“青汁王子”の森友告発動画が330万回再生「佐川氏のこと初めて知った」「100万円はいらない」の声も
“青汁劇場”の開幕
「森友事件は終わっていない」「公文書を改ざんさせた佐川宣寿元国税庁長官は罪に問われるべきだ」と”告発”する動画をインターネット上で公開し、大きな話題になっている三崎優太さん(30)。青汁などの健康食品販売で巨額の財を築き“青汁王子”の異名でもてはやされましたが、国税当局から1億8000万円の脱税を指摘されて逮捕・起訴され、人生が暗転した人物です。
告発動画を見てリツイートした人などを対象に、抽選で180人に100万円ずつ、総額1億8000万円もの私財を“贖罪寄付”するという、意表を突く発想により、動画は瞬く間に拡散。“青汁劇場”とも呼べる状況になっています。
動画再生330万回、アクセス1000万件
動画はインスタグラムとツイッターで公開されています。インスタグラムでの動画視聴回数は330万回以上、プロフィールへのアクセス数は1000万件を超えました。ツイッター用に別に作られた短い動画は再生が988万回と1000万回まで目前に迫り、フォロワーは81万人を超えています。脱税容疑で逮捕されてから、どうやって告発動画を拡散させるか考えていたという“青汁王子”の思惑通りの展開です。
逮捕後、社長を辞めて「無一文になった」と宣言したり、キャバ嬢の彼女と別れて女装したり、ED(勃起障害)になったと書いたり、新宿・歌舞伎町のホストクラブでシャンパンタワーのグラスを一気にたたき割ったり…人生転落して破れかぶれに見えた奇抜な言動も、すべてはこの動画に注目を集めるためだったのです。
「この動画で初めて佐川氏のことを知った」
“青汁王子”こと三崎さんのツイッターには、今回の彼の行動を支持するというツイートやメッセージが多数寄せられています。その中には、この動画を見て初めて一連の問題を知ったという声がありました。
「三崎優太さんの動画を拝見するまで、国税庁長官である佐川氏の公文書改ざんや嘘をついていることについて、一切知りませんでした。日本の闇を恐ろしいほど感じました。森友学園問題に関しても、改めて考えさせられました。佐川氏は嘘をついている。しかもその問題が公に出ているにもかかわらず、その嘘に対して何の罪にも問われていないのは非常におかしいことだと私も思います。また人の命も関わっているのに罪に問われていないのもおかしいです。これこそ罪に問われるべきです。今後の日本のためにもこの動画がもっともっと拡散されてほしいです。私は社会人1年目ですが、社会の仕組みをこれから勉強していきます」
“青汁王子”は今回の動画について、これまで森友事件や公文書改ざんなどの問題をあまり知らなかった人たちにも届くようにしたいと話していました。その狙いは一定の効果をあげているようです。
なお、寄せられた声にある「人の命も関わっている」というのは、公文書の改ざんを無理矢理押しつけられた近畿財務局の職員が、自ら命を絶った事実を指します。これについて“青汁王子”は動画で、犠牲者が出ているのに改ざんを命じた佐川氏がおとがめなしになっているおかしさを指摘しています。
「支持するけど100万円はいらない」
注目すべきは、寄せられた声の中に「支持はするけれど100万円はいりません」という趣旨のものが含まれていることです。例えば以下のメッセージ。
「あれだけ稼ぐ人が、たかが1.8億円をリスク背負って故意に脱税するとは到底思えなかったのでメディアの報道はあまり信用してなかったです。今回の動画リツイート致しました!しかし、仮に100万円当選したとしても辞退いたしますので、他の有望な方に差し上げてください!これからも、上がっていく姿をワクワクしながら拝見させていただきます」
「31歳の既婚者です。お金はいりません。ただ三崎さんの復活を心から祈っています!あなたがどん底に落とされても尚、上を見て進んでいる姿に本当に力を貰ってます」
「少しでもお役に立てればと思いリツイートさせて頂きました。しかし僕には今の所100万円を有効に使う考えが思いつかないため、抽選対象外で大丈夫です。僕も今の日本の考え方が凄く嫌いで、三崎さんの行動に感動しました」
「この国の悪しきシステムに喧嘩を売ることは間違いではありません。正しいと信じて突き進むことは若者の特権です。この日本の闇を正せるとしたら、むしろこちらから100万円払いたい気持ちです」
ほかにも「もし100万円が当たったら近くのバス停の整備に費用を寄付します」という声、「100万円で三崎さんの側で一緒に戦いたいです」という声、「10~50万円であればお渡しできます。そのお金でたくさんの人に夢を与えてください」という声も寄せられています。
税務職員からも共感の声が
地方自治体で徴税業務についているという人からもメッセージが届きました。
「正直、税金が高く、支払えずに苦労している人をたくさん見ていますので、三崎様がおっしゃった通り、森友問題は本当に許せません。そして、苦しんでいる人がたくさんいるにもかかわらず、どんどん増税していく国に対しても不信感を持ってしまいます。どうか負けないでください。このような動画、企画を世に向けて配信されたのは素晴らしいことだと思います。これから応援させていただきます」
税金の徴収にあたっている現場の職員らしき方の声だけに説得力があります。
「あなたを応援します」「テレビで報道されたいの?」
日本の未来に希望を与えるメッセージだと受けとめた人もいます。
「青汁劇場 面白半分で見てました。チャラい若者がバカみたいなことやってる、くらいにしか思ってなかったんですが、YouTubeを見て、三崎さんはこのための布石を打ってたのか、と納得しました。今の日本は弱者に厳しく先の見えない覇気のない国になってしまいました。子どもたちにも、日本に明るい未来がある夢を見せてあげることができないくらいです。あなたを応援しますので、これからも負けずに頑張ってください」
「この動画を視聴した国民全員があなた様を応援すると私は思います。あなた様の勇気ある行動によって国の現状を知りました。これからの日本が心配です。共に闘います!未来を切り開くために!」
一方、批判的なコメントも寄せられています。例えば「テレビで報道されたくてやってるんですの?」などと。しかし本人曰く、「批判のメッセージがほとんどなくって驚いています」
“青汁王子”が訴えたい森友事件とは…
森友事件とは何でしょう?もう忘れたという方もいらっしゃるかもしれません。一言で言うと「大阪の森友学園への国有地売却と小学校の認可をめぐり、国(財務省・近畿財務局)と大阪府が不正なことをしたのではないか」という疑惑です。
国は鑑定価格9億円あまりの国有地を、ごみの撤去費用を理由に8億円も値引きして1億3400万円で森友学園に売りました。大阪府は、その土地に建つ、安倍昭恵首相夫人が名誉校長を務める小学校を、認可条件が整っていないのに無理矢理認可しようとしました。
でも値引きの根拠となるほどのごみはなかったし、そもそもごみを撤去しないまま小学校の校舎は建っていますから、値引きの正当性に大きな疑問符が付いています。
さらに、この土地取引をめぐる書類を「廃棄したからない」と国会で虚偽答弁し、関連する公文書の改ざんを命じたのが、当時財務省理財局長だった佐川宣寿氏です。その後、国税庁長官に“栄転”したものの、公文書改ざんが発覚して辞任することになります。
しかし、大阪地検特捜部は佐川氏をはじめ、改ざんや国有地売買に関連した財務官僚や近畿財務局職員らを全員不起訴にしました。罪に問わなかったのです。
そして“青汁王子”の会社に国税局の査察部、通称マルサが強制調査に入った時の国税庁長官が、佐川氏でした。
自分は脱税で有罪に。なのに佐川氏は何の罪にも問われない。そして来月(10月)からは消費税が10%に増税される。佐川氏らの責任が何も問われないまま。「そんなのおかしいだろう!」というのが“青汁王子”の訴えです。動画を見た人の多くがそこに共感したようです。
前回の記事で私は“青汁王子”について「自分と同じある種の『匂い』を感じた」と書きました。”奇人変人”の匂いです。その”奇人変人”が仕掛けた訴えは世間にどこまで届くのか?佐川氏が一連の問題について説明する日は来るのか?さらに見届けたいと思います。
【執筆・相澤冬樹】
以下は”青汁王子”のメッセージ動画(本人提供)