞(GⅠ)も見事に優勝。デビュー以来ここまで2つのGⅠを含む5戦5勝という成績をいずれも芝のレースでマークしてみせた。
その後、2400メートルのオークスは8着に沈んだ。しかし、先日の8月22日には初めての古馬相手、それも牡馬勢も多数いた札幌記念(GⅡ)に、札幌2歳Sと同じ8枠13番から挑むと、先輩GⅠ馬のラヴズオンリーユーの追撃を抑え込む。2000メートルの距離も克服して優勝。これまた須貝調教師の見事な采配に脱帽させられる結果となった。
「道中は終始好手応えだったし、外枠だったのでいつでも動ける位置で競馬が出来ました。前半のレースに乗って前が有利な馬場だと感じたから、自信を持って早目に動いて行きました」
手綱を取った吉田隼人騎手はそう語ると、安堵の表情を見せた。
オークスで土のついた白毛馬だが、札幌の地で復活の狼煙を上げる勝利。捲土重来を懸けた秋が楽しみになった。そんな白いGⅠ馬が、初めて重賞を制したのが札幌2歳Sだった。今週末に迫った同レースは、果たして今年、どんなドラマを見せてくれるだろう。注目したい。
(写真撮影=平松さとし)