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救急車を呼ぶかどうか判断できますか?

工藤啓認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長

今年度後期から東洋大学の社会福祉学科で講義をさせていただいています。国家資格である社会福祉士を目指す学生が少なくないコマなのですが、専門的なことは教えられないので、何か日常の活動からお伝えできることがないか、いつも思案しています。

15回という長丁場は、慣れている先生方にはもしかしたら長くもない、または短いのかもしれませんが、やはり長いです。ので、かなり友人・知人にゲストスピーカーとしてお越し願い、最前線の状況を学生に伝えていただいています。

先日は、社会にはいろいろなリソース(資源)がある一方、あまり知られていないものがある。それは個人や周囲を守る/助けることができるばかりか、少しだけ社会をよい方向に持っていける可能性があるよ、といった話をしました。

そのなかの一例として、家族、友人や知人、目の前のひとが突如、お腹を押さえて倒れたらどうしたらよいかを考えました。

とても苦しそうだから、携帯出して119番。救急車を呼ぶことが頭に浮かびます。とても合理的であり、かつ、正しい選択でしょう。

一方、個人として正しい、または、合理的な判断ですが、(一部の悪例を除き)何かあったら救急車を呼んでおけば安心だと考え、脊髄反射的に119番をしたらどうでしょうか。

下記は、平成24年度版消防白書なかから抜粋した「傷病程度別搬送人員の状況」(第2-5-3表)です。

「平成23年中の救急自動車による搬送人員517万8,862人*1 のうち、死亡、重症及び中等症の傷病者の割合は全体の49.5%、入院加療を必要としない軽症傷病者及びその他(医師の診断がないもの等)の割合は50.5%となっている」とあります。

傷病程度別搬送人員の状況
傷病程度別搬送人員の状況

上記説明の通りですが、”結果として”入院加療を必要としない軽症傷病者及びその他が50%を超えており、一つひとつの傷病程度はわかりませんが救急車を呼ばなくても良かった程度のものだったと推察されます。

時折、救急車を呼んだけれど、渋滞だったり、出払ったりしていた結果として到着が遅れてしまい、助かったかもしれない命が失われるような報道もあります。

全部が全部、救急車の稼動状況に左右されるわけではないでしょうが本当に緊急時に稼動できる救急車の台数が大いに越したことはありません。また出動車両が平均的に少なくなれば、救急隊員のシフトがラクになったり、夜勤されている医療従事者が少しでも休めたりするかもしれません。

救急車を呼ばない方がよいということではありません。呼ぶべきときは即座に119番に電話をかけるべきです。

しかし、迷ったときはどうでしょうか。不安であり、何かあったら怖いから”とりあえず呼んでおく”を選択したくなります。当然です。目の前でひとが苦しそうにしているわけですから。しかし、プロが見たら軽症傷病だとすぐに判断できるかもしれません。病院にいかなくても、少し木陰で休んでいればいいものかもしれません。

私のような医療素人は、何かあったらすぐ救急車、と脊髄反射してしまいそうですが、ここはひとつ東京消防庁の「救急相談センター」を活用してはどうでしょうか。

サイトにはこうあります。

「救急車を呼んだほうがいいのかな?」「病院へ行ったほうがいいのかな?」迷ったら救急相談センターへ

東京消防庁救急相談センター、ご存知でしたか?24時間年中無休で相談医療チーム(医師、看護師、救急隊経験者等の職員)が対応してくださいます。

この #7119 は、ぜひ、携帯に登録しておきたい番号です。自分や家族、恋人や友人に何かあったとき、きっと役に立ちます。パニックにもならなくてすみます。

まず119番は基本かもしれませんが、もしかしたら、#7119 でも十分対応ができるトラブルの場合もあるはずです。こういう社会的なリソースを知っておくことは、自分自身を守ることにつながります。また、見知らぬ誰かを結果として支える社会投資的行動であるとも言えるかもしれません。

ちなみに、僕がもうひとつ推薦するのが #8000小児救急医療電話相談事業(厚生労働省)です。コチラもぜひ、登録しておかれるといいと思います。いつ怪我や病気の子どもに出会うかわかりません。小さな命を助けられるのは、目の前にいる自分だけかもしれません。医療従事者でない限り、自分で判断するよりも電話一本で専門家に何を、どうしたらいいのか判断を仰ぐほうがリスクが低いと思いませんか?

こちらは参考ですが、僕も #8000 などにはよくお世話になっています。

[参考]国に心からの拍手を贈ることもまた、僕ら国民の権利です。

認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長

1977年、東京都生まれ。成城大学中退後、渡米。Bellevue Community Colleage卒業。「すべての若者が社会的所属を獲得し、働くと働き続けるを実現できる社会」を目指し、2004年NPO法人育て上げネット設立、現在に至る。内閣府、厚労省、文科省など委員歴任。著書に『NPOで働く』(東洋経済新報社)、『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『若年無業者白書-その実態と社会経済構造分析』(バリューブックス)『無業社会-働くことができない若者たちの未来』(朝日新書)など。

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