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年間最高KO? WBC世界Sウェルター級王者ジャメール・チャーロがブルックリンで会心のパフォーマンス

杉浦大介スポーツライター
Photo By Ed Diller/DiBella Entertainment

4月22日 ブルックリン バークレイズセンター

WBC世界スーパーウェルター級タイトルマッチ

王者

ジャメール・チャーロ(アメリカ/26歳/29戦全勝(14KO))

6ラウンドTKO

指名挑戦者

チャールズ・ハットリー(アメリカ/31歳/26勝(18KO)2敗1分)

リングサイドが凍りついたKO劇

昨年5月にジョン・ジャクソン(ヴァージン諸島)を倒してタイトルを取って以降、チャーロは11か月のブランクを作った。試合枯れはアル・ヘイモン傘下選手の共通の悩みとなりつつある。26歳と今が全盛期のはずのチャーロにとって、特にフラストレーションがたまる期間だっただろう。

同じテキサス出身の指名挑戦者を迎え撃った初防衛戦では、その憤りをぶつけるようなパフォーマンスを見せてくれた。

開始直後から強烈な右で何度もハットリーをぐらつかせると、第3ラウンドにはコンビネーションから右ストレートを打ち下ろして最初のダウンを奪う。そして迎えた第6ラウンド、ロープ際で再び強烈な右を一閃。このパンチをまともに浴びたハットリーを見て、レフェリーはノーカウントで試合を止めた。

リングサイドの関係者は恐怖を感じ、即座にリング内にタンカが運び込まれたほどの強烈なKO劇だった。

「右パンチの前にジャブを上手く使えた。ハットリーはウォリアーだから、倒れても立ち上がってくることはわかっていた。だからライオンのようにならなければいけなかった」  

試合後にはリング上でそうまくし立てたチャーロ。ハットリーの方も17ヶ月のブランク明けだったが、相手のサビつきを考慮に入れたとしても、この日のチャーロの強さは圧巻だった。

大器は覚醒したのか

2014年5月のチャーリー太田(八王子中屋)戦ではダウンを奪われるなど、台頭期のチャーロは双子の兄と比べても線の細さが目に付いた。KO率は50%以下という戦績が示す通り、スピードは抜群でも、破壊力に秀でた選手という印象もなかった。

しかし、キャリアを重ね、タイトル奪取で自信をつけ、持ち前の身体能力の使い方を覚えてきた部分もあるのだろう。

「素晴らしいパフォーマンスだった。キャンプで練習したことをすべてやってくれた」

チャーロのトレーナーを務めるデリック・ジェームズも目を細めた。この試合で10万ドル(挑戦者のハットリーは8万5000ドル)を受け取った王者の前に、楽しみな未来が広がっている。

「チャンピオンなのだから、指名挑戦者と闘い続けなければいけない。僕の兄の後に王者になったジャレット・ハート(IBF世界スーパーウェルター級王者)という選手がいるから、統一戦をしても構わない」

実際に2月25日にトニー・ハリソン(アメリカ)をKOしたハード(アメリカ/20戦全勝(14KO))との統一戦が実現すれば、若きタイトルホルダー同士のフレッシュなファイトとして注目を集めることだろう。チャーロ、ハード、WBAスーパー王者のエリスランディ・ララ(キューバ)はすべてヘイモン傘下だけに、統一戦とまとめるのはさほど難しくないはずだ。

WBO同級王者サウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)はまもなくミドル級に完全昇格したあと、スーパーウェルター級の中心になっていくのはチャーロかもしれない。まだ断言するのは早すぎるが、開花の可能性は十分。この日のパフォーマンスは、見ているものにそう感じさせるほどに力強く、華やかなものだった。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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