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時給950円の牛丼バイトから年俸1250万円の投手に。ホークス泉圭輔が初契約更改で笑顔

田尻耕太郎スポーツライター
来季は先発か中継ぎか「どちらでも、与えられたところで」(筆者撮影)

将来性のはずが4月一軍で初勝利

 成果をあげた分だけ評価されるのがプロ野球の世界だ。

 福岡ソフトバンクホークスの泉圭輔投手が6日、プロ入団後初の契約更改に臨み「450万アップでした」と明かして、年俸1250万円(金額は推定)でサインをした。

 金沢星稜大学からドラフト6位で入団した泉は「大卒だけど、将来性を買って」とスカウトが認めていたように、春季キャンプはB組で過ごした。「同期の甲斐野や杉山が紅白戦で登板したり、他の同期の投手たちがA組だったので悔しさはあった。でも焦らないようにと自分に言い聞かせていた」。地道の努力を積み重ねると、ファームで開幕から好調をキープ。チーム事情もあり「自分でもびっくりした」という4月一軍デビューを果たした。

 初マウンドから3試合目、4月22日のオリックス戦(東京ドーム)で嬉しいプロ初勝利をマークした。「ヤフオクドームで勝ちたいなと思っていましたけど、東京開催のタカガールデーという特別な試合。嬉しかったです」。また、自身は少年時代に巨人ファン。ダグアウトの裏側では「こんな風になっているんですね。すごい」と興奮しっぱなしだった。

 5月30日のオリックス戦(京セラドーム)ではプロ初先発も任される(3回2失点で勝敗つかず)など、チームが苦しかった前半戦で重宝されたことが年俸アップの評価を後押しした。ルーキーイヤーは14試合に登板、2勝0敗3ホールド、防御率1.96の成績を残した。

「正直、1年目の4月から一軍と思ってなかったし、初勝利も挙げることが出来るとは思っていませんでした。ただ一軍と二軍を行ったり来たりする中で、通用した部分と通用しなかった分も身を持って分かりました」

課題は体力。コーチから「ペラペラ」

 通用したと感じたのはストレートだ。大学時代まで最速147キロだったのが153キロまで伸びた。ホークスの育成システムの賜物である。

 しかし、一方で体力不足は痛感した。体重は1年間で6キロ減って76キロほどになったという。

「工藤監督からいつも『飯を食え』と言われますし、若田部コーチから『(体が)ペラペラ』と呼ばれるんで(笑)」

 若鷹寮の食堂でも意識をして量をたくさん食べることを心掛けているという。

 また、囲み取材の中で、大学時代のアルバイトをしていた話題になった。牛丼屋チェーン店の「すき家」で昨年のドラフト会議指名の直前まで働いていた。当時の時給は950円で、深夜手当の時間帯は1125円だったという。

「今でも食べに行きますよ。ついカウンターの中を覗いちゃいますね(笑)」

 ならば特盛で体重増だ。

「いや、並を2つ頼むのが僕のこだわりなんです。トッピングを変えて、違う味を楽しむんです。並3つ? いやー、さすがにそれはキツイかな(笑)」

 とはいえ、このオフは「せめて体重を入団時には戻したい。2月のキャンプの頃にはひと回り、ふた回り大きくなったと思ってもらえるようにしたい」と意気込む。年明けの自主トレは同期入団の板東湧梧とJR東日本のグラウンドを中心に行う予定だという。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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